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89.「一新一退 ――獣人探索+⑧――」
「今名前呼びました? ねえ、今アタシの名前呼びましたよねぇ?」
そんな軽いテンションですぐに帰ってきたりはしなかった。
それどころか、この森に足を踏み入れたミズハを熱烈な歓迎が待ち構えていた。
今彼が立っている一本の木。
よく見たら倒木じゃない。
木の枝らしき細長いツタが手足に巻き付き体の自由を奪う。
やがてゴゴゴと自ら起き上がってきたのは大木に擬態した巨大生物だ。
目測十二メートル級、それが視界に入る範囲で五匹いる。
「くそ、なんて力だ」
両手足を縛り付けるその触手は容易には振り解けない。
腰の二丁拳銃へと伸ばす手を、幾重にも絡まったツタが邪魔をする。
そのツタをズタズタに切り裂いたのは袖の下に仕込んだ切れ味鋭いサバイバルナイフ。
左手が自由になると同時に銃を抜き発砲。
銃弾は胴体に命中するも、望むほどのダメージは与えられていない模様。
「エンカウントする動物が一新してやがる…」
ここはまだ森の入り口付近。
以前訪れたときは相当奥に進んでからようやく、銃声に驚いて逃げ出すような動物が現れていた事を思い出して欲しい。
「あの大雨のせいだ。流れ込んだ土石流で弱い生き物が姿を消し、代わりに奥に潜んでいたヤバイ連中が外に出てきやがった!」




