33.「助言 ――マウントブック一家の護衛⑦――」
「すまないね、ミズハ」
ぺこりと頭を下げてきたのはギルドの責任者ヤマトだった。
「やめてくださいよ。なんでヤマトさんが謝るんすか。前金だけでも凄い額だし、むしろ感謝っすよ」
さきほど手渡された金貨をジャラジャラ鳴らせながらミズハは言った。
「いいかミズハ。君がどんなに優れたハンターであろうと、あの男にとっては『自分の半分も生きていないただの若者』であることを覚えておいてくれ。五十年近く生きた人間ってのはな。人の言葉だけではほいほい生き方を変えられなくなるほどに凝り固まってしまうものなんだ」
これがヤマトの人生観だった。
それ以上の歳月を生きて、ギルドの関係者として様々な人間を見てきた彼が導き出した一つの答えだった。
「ヤマトさんの言葉にはいつも助けられてますよ」
ミズハはそう言うと、壁に貼り付けられた新たな手配書に目を通していた。
「一人増えてる」
「そいつはフィッツシャーで度々出没しているコソドロだよ。最近珍しい書物を盗んだとかで賞金が掛けられたんだ」
珍しい書物。
そういえばフィッツシャーにはこの街のよりも大きな図書館があったとミズハは思い出した。
獣人のことが詳しく記載されている本が手に入るかもしれない。
獣の少女のこともまだ諦めたわけではないのだ。
「行くついでだ。覚えておくか」
そう言ってメモを取り出し、名前や出没した場所等を記録することにした。




