39.「噴射 ――マウントブック一家の護衛⑬――」
「浮かんでこないぞ」
陸上に取り残されたマウントブック一家の野郎どもは、仲間の身代わりになって大蛇に襲われたミズハの身を案じていた。
とはいえ暗い視界に暗い水面。
相手は自分たちの数倍の体格を有する野生動物。
誰一人として彼と同じように湖に飛び込んで助け出そう、というわけにはいかなかった。
いたずらに時間だけが過ぎ去っていく。
ラーメンが冷めたらおいしくなくなるのと一緒だ。
一刻も早くなんとかしなければ、時間が経てば経つほどにミズハの生存確率が低下していくことをみんなわかっているのに。
「こうなったら俺が行くしかない」
ついにゴーガが覚悟を決めて上着を脱ぎ捨てる。
周りの野郎どもの力のこもっていない静止を振り切り、足から飛び込もうとしたその時だった。
水中から勢いよく何かが飛び出してきた。
バシュッと噴射された細長いその物体はキャラバンを襲った大蛇か?
「さっきの蛇だ!」野郎どもの一人が叫ぶと、別の一人が冷静に訂正する。
「違う。ワイヤーだ」
飛び出してきたのは先端に鉤爪が付いた一本のワイヤーだ。
先端の鉤爪はどこにも引っ掛かることなく落下をはじめ、限界まで伸びきったワイヤーもそのまま一緒に水面にパシャンと落ちた。
「まさか、ミズハか」
ゴーガは鉤爪に付着した肉片を見てピンと来た。
そうと直感した時にはすでに他の野郎どもに指示を出していた。
「みんなこのワイヤーを引っ張れ!」




