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40.「脱出 ――マウントブック一家の護衛⑭――」
ゴーガの下した指示は的確だった。
そして水中から飛び出してきたワイヤーを見た時の直感も正しかった。
陸にいる三十四名の野郎どもの綱引きによって、ミズハは命からがら湖底から引き上げられた。
「しっかりしろミズハ!」
野郎どもの呼びかけによって徐々に意識が戻ってきた。
その上で改めて状況把握に努めたところ、まだ危機を脱したとは言えない状況であった。
二丁拳銃の片方および身につけていた火薬類はほとんど使い物にならなくなった。
護身用のナイフも湖に落とし、チェーンワイヤーも水中での使用によって巻取りが上手くいかない。
それになにより。
あわや頚動脈直撃という深い傷跡がミズハのコンディションを著しく低下させている。
上手く働かない思考をどうにか回しながらミズハは脱出方法を考えていた。
人命を最優先で考えるとやはり来た道を引き返すのが最善。
しかしそれにはあの強情で分からず屋のボスを説得しなくてはならない。
出掛けに話してくれたヤマトの忠告が頭に浮かぶ。
「俺の言葉が果たしてあいつに届くだろうか? 何も出来なかった、と罵られるだけだろうな」
首の傷に手のひらをあてがいながらミズハはすっかり弱気になってしまっていた。




