73.「謎だらけ ――暴走ハンターを取り押さえよ⑬――」
辞典に触れた瞬間に感じたことがもう一つある。
ミズハはそのことを告げないまま、ドナに質問をした。
「お前、この本触った?」
「触ったけどなんすか? なにも変なこととかしてねっすよ」
じーっと見つめられてる状況にアワワと困るジェスチャーを入れながら彼女はそう答える。
「俺はこの本を最初に拾い上げたときに手から離れなくなったんだ。ファルちゃんも。なんでお前はそうならないんだ?」
再度ミズハからの質問。
「知らねっすよー」と困り顔でドナは答えた。
この辞典を持ち主に返すべきか、フィッツシャーのギルドで責任者と言い合いになったときにも同じことがあった。
ミズハの手から引きはがそうとして触った責任者は辞典に取り付かれなかったのだ。
そもそもこの辞典を盗んだ件の泥棒も同じだ。
手に張り付いていたのなら、背後から声を掛けたあの時に懐からボトンと落ちるはずがないのだから。
「俺が知る限りでお前が三人目だ。この本に張り付かれない何かを持っているってことだろ」
「逆じゃないっすか?」
一歩詰め寄るミズハを押し止める、ドナの冷静な一言。
「なにが?」と問う。
「くっつかないのが三人で、くっついたのが先輩とファルちゃんの二人ならそっちが少数派っす。張り付かれない何かじゃなくて、逆に先輩たちが張り付かれる何かを持ってる可能性の方が高いっす」
固まるミズハ。
そして一歩引き下がり少し考えた後、「そっか」と納得した。




