16番地 現代の魔法(ネット)は取扱注意
同日更新その4。
久々にあの男が登場です。
クロエがスマホを手に入れて数日経った。
大学での講義中、スマホのバイブが何度も鳴る。犯人は察しがついているが、今は無視だ無視。
講義が終わり、通知を確認すると案の定クロエからのLIMEが大量に届いていた。
「クロエのやつ……スマホ初心者のテンプレみたいな誤字やらスタンプ連投は勘弁してくれよ……」
「え、なにクロエちゃんスマホデビューしたの?」
「うわ出た」
「人をゴ○ブリみたいに言うこたないだろ!?……んで、4コマ終わったらお前んち行くからヨロシク☆」
「否応なしかよ……別に構わんが」
正直、遅かれ早かれコイツの力を借りることになりそうだしな。ネットの魔境にクロエを一人で放流するのは、さすがに良心が咎める。
4コマが終わり、牛込を連れて帰宅。
「お邪魔しま〜す」
「……あ、タツヤ。いらっしゃい」
ソファでスマホをいじっているクロエを見るなり、牛込が真顔になる。
それもそのはず、画面には「1日3個アイスを食べると健康になる」などという怪しすぎるネット記事が表示されていたのだ。
「……合理的。ネット、世界の真理が詰まってる」
そんな真理があってたまるか。
「待てクロエちゃん!現代日本のネットを舐めちゃいけない。そこは有象無象のデマと罠が渦巻く魔境だ。リテラシーのない人間は一瞬でカモにされる!」
らしくない先輩風を吹かせた牛込による「ネットリテラシー講座」が始まった。
ワンクリック詐欺やSNSの炎上、個人情報の流出といったオンラインのトラブルについて熱弁する牛込。ここまで真面目な牛込は初めて見た。
「……なるほど。スマホは、一歩間違えると精神に致命傷を負う呪いのアイテム……」
「ある意味ではそうかもな。例えば、恥ずかしい写真とかを間違えて全体公開したら、一生……下手すりゃ死後もネットの海を漂う『デジタルタトゥー』になるんだ!」
クロエはぽんと手を叩き、「……知ってる。これも、デジタルタトゥー?」と、牛込にスマホの画面を見せる。
即座に吹き出し、その場に蹲る牛込。ものすごく嫌な予感がして画面を覗き込むと、そこには以前父さんが送ってきたギャン泣き写真。
「……っ!……っ!……おい小鹿これ何歳だよ!?最高じゃん!」
「おいそんなもん見せるなクロエ!!」
「……ふぃー、あー笑った。まぁでも、一番大事なのは『現実の繋がり』を忘れないことだな」
少しいいことを言った牛込はそのままクロエのスマホを設定し、怪しい広告をブロックするアプリを入れるなど、セキュリティを高めてやる。ウザい面もあるが、こういう時に頼りになるのが牛込という男である。
「んじゃ、講義の報酬っつーことでゴチになります」
「地味にちゃっかりしてるよなお前……」
「こういう時でもないと小鹿の手料理食えないじゃん?」
賑やかな食卓を囲んで牛込が帰り、夜。クロエはベッドの上で、新しく覚えた設定でスマホを使っている。
まぁ、牛込のおかげで少しはマシになったか……と思っていると、クロエからLIMEが1通届く。一応同じ部屋にいるんだが。
開いてみると、例の黒歴史写真に「よくできました」というデコスタンプがやけに綺麗に貼り付けられた画像が。いや「よくできました」じゃないが?
「……ネットリテラシー、クリア。加工して、保存した。合理的」
「加工して保存すんな!せめて顔を隠してからリテラシーを語れ!」




