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75.「生まれた日 ――暴走ハンターを取り押さえよ⑮――」
「今日はファルちゃんの誕生日なんだよ」
ミズハのあとにファルが補足を入れる。
「でもほんとの誕生日は知らないんだ。だからお兄ちゃんと出会った今日を誕生日にしてるの」
ファルは斜向かいの孤児院で暮らしている。
彼女は拾われた子供であり、孤児院を営む夫婦は彼女の産みの親ではない。
幼いころに両親を失った彼女の本当の誕生日を知っている人はいないのだ。
そして十三年前にミズハと出会った十月十一日が、彼女の新しい誕生日になった。
「まじっすか! じゃアタシも今日を誕生日にしていっすか?」
「なんでだよ」とツッコミを入れるミズハよりもすっかり目の前のケーキに目を奪われているドナが不満を言う。
「つかなんでホールじゃないんすか? 誕生日といえばホールケーキでしょ!」
「二人じゃ食べきれないだろ」と至極当然な理由が出てきたが、グイグイお構い無しだ。
「アタシ甘いものならいくらでもいけるっすよ!」
「お前を勘定に入れて買ってきてるわけねーだろうが」
人の話を聞かないやつ。
それでも居るとにぎやかで楽しいやつだ。
決して恵まれていない過去を持つファルの笑顔を眺めながら、ミズハはそう思った。




