82.「レディースタンス ――獣人探索+②――」
「それの何が問題なんすか?」
隣りで話を聞いていたドナが不思議そうに尋ねてきた。
「この街は森を下りてきた動物たちによる被害が多くて、それを討伐する為にハンターが押し寄せてくるんすよね。今回の大雨は人類にとって恵みの雨じゃないっすか」
さも当然のことのように。
ラーメンにニンニクを入れたらおいしくなる事と同じレベルの道理であるかのように話してきた。
「あの森に動物として暮らしている人間がいるんだ」
正確には人間ではないが。
それでも人間と同じ耳を持っていたり体毛が薄かったりと、一言で獣人と仕分けてしまうには疑問がある存在だったのは確かだ。
「動物を殺さないスタンスを取ってるミズハにはツライことかもしれないわね」
ソラはミズハの擁護とも取れる発言をする。
そしてこの言葉がちょっとした物議を呼ぶ。
「動物を殺さないハンターってマジっすか? チョコレートみたいに甘いっすね」
「どういう意味だ」
間を置いてつき返されたその言葉が、ギルドの空気を凍て付かせる。
ドナはあくまで悪びれずに言う。
「人に危害を加える生物は即殺が基本っしょ。凄腕のハンターだって聞いてたからもっとバンバン撃ち殺してるんだと思ってたのに」
なぜか残念そうな表情を向けてくる新人に、三年目の先輩も言い返す。
「凄腕だから無益な殺生をせずに収めてるんだよ」
このミズハの言い分には致命的な間違いがある。
なぜならこの世には痛めつけられることで人間に恐怖し寄り付かなくなる生物ばかりではないのだから。
逆に徒党を組んで人間たちに仕返しをしようとする危険な生物もたくさんいる。
動物たちが太古のままの姿で生き続けているあの森は特にそうだ。
即殺の原則が新人ハンターにも広まっているのはそのためだ。




