43.「言葉 ――マウントブック一家の護衛⑰――」
輸送品を載せたマウントブック一家はその後、誰一人欠けることなく湖を脱出できた。
大蛇に襲われた野郎どもは全員無事。
今回の湖を突っ切るルートを指示したファミリーのボスも、すっかり肩身が狭くなってしまったが無事である。
本作品が始まって三つ目の人命を守る依頼であったがまたもやミズハの活躍で犠牲者は出なかった。
しかし当の本人は今回の仕事に満足していない。
予定された配達時間はとうに過ぎ、自身もまた獣の襲撃で死にかけて依頼主等に助けてもらう始末。
これ以上足を引っ張ることのないよう手早く応急手当を済ませ、ウェールズには戻らず一行はフィッツシャーを目指す。
日が傾き出す頃になってようやく目的地が見えてきた。
水に浸かった装備品の数々も乾いてきた。
取り外されたチェーンワイヤーを見つめながらミズハはずっと気になっていたことを問いただした。
「みんな、本当に湖には潜ってないのか?」と。
ゴーガ達は一斉に首を横に振った。
「そりゃ助けに行きたかったけどあの状況じゃ足をつけるだけで精一杯だったぜ。ミズハがワイヤーを伸ばしてなかったらどうなっていたことやら」
「それはよかった」と言ってミズハは考えた。
水中で死を覚悟した時に、別れ際のファルの言葉が脳裏をよぎった。
それとは別にあの時、水中ではっきりとした声が聞こえたのだ。
低く反響する声で。
「おもいしれ」と。
喋ることができる獣の少女が近所の森にいるのだ。
ひょっとしたら喋る大蛇がいたとしても、不思議ではないのかもしれない。




