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90.「一旦停死 ――獣人探索+⑨――」
まるで新しいダンジョンに立ち入ったみたいだ。
大災害を経て、地形および出現するモンスターがより高い難易度に設定し直されたいざないの森。
その森の奥に、何かに誘い込まれるように向かって行ってしまった相棒のドナ。
そして獣の少女。
「準備不足、なんて言ってられる状況じゃないな」
ぬかるんだ足場。
見通しの悪い視界。
ここは一度引き返して体制を整えてから再挑戦すべきであるとハンターの勘が警鐘を鳴らしている。
しかしミズハは、仲間を見捨てて引き下がれるほど聞き分けの良い人間ではなかった。
新たに出没した森の危険生物達は、そんな信念をあざ笑うかのように彼の進路に立ちはだかる。
全てを相手になどしてはいられない。
「ドナァッ! 出てこい!」
相棒の名を叫びながら、ミズハは追跡すべく次の樹へワイヤーを飛ばす。
二丁拳銃のトリガーに両の指をかけたまま、右側のワイヤーを巻き取るとすかさず左側のワイヤーを射出する。
その繰り返しで樹上を高速で移動しつつ、襲いかかってくる獣を銃弾が牽制する。
チェーンワイヤーの巻き取りが一瞬遅れ、枝の上に停止するミズハ。
その頭上から目にも止まらぬ速度で急降下してきた怪鳥の鋭い角が、彼の体を貫いた。




