23.「一日の終わり ――誘いの森の業者救出⑫――」
落盤事故に巻き込まれた業者が発見された。
荷物や馬車には損壊が激しく怪我人も大勢出たが、死亡した者はいなかった。
真っ先に出発したハンター達も同じく無事だった。
獣に襲われたり足をくじいたりした者がいたがこちらも死者は無し。
今回の人命救助成功の影に一人のハンターの存在がある。
名をミズハ。
弱冠二十歳にして数々の輝かしい実績を積んだ二丁拳銃のハンターが先導して、遭難者達を誘いの森から脱出させた。
ハンター達を育てるギルドの責任者ヤマトが嬉しそうに話す。
「見事というか流石というか。大したものだよ!」
ヤマトの娘ソラも、ミズハの腕の包帯を取り替えながら話す。
「でも無事に帰ってきてくれて本当に良かったわ」
ミズハは言う。
「あぁ。誰一人欠けることなく帰ってこれてよかった」
「その誰一人ってのにミズハも入ってる事を忘れないでよね」
包帯を取り替え終えたソラが言うと、ヤマトもうんうんと頷いていた。
報告を済ませ、家路に着く頃にはすっかり朝になっていた。
帰路の途中にファルとばったり出会う。
「おはようファルちゃん」
「おはよう。お兄ちゃん今仕事終わったの?」と、心配そうな顔をして尋ねられる。
「そうだよ。いいだろー。ファルちゃんはこれから学校かい? 大変だね」
冗談口調でそう言うと、手提げカバンをスイングしながら内ももを軽く蹴られた。
心配そうだった顔がやや呆れ顔に変わったファルが言う。
「じゃ、行ってきます。おやすみなさい」
部屋に着くと早速装備を脱ぎ散らかす。
二丁拳銃もチェーンワイヤーもその他諸々が床にゴトゴトと落ち、凄まじい開放感がミズハを襲う。
ファルに「おやすみなさい」と言われた。
休憩を挟んだとはいえ一日に大きな仕事を二つもこなしたダメージは大きい。
開放感の次は疲労感がミズハを襲う。
だがちっとも眠たくはなかった。
森で遭遇した獣の少女のことが気になってしょうがなかったからだ。
「やっべぇ。テンション超上がってるぜ。もったいなくて寝ていられるかよ」
シャワーも浴びずにブツブツと独り言が出る。
本棚にあったマンガのモンスター図鑑を開きながら、彼女のことをあれこれ考えずにはいられなかった。




