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25.クマ
「お兄ちゃん?」
やさしくて可愛らしい声が耳元から聞こえた。
ミズハが本に張り付いていた顔を上げると、そこにはさっき見た顔があった。
「あれっ? ファルちゃん学校に行ったんじゃないの?」
あの真面目で良い子のファルちゃんがまさかのサボリ?
そんな驚きを隠せない様子を見せるミズハを見て、ファルもびっくりする。
「行ったよ。もうとっくに下校時間だよ」
本を置いて辺りを見回すと、カーテンの隙間からオレンジの西日が差し込んできている。
時計を見上げると閉館時間の十分前になっているではないか。
「えっ。もう夕方なのかよ」
積み上げられた本の壁に囲まれて、まるでダンジョンのボスのように調べ物に夢中になっていたせいですっかり夕方になってしまっていた。
「お兄ちゃんすごいクマができてる」
ファルに指を差されて笑われた目の下をトイレの鏡で確認すると、クマというよりパンダみたいだとミズハは思った。




