1397話
〜〜〜〜〜
港町オズディアでは、他の船舶を押し退けつつ進行してくる謎の帆船に対し、周囲から無数の矢が放たれてくる。
だが、十メートルも無いような至近距離だというのに、その矢が『見えない何か』に弾かれたかのように下へと曲がる。
それどころか船がすれ違う際、聞いた事も無い轟音と共に、凄まじい爆発が各船を襲う。
一本の小さな矢に対し、百倍はありそうな拳で、次々と船の腹へと大穴を空けられていく。
だというのに、矢を放たなかった船へは、一切の攻撃が向かなかった。
飽くまでも攻撃に対する反撃のみに限定された凄まじい攻撃だった。
船の胴体に大穴を空けられ、帆柱すら圧し折る攻撃によって、港は阿鼻叫喚の地獄へと変化していった。
火こそ上がっていないものの、各船の内部では人の叫び声が響いている。
ドゥヌーブを含めた者達が驚愕の余り動けずにいると、近付いてくる船に視線を向けたリリーナが、小さく舌打ちして「来るのが早すぎます」と小声で言う。
偶然にもその言葉を聞き取ったドゥヌーブが、凄まじい眼力でリリーナを睨みつける。
「アレもお前の仕業?!さっさと止めさせなさい!!これは命令よ!!」
ヒステリックな叫び声と共に、そう命じるドゥヌーブだが、リリーナはその声を完全にスルーする。
そんな命令を聞いてやる理由が無いからだ。
「貴女は馬鹿ですか?何故、喧嘩を売ってきた人間如きの命令を私が聞くと?」
「なんですってぇ!!分かっているの?ワタクシはこの町の」
「この町程度の支配者如きと私は言っているのですが?」
そう言って冷かな目をドゥヌーブに向けてみれば、当の本人の顔色が段々と真っ赤になっていく。
恥ずかしがっている訳ではなく、単純に怒りからのモノだろう。
そんなリリーナとドゥヌーブの間に、ズドンと音を立てて降り立った人物がいた。
身長二メートル五十もの大男は、その強靭な肉体的を周りに見せつけながら、よく目立つ狼顔を海風に晒す。
人の姿をしているリリーナとは違い、完全に人外の姿を見せるエニアグランの登場は、周囲の荒くれ者達すら悲鳴を上げていた。
ただし、裏取引きを中心で生きてきたであろう商人達の方は、別の意味で悲鳴を上げていた。
「いヅまで遊んでいるリリーナ?さっザと終わらゼて島に帰るぞ」
「エニアグラン、貴方こそ突入する時間を守りなさい。まだ早いわ」
周囲の騒ぎなど無視して、突然の乱入者である大狼族のエニアグランとリリーナは、互いに相手を批難しだす。
行動が遅いとエニアグランが言えば、計画的な行動を取れとリリーナが反論する。
言い合う二人を見つつ、怒りに型を震わせていたドゥヌーブは、そのキツイ目を吊り上げつつ、周囲の荒くれ者達に命令する。
「あの化け物共を捕まえろ」と、「死んでも構わない」と追加した所を聞くと、相当頭にていたのだろう。
その言葉を皮切りに、それぞれ手に得物を持った荒くれ者達が飛び掛かってくる。
まずは目の前に立っている大男、『狼のマスクを被った』エニアグランに向けて、武器を振り下ろす。
鈍い光を放つカットラスが、日の光を浴びてギラギラと輝く大剣が、風を切り裂きながら迫ってくる槍が、幾重にも重なってエニアグランへと迫る。
だが、エニアグランはそれをチラリと見た後、つまらなそうな顔をしつつ手を振る。




