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取り替えられた令嬢は終わりを待つ  作者: 雨傘 はる


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7/8

ヒロイン登場…?


肩までの白金の髪を揺らし、翡翠の瞳はまっすぐに父と弟に向いている。

その色味も顔立ちも、似通っているのは一目瞭然だった。


「突然お邪魔してすみません! でもあの、これ、大事な物なんじゃないかって思って!」


白く華奢な手の中には、古びたシグネットリング。

ざわりと空気が大きく揺れ、彼女の見目と家紋の証に、誰もが息を呑む。


「赤ちゃんの時、わたしが握ってたみたいで。返すのが遅くなってごめんなさい!」


そっと、イヴェットはフランソワの腕を離した。訝しげにされた気もするが、気のせいだろう。

一歩後ろに下がろうとしたところで、父が口を開く。


「その鼠を拘束しろ。我が公爵家に侵入するなど、野盗でもするまい」


「えっ」


思わず声を上げたイヴェットに、父が怪訝な瞳を向けた。

なぜそんな顔をされるのか。というより。


「あの……彼女のお話を、もう少し聞いて差し上げては」


見目が似ていないことなど、イヴェットは重々承知している。幼い頃はよく揶揄もあった。

そして、今、いかにも血縁者なヒロインが現れたのだ。拘束するなんて展開は知らない。


「姉上、いくらあなたがお優しくとも、闖入者まで気にかける必要はありませんよ」


「その通りですな。公爵、よろしければ聴取は私めが」


「ああ。頼もう」


弟、侯爵、父が口々に言う中、イヴェットはひたすら目を白黒させた。

ええと、これは何? どうなっているの。どういうこと。


混乱するイヴェットの前で、さっさと書面に意識を戻した父が、するっと手袋を外す。

再び、場がざわつく。父の左の小指には、シグネットリング。


たくさんの視線が見守る中、父は躊躇いなく印を押した。

最重要書類などにしか使われない、当主たる証。


────そう。そうなの。


確かに、父の持つシグネットリングとは、当主たる者を証明するものだ。

日常的に身につけるものでも、まして赤子に触れさせるものでもない。

正式にその座を譲り受けるまで、後継ですら保管場所を知らされないほど重要な。


「では、あれは……?」


他にシグネットリングを持つ者など、思い当たる節はない。

でも、ヒロインは確かに古びたシグネットリングを持っていた。


「聴取が終わればわかるだろう。いずれにせよ、当主のシグネットリングではないな」


王太子が調印したのを確認して、書類を預けながら父がさらりと言う。

婚約の書類は、王宮にて保管される。すでに認可されたため、イヴェットとフランソワの婚約は成立した。


成立、してしまった。ヒロイン、登場したのに。




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