38.「GYO! ――マウントブック一家の護衛⑫――」
今週末はちょっと二話以上の掲載は無理ですー。
夜が更けてきたウェールズの街の一角に、眠れない少女が一人。
親しいハンターの青年を見送ったその少女は妙な胸騒ぎを覚えていた。
「お兄ちゃん…」
誰にも届かないか細い声が闇に包まれた部屋にこだまする時。
目の前の景色がブレ出す。
手足の感覚が失われていき、体温も一緒に奪われていく。
水中にいるはずの体がまるで空中を漂っているかのように錯覚してしまう不思議な感覚。
自分の数倍のサイズを誇る大蛇に首筋を噛み付かれたミズハは身動きが取れないでいた。
「このヘビやろう」
この大蛇は依然として牙を突き立てたまま、全身をミズハの体に巻き付ける。
朦朧としているミズハには抗う力も意識も無い。
「死ぬかもしれない」という漠然とした意識だけがかすかにあった。
それからどれだけの時間が経ったのだろう。
飛んでいた意識が再び戻った時、ミズハはいまだに湖底で大蛇に全身を巻きつかれたままだった。
違うのは首下にあったはずの大蛇の頭が自分の目の前に来ていること。
「気絶したのを見計らっていよいよ食いにきたか」と冷静に状況を分析する。
確かにミズハは一瞬気を失っていた。
だがこうしてすぐに戻ってきた。
人間が死ぬ間際に見るという走馬灯。
ミズハには死ぬ間際にあの少女の顔が見えた。
「そうだ。俺はまだ死ぬわけにはいかない!」
その想いが、途切れかけていたミズハの意識を再接続した。
そして銃もナイフも手放したその右手の薬指がわずかに動くのを確認すると、腰の位置に突出したトリガーを静かに引いた。




