1396話
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その話を聞いたのは、都市国家同盟の実質的トップであるバレシオスが、街道を馬で移動している最中だった。
今日の早朝、港町オズディアにて、浮遊大陸の帆船二隻の襲撃を受け、現在交戦中だという。
バレシオス自身は、今回の浮遊大陸の住民を連れ去った件について、評議会を開くつもりで移動している途中だった。
それは、浮遊大陸との商売を上手く行かせる事は勿論、最悪の結末へと持って行かせないためでもあった。
だというのに、既に戦闘状態に入ったとの知らせが入り、馬上で思わず頭を抱えてしまう。
時間は昼過ぎ。
この先にある町で詳しい情報を得るべきか、一つ前の町に戻るべきか、判断に困る所だ。
今、バレシオスがいる場所は、海から離れた内陸部、周囲は砂漠地帯となっており、バレシオス達が進んでいる所だけ岩石による道が続いている。
こういった場所が砂漠内に所々あり、その先には大抵オアシスがあったりする。
砂漠を突っ切る場合は、『ギャメル』と呼ばれる砂漠地帯に適した生き物が必要となる。
身体のアチコチに拳大の瘤があり、この瘤が大量の水を溜め込んでいると言われている。
そのギャメルをユウキが見れば、『ラクダじゃねえか?!』とツッコミを入れる事だろう。
ユウキの世界のラクダと違うのは、大きな瘤が一つや二つある訳ではなく、無数の瘤がボコボコと身体中にある所だろう。
しかし、ギャメルは馬より速度が出ない生き物の為、今回の移動には普通の馬を使った。
それが逆に仇となった。
もし今ギャメルに乗っていれば、このまま砂漠を北上し、そのまま近くの港町から船でオズディアに向かった事だろう。
そうするべきだったと、後から悔いても仕方がない。
そう判断したバレシオスは、馬足を速めて評議会場に選ばれた町へと急ぐ。
急いで到着した所で議会が始まるのは予定通りの日付だろう。
だが、それまでの間に様々な裏工作を仕込む事は出来る。
バレシオスの派閥に関しては勿論、中立の位置にいる勢力にも、出来るだけコチラ側に立ってもらうよう要請するつもりだ。
アントニウスのような小心者であれば、この騒ぎを煽り立て、浮遊大陸へ攻め込もうと騒ぎ立てるだろうと予想する。
その上で、自分に有利な立ち回りを画策するだろう。
「勝てる訳がない」
速足で駆け抜ける馬の背中で、バレシオスは誰に聞こえるでもない囁きを漏らす。
護衛の傭兵を十人ほど引き連れているが、彼らの武勇に信用は出来てもその心までは信頼出来ない。
「相談するべき人材がいない事は大問題だな」
誰に向けるでもなく、ついつい愚痴ってしまう。
本来であれば、昔からの友であるゼノン辺りに相談する所だが⋯⋯⋯時間的に彼はまだ自分の町にいるハズだ。
「いや⋯⋯⋯逆に彼なら今回の件で動いているかもしれん」
先行する護衛の背中を見つつ、バレシオスは思考を加速させる。
今の自分に出来る事、やるべき事、そして後始末をどうつけるべきか⋯⋯⋯。




