26番地 魔力再起動
物語もいよいよ山場……ですが、シリアスが息をしてないのが拙作です。あしからず。
土曜日を迎え、俺とクロエ、シルヴィ……ついでに牛込は全ての元凶たる古代の魔法装置を止めるべく、クロエ宅の地下に来ていた。壁に埋め込まれた鉱石が、石造りの通路をぼんやりと照らしている。
「よりによってテスト間近でこんな危機が来るなんてな……」
「世界の危機には代えられない」
「まぁ巻き込んでしまった以上、埋め合わせはさせてもらうから安心したまえ」
「アナタに埋め合わせという概念あったんですね」
「小鹿君、なんか最近私への遠慮がなくなってないかい?」
「すっげー……マジでダンジョンじゃん」
「一周回って尊敬すら感じるな、牛込のいつも通り加減」
「気をつけたまえよ。恐らくは私すら生まれていないほど昔の施設だ、妙な罠の術式が生きてるかもしれない」
「落ちてるアイテムを片っ端から拾いながら言われても説得力ないんですが?」
シルヴィが落ちていた鉱石を拾おうとすると、バチン、と音がした。ほら言わんこっちゃない。
クロエがすぐさま、小さいバリアのようなものを展開する。
「うおっ! マジでトラップあるじゃん! テンション上がってきた!」
「いやぁ、今のは痺れたねぇ」
「どこで喜んでんだ、牛込! シルヴィさんも余計なもの拾わないでください!」
「3人共、うるさい。そろそろ最奥部に着く」
「え、私もかい……?」
歩いていくと、重厚感のある扉が見えてきた。シルヴィが指先で複雑な模様を描くと、扉がゴゴゴゴゴ、と大きな音を立てて開いた。
その先には、広大なドーム状の部屋があった。部屋の中央には、巨大な水晶が鎮座し、水色に怪しく明滅している。これが件の魔法装置のようだ。
水晶の表面には、謎の文字と模様が浮かんだり消えたりを繰り返している。……ん? この模様、どこかで見たような……。
「……もしかしてこれ、俺んちの炊飯器か?」
「うわマジだ……オレんちのレンジどころか、この前食ったチャーハンまで浮き出てる……興醒めするわ……」
「そんなこと言ってる場合か」
「完全に日本の技術を『未知の超効率魔法』として取り込もうとしているねぇ……」
シルヴィとクロエが装置の核を解析した結果、装置を停止させて空間接続を安全に固定するには、核に魔力を注ぎ込んで強制再起動させる必要があるらしい。だが……。
「強制再起動には一瞬で莫大な魔力を流し込む必要がある。……でも、私の最大魔力出力では20%くらい足りない。非合理的限界」
「え、じゃあ大師匠様が注入すれば一発じゃ……」
「いや、私がやると過剰な魔力に耐えきれず、装置が壊れる恐れがある。そうなると空間の接続も壊れ、君達が帰れなくなる。……少年達が故郷や家族と引き離されるのは堪えられない。だから、これはクロエがやるしかない」
「20%ねぇ……クロエ、お前がこの前羊羹で糖分補給した時の魔力の上昇率ってどれくらいだったんだ?」
「……合理的試算。最高品質の糖質と高栄養を直接摂取した場合、一時的な魔力増幅率は約25%〜30%」
「ここでコイツの出番ってわけか」
そう言って、俺はリュックから高カロリーな菓子や羊羹、そして保温水筒に淹れてきた濃いめのココアを取り出した。羊羹以外はほぼこの決戦(?)のために買い込んできたものだ。
いよいよ最後の仕上げとばかりに、クロエは装置の制御盤に俺の黒歴史ノートを置く。曰く、このノートが制御のための鍵として機能し、暴走を抑えるフィルターとなる……らしい。
「……ブドウ糖および多幸感、魔力回路へ限界突破充填。……これならいける」
「すげぇ……本当に小鹿のおやつで世界が救われようとしてる……!」
魔力が極限まで満ちたクロエが、黒歴史ノートの魔法陣を通じて装置の核へ一気に全魔力を注ぎ込む。
地下空間全体が一瞬眩い光に包まれ、装置の表面に浮かんでいた炊飯器やチャーハンの像が光の粒子となって消えていく。
『ピロリ♪ピロリ♪』
「あ、起動した」
「○ックでポテト揚がった音かよ!?」
「オレしばらく○ック行けねえわ……」
「素晴らしい! 古代装置の無制限な学習・拡張機能が完全に停止したよ。これで……小鹿君の部屋と牛込君の部屋の2箇所だけが、半永久的に行き来できる安定した小型ゲートとして固定された」
空間浸食の危機が去ったことで、俺達は安堵して崩れ落ちる。
「……任務完了。激しい魔力消費により、甚大な空腹感を感知。……アキヒサ、帰ったら肉食べたい」
「はいはい、帰ったらとびっきりの晩飯作ってやるよ」
……明後日からの期末試験は一旦置いておこう。
もうちょっとだけ続くんじゃ




