22番地 画面越しのファッションと黒歴史
ある意味では本作屈指の自由人が再び登場です。
その日1コマ目の講義が終わり、スマホを見ると、母さんから『近くまで来たついでにクロエちゃん借りてます♪』とLIMEの通知がきていた。そのすぐ後に、クロエからも『ユキコママのお供。これも同居の合理的対価』とよく分からない理屈のメッセージがきた。ちなみに言っておくと"由紀子"が母さんの名前なのだが、"ユキコママ"という呼び方は本人の要望らしい。スナックかよ。
2コマ目もあるので、それぞれ『いってら』『下手に騒ぎ起こすなよ?』とだけ返信しておく。
昼休みになり、再びスマホを開くと今度は『小鹿家&クロエちゃん』のグループLIMEに何件もの通知がきていた。
未読分の一番上から見ていくとしよう、と画面をスクロールすると、母さんが「せっかくだから色々コーディネートしてみた」というメッセージと共に、白と水色のフリフリの服を着せられ、目が死んでいるクロエの写真を載せていた。クロエは「……非合理的センス」と付けていたが、正直似合っていると思う。そもそも母さんはファッション業界の人間だ。本職のセンスをなめないでもらおうか?
その次に送られていた写真には、大きめのデニムジャケットにダメージジーンズを合わせた、ちょっと大人っぽいストリートファッションに身を包み、帽子を目深に被ったクロエの姿があった。
ちなみにこれに対するコメントは、母さんが「見て明久!この服のクロエちゃん、モデルさんみたいでしょ!」で、クロエが「思ったよりは動きやすい」である。温度差がエグい……。
さらに、3枚目の写真に目を移す。テーブルいっぱいに並べられた豪華なパンケーキやパフェを前に、フォークを持ったままフリーズしているクロエの写真だ。クロエは「糖質と脂質の過剰摂取。栄養学的に非合理的」と言っていたが、母さんの「美味しいから食べてみてって言ったら、真顔で全部完食してくれたわ〜♡」というメッセージで説得力(?)が吹き飛んだ。
最後に送られていたのは、クロエと母さんのツーショット写真。が、目が大きく加工されていたうえにこれでもかというほどスタンプが盛られており、もはや「誰だよこれ!?」とツッコまずにはいられない状態だった。あと、「異世界から来た。」とか堂々と書くなよ。
これには特にコメントがないな?と不思議に思っていると、画面に次々と新しいメッセージが流れてきた。母さんからの爆弾投下だ。
『クロエちゃんに明久の小中学校の時の話したら、すごく興味深そうに聞いてくれてね!』
『待て母さん、何を話した』
『小5の時に自分で書いたオリジナルの魔法陣ノートのこととか、中2の時に「俺の右腕には黒き龍が〜」って言ってたこととか♪』
『よりによってそれはやめろ!!!頼むからそれ以上喋るな!!!』
『……非常に興味深い。「黒き龍」の術式、帰宅後要ヒアリング』
クロエ、お前もヒアリングするな!!異世界の本物に黒歴史見せられる俺の身にもなれ!!
またしても黒歴史を投下されたせいで調子を狂わされたまま午後の講義も終え、帰宅。
リビングのソファに座っているクロエは、母さんに買ってもらったストリート系の私服を丁寧に着こなしていた。
「……ただいま。母さん、もう帰ったのか?」
「……おかえり、アキヒサ。ユキコママからのプレゼント、大切に保管する」
「プレゼント?」
服とは別にあるのか?と思いつつクロエの方を見ると、彼女の膝の上には、実家から母さんが持ってきたのであろう、かつての俺が書いた黒歴史ノートが鎮座していた。
「返せ!!今すぐ焚き付けにしろ!!」
「……非合理的。これはアキヒサの『黒歴史』という名の貴重な研究資料」
「研究するなそんなもん!!」
そう言い合いになりつつも、クロエはおしゃれな服の袖を少し気にしながら、ボソッと呟く。
「……ちなみに、お菓子は美味しかった。洋服も、悪くなかった」
少しだけ嬉しそうに目を細めるクロエを見て、毒気を抜かれてしまった俺は頭をかきながら、「……そうかよ。母さんにお礼LIME入れとけよ」と返すほかないのだった。
……なんで息子の黒歴史を持ち歩いていたのかって?他の荷物に紛れ込んだってことで一つ…




