85.「相棒と森へ ――獣人探索+⑤――」
「待ってください!」
森へ向かう準備を終えたミズハの前にドナが駆けつけた。
雨上がりで風も冷たいのに、汗が流れ落ちる程に全速力で走ってきた様子。
ゼエゼエと息を整えた彼女がミズハの目を見て話しかける。
「ソラちゃんに言われて分かったんす」
「俺が生き物を仕留めない理由がわかったのか?」
どうせ分かりっこないとタカをくくっていた。
再び息を整えつつ、途切れ途切れで彼女は言った。
「いや。その理由はさっぱりわかんねっす。ただアタシ、先輩のことが好きだって事がわかったんす」
「はぁ?」
まったくの斜め上回答に脱力するミズハ。
「それで決めたんす。先輩が殺さないことでピンチに陥ったらアタシが代わりに殺すって」
「殺さないことで陥るピンチってどんなだよ?」と尋ねる。
「そんなの知らねっすよ。とにかく先輩はアタシが守るから、先輩もアタシを守って欲しいってことっす!」
真面目な顔してとんでもない告白をしてきやがった。
しかしミズハは冷静に状況を分析し、冷酷ともいえる決断を下す。
「お前に守られる状況なんてありえないんだよ。ただでさえ足場が悪くなってるんだ。森には俺一人で行く」
「それは出来ない相談っす。なぜならソラちゃんから二人で行なう依頼を受けたからっす!」
そう言って提示された一枚の紙。
そこにはいざないの森の入り口に二人で赴き、立て看板などを補修する旨の依頼が記されていた。
左手で顔を覆う。
そして相棒の後輩に命じる。
「入り口までだ。それが済み次第、お前は単独で速やかに帰還すること。いいな?」
「ラジャーっす!」
左手で敬礼をする相棒に不安を覚えつつも、いざ、いざないの森へ!




