83.「ドナドナ ――獣人探索+③――」
「肉とか食べないんすか?」
次にドナは、ミズハが菜食主義者なのかを聞いてきた。
もちろん彼は好物のクリームシチューに入っている鶏肉が大好きな雑食主義者だ。
「食べるよ。家畜は野生動物とは違うからな」
「肉になっちゃえば一緒っすよ。ウシやニワトリは殺せるのに、クマやフクロウは殺さないってどういうことすか」
「殺さずにすむのならそう努めて何が悪いんだよ」
「手負いの獣が人間に復讐してきたら見逃したやつの罪っすよ。不殺罪っす。先輩は強いからまた追い返せばいいけど抵抗できない人の方が多いんすよ」
「そいつらを撃退する為にハンターがいるんだろうが」
二人の言い合いが徐々にヒートアップしていく。
「それってつまり、森で迷子になっても襲ってくる動物を殺さない。死んでる動物の肉も食べないってことじゃないすか。先輩死んじゃうっすよ」
「俺はそれで死んでも構わない。そもそも森で迷子になるなんてドジを俺は踏まねえよ」
またもらしくない強い口調で言い放ち、彼はギルドを飛び出して行った。
残されたドナは、ミズハが出て行った理由がまるでわからないという風な顔をしていた。
「ソラちゃんはどう思うっすか?」
一貫して続く悪気のない問いかけにソラは優しく答える。
「殺しは好きじゃないけど、それで生計を立ててる身としては割り切ってやるしかないって感じかな」
「アタシも同じっす。どうして先輩はそうしないんすかね?」
持っていた雑巾を二つに折り、ミズハが出て行った扉を見つめながらソラが言う。
「きっとそこがミズハの良い所なのよ。ドナがこの街まで追いかけてきたのもそれが答えよ」
「えー答えになってなくない?」
腑に落ちない様子のドナだったがその言葉の意味をしばらく考え込んだ後、やがて決心したかのようにギルドを飛び出した。




