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Crystal Disc 外伝『深撃の銃弾』  作者: ハルシオン
第三章:マウントブック一家の護衛
44/109

44.「OMG! ――マウントブック一家の護衛⑱――」

今週の土曜日は二話掲載ではなく、二話"分"掲載です。

「着いたぞー!」

 誰からとも分からない歓声が上がる。

ミズハが同行するマウントブック一家のトラックは紆余曲折を経て、ようやく目的地である釣りの街フィッツシャーに到着した。


「受け取りの拒否は無しだぜ」

 そう言ってゴーガは海竜退治のときと同じように報酬を手渡してきた。

あの時と違うのは報酬の量だった。

「こんなにたくさん貰えないっての。今度こそ半額返す」

配達時間を過ぎてしまった事や負傷によって休んでいた期間があったことへの負い目がミズハにそう言わせた。

すると今まで大人しかったファミリーのボスが再び強気を取り戻した。

「はぁ!? 半額でもやり過ぎだボケ。なにがハンターだ、前金返してほしいレベルの仕事しやがって!」

この台詞に、三十四名の野郎どもの視線が一気に集まる。


「その必要はない」

 街の方から歩いて近づいてきたスーツ姿の男が言い放つ。

顔を覗き込んでもミズハには見覚えのない男。

だがマウントブック一家の面々にとってはよく知っている顔だった。

「ボス!?」

ゴーガが話していたようにマウントブック一家の本当のボスは口の悪い大男の方ではなく、そいつの兄だ。

怪我で入院しているはずのその本人がなぜか目的地の街へ先回りしている現実に野郎どもは全員戸惑いを隠せない様子。

するとスーツの男が言った。

「みんな心配をかけてすまなかった。そして弟よ。問題の荷物の、本当の届け先はお前だ。開けてみろ」

兄に言われるがまま、弟が十時までに届けなくてはならなかった荷物の封を開ける。

小包の中に入っていたのは一枚の手紙だった。

ボスがそれを読み上げる。


「親愛なる弟へ。マウントブック一家頭領資格審査の結果、残念ながら 不合格 となったことを通知する」

 紙切れに書かれた一文と兄の顔を呆然とした表情で交互に見比べる。

「不合格の原因は分かっているな?」

兄の問いかけに弟は反論する。

「でも兄貴! 確かに配達は間に合わなかったけどそれはいろんなアクシデントが重なって…」

弟の言葉を手のひらで遮り、たしなめるように兄は言う。

「俺達の仕事は荷物の安定輸送だ。最近の大雨を考慮すれば湖の水かさが上がっているのは予想可能。そもそも最初から無茶なスケジュールだと明白なら断る勇気も必要だ。その結果部下やハンターさんの命までも危険に晒すなど愚の骨頂! また一から勉強のし直しだ」


 無言でうなだれる弟の横を通り過ぎ、本当のボスがミズハの前にやってくる。

そして深々と頭を下げて謝罪する。

「愚弟が多大なご迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。今回の一件は部下達にも知らせていなかった事。責任は全てこの俺にあります」

ミズハはすっかり相手のペースに乗せられてしまい、焦りながら思わず頭を下げる。

「いや。こっちこそ力不足で仲間を怪我させてしまって悪かったです」

「報酬には治療費も含まれています。どうか受け取ってください。それでは失礼します」

そう言って最後に一礼し、マウントブック一家は一足先にフィッツシャーの街にまぎれていった。

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