21番地 約180歳差のロマン談義
今回は20番地からの続きとなります。
まだ読んでいない方はそちらからどうぞ。
散々俺達を弄り倒したシルヴィさん——正直呼び捨てを検討し始めている自分がいるが——だったが、退屈しのぎとばかりに牛込に話を振ってきた。
「ところで牛込君、私は今日初めて君と会ったわけだが……ロドリグには会ったかい?」
「いや……そのロドリグ……さんって誰なんですか?」
「この村で私の次に長寿の鍛冶屋さ。向こうの煙突から煙が出ているだろう?そこが彼の工房だよ。……そうだ、彼の腕なら、君のその『すまほ』とやらの外枠くらい、簡単に作ってくれるかもしれないよ?」
「マジっスか!?異世界の鍛冶屋が作るスマホケースとかすげえ気になる!行く!絶対行く!」
「おい待て!ロドリグさんは真面目すぎるから、お前の適当な注文を真に受けたら大変なことに……って速え!?」
ハイテンションのままに工房へダッシュした牛込を慌てて追いかける俺に対し、クロエは「……巻き込まれたくない。合理的待機」と静観を決め込んだ。ちょっとムカついたので、ファイヤーマンズキャリーで連行する。
扉を開ければ、相変わらず立ち込める熱気と鉄の匂い。そして、黙々とハンマーを振るうロドリグさんの姿があった。
「う、うおおおーーーッ!!本物の鬼!?本モゴモゴ……」
「流石にうるさいぞ」
またしてもテンションが振り切れる牛込。この場ではシンプルに迷惑なので慌てて口を塞ぐ。
そこへ、俺達の来訪に気づいたロドリグさんがハンマーを置いて出迎える。
「おお、アキヒサ殿、それにクロエ。……して、そちらの騒がしい青年は?」
「こいつは牛込達也といいまして……一応、俺の友人です。牛込、こちらが鍛冶師のロドリグ・ルジュロさんだ」
「ほう……アキヒサ殿には世話になっておる。その御友人とあらば、儂の全力をもってもてなさねばならんな」
え、えぇー……いくらなんでもこっちからのギブに対してテイクが過剰じゃない?
「じゃあロドリグさん!これ……スマホを守る最強のケースか、なんかカッコいい防具みたいなやつ作れないですか!?」
そんで牛込、お前は1回自重しておけ。日本人をあらぬ認識されても困る。
「ふむ……未知の魔導具を護る鎧か。よし、ドラゴン級の爪も通さぬミスリル鉱を鍛え上げ、衝撃吸収用にスライムの核を仕込んだ『超堅牢型スマホ甲冑』を作ろうではないか」
「なにそれめちゃくちゃカッコいいじゃないっスか!!!」
「……間違いなく重くなる。非合理的」
コイツ……俺が言おうと思っていたことを速攻で……。
「あ、あと七色に光らせられたりします?」
「……となれば、蛍光鉱石の錬成か」
一見合わなそうで、職人としてのこだわりを追求するロドリグさんと、ロマンを追求する牛込の波長が完璧に合致するのを感じた。2人で「この角度の傾斜が〜」「耐熱性能は〜」と熱い議論を始め、気づけば打ち解けている。
類は友を呼ぶ、というか……ベクトルは違えど全員脳筋だな……と、俺は遠い目をするしかなかった。
数時間後、ロドリグさんが試作品として出してきたのは、スマホがすっぽり収まるサイズの、西洋兜のような金属塊。パカッとバイザーを開かないと画面がほとんど見えない仕様だ。
「重っ!!でも……バイザー開閉ギミックとかロマンの塊だこれ!!」
「画面見るたびに兜パカパカ開けるのかよ!?操作性ゼロだろ!」
「……アハハ!やっぱりロドリグは期待を裏切らないねぇ」
いつの間にか工房の隅で見物していたシルヴィさんが、腹を抱えて笑っている。いつからそこにいたんですかアンタ。
クロエは「……非合理的。ただの鉄と鉱石の塊」と呆れ顔をするばかりだった。
ロマンチストに技術を持たせたらこうなるの図。




