18番地 クレーンの魔法
クレーンゲームもだいぶ増えてきましたねぇ……
ロクに取れた記憶のない作者です。
大学から帰るついでに買い物をしていると、牛込からグループLIMEに通知がきた。
『週末ゲーセン行こうぜ!』
『行く』
クロエのやつ、即決かよ……牛込じゃなかったらカモられてるぞ。
不安しかないが、まあ……家でずっとスマホいじってるよりはマシか?
そんなこんなで土曜日、駅前のゲーセン。
「どうよ初めてのゲーセンは」
「視覚的にも聴覚的にも賑やか」
「そりゃそうだろうが……しかし、なんでまた即決だったんだ?」
「これがあったから」
そう言ってクロエが見せてきた画面に映っていたのは、なんとも可愛らしい猫のぬいぐるみ。
「こういうの興味あったんだな?」
「……師匠の使い魔に似てる」
「クレーンゲームのプライズか……クロエちゃん、クレーンゲームは現代の魔境だぜ?ここはオレがコツを……」
「クロエならもう目当てのモノがある筐体探しに行ったぞ」
ガックリと肩を落とす牛込。クロエが迷子になっても面倒なので牛込は雑に回収しつつ、件の筐体まで向かう。
筐体の前で牛込がアームの軌道やら確率機のタイミングやら長々と理論を語るが、クロエは「……非合理的。爪で掴むより、魔法で浮かせれば確実にプライズは取れる」と一蹴。業務妨害とかに引っかかりかねないから絶対やるなよ?
そう俺が釘を刺したこともあり、当初は普通にプレイしていたクロエ。が、どうやら確率機——一定額に達するまではアームの握力が弱い設定になっているらしく、ただ金が溶けていくばかり。
相変わらずの無表情ではあるが、クロエが少し苛ついている気がした。
痺れを切らして実力行使に出たりしないよな……?と筐体を注視していると、件のぬいぐるみの位置が大きく動いていた。もしや風魔法あたりで少しずつ押したのか?
全てを見ていたわけではない以上突っ込めないが。
牛込のアシストもあり、どうにかぬいぐるみを取ることができたクロエ。そこそこの金が飛んだが。
ぬいぐるみを抱きしめ、クロエがわずかに頬を緩める。
「……懐かしい。……師匠の使い魔は、もっと生意気だったけど」
そう呟くと、クロエは少しだけ居心地悪そうに周囲を見回した。そして、ふと隣の筐体に視線を向ける。そこには、目当てであろうお菓子が全く取れないのか涙目になっている、小学生ぐらいの子供がいた。
ちら、とクロエの方を見ると、こっそりと筐体を指さしているのが見えた。
再び筐体を見る。ほとんど動いた形跡のなかったお菓子が大きく動き、遂には景品口へ落ちていった。驚く子供と、どこか満足げな表情を浮かべるクロエ。
「……あのアームの動きでプライズがあんなに動くか? お前、まさか……」
「……師匠も昔、道端で泣いている子供に魔法で果物を渡していた。他人の笑顔は、私の精神の安定に繋がる」
「意外と優しいんだな」
「"意外と"は余計」
そう言って、クロエは少しだけ嬉しそうにぬいぐるみを抱き直した。……ま、今日くらいはいいか。
意外な一面を見せたクロエ。
次回、新キャラ出ます。




