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59.メッセージ
「ファルちゃん」
屋上に飛び移り、二階への階段に通じる扉を開けた先の踊り場にファルがいた。
うずくまって震えていた彼女の名前を、静かに優しく呼んであげると赤くなっている顔を上げた。
その懐に問題の辞典が抱いてあるのも確認できた。
「やっぱりファルちゃんが持ってたのか」
あのとき壁に刻まれた『1011』のメッセージ。
あれが全てを物語っていた。
「ごめんなさい。お兄ちゃん本持ったまま寝てたから、机に置こうと触ったらこんなんなっちゃって」
ファルは涙声で事情を話してくれた。
フィッツシャーのギルドマスターが触っても反応がなかった辞典が、ファルが触るとこのような事態を招いた現実。
そしてファルの手に渡った問題の辞典は、既にミズハが触っても何の反応も示さなくなってしまっている。
色々と思うところや気になる点だらけだったが、ひとまずミズハは一言に要約してみせた。
「ファルちゃんが無事で良かったよ」




