表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/26

10番地 クロエの評価

クロエとてズボラなだけではないのです。

 日曜日、朝食を済ませた俺が洗濯機を回そうとすると、インターホンが鳴った。

 はっきり言って、気が重い。


「……はい」

「小鹿ー!異世界行こうぜー!!」

「○島かお前は。朝っぱらから玄関先であんまデカい声出すな」

「あ……タツヤ、おはよう」

「おはよークロエちゃん!早速だけど村行っていい!?」

「大丈夫。ちょっと待ってて」

「俺の意思は……?」


 流されるように再びセゾニエ村へ。

 監視もなしに牛込(コイツ)を村に放つとロクなことにならないのは目に見えているので、(不本意ながら)俺も同行する。


 前に来たときとは別の場所を中心にブラブラしていると、慌てた様子の村人が声をかけてきた。

「クロエちゃん、ちょうどいいところに!」

「タイスおばさん……?どうした?」


 その様子を見て、牛込が小さく呟く。

「……普通に相談されてるね」

「別の村人から引きこもりって言われてなかったか?設定どこ行った?」


 改めて、クロエと、タイスおばさんなる村人の方に注意を向ける。

「今朝になって井戸の水が濁ってて……味も急に甘ったるくなっちゃってねぇ……」

「甘ったるい……?なあ小鹿、それってもしかして、天然のミルクティーが湧き出たとかそういうやつか?」

「んなわけあるか。……って、お前いつの間に瓶なんて持ってんだよ」

「いや、ワンチャン高級飲料として日本で売れるかなって……」

牛込の商魂逞しい(かつ危機感ゼロな)呟きを、俺は無視することにした。

 

「……昨夜までに何か変わったことあった?」

「それが心当たりらしい心当たりもないのよ」

「ちょっと井戸、見せて」

 

 そう言ってタイスおばさんの家に向かうクロエ。あと俺と牛込。

 しかし、井戸水の汚染とは割と死活問題では?日本だったらニュースものだぞ。

 などと考える俺をよそに、クロエは井戸の縁に立つと、懐から小さなガラス瓶を取り出した。

「……アキヒサ、これ持ってて」

 渡されたのは、昨日の大掃除で見たような、正体不明の古いオブジェ(?)だった。

 彼女が指先を水面に向け、短く呪文を唱えると、井戸の底とオブジェ(?)から微かに青い光が見えた。

 いつもの「ご飯を待つ子犬」のような空気は消え、その横顔には、研究者としての鋭い色が混じっていた。

 

「……魔力反応あり。自然現象での汚染じゃない」

「分かるのか?」

「アキヒサが持ってる装置の色を見れば簡単」

 サラッと言うことじゃないだろ。

 さらに原因を特定するため、クロエは水魔法で井戸の中を全部抜く。ネズミのような胴体に馬の頭がついた、珍妙な小動物が出てきた。


「え、何その……馬?ネズミ?」

「これはウマネズミ。甘いものが好物でここ……腹に蜜として溜め込む習性がある。多分それが漏れて井戸水が甘くなった」

 あまりの判断の速さに驚く俺と牛込。

 クロエは件のウマネズミをいつの間にかあった箱罠に入れる。

「……これ、アキヒサのデザートにする?」

「人をゲテモノ食いみたいに言うんじゃない」

「この村ではそこまでだけど地域によっては食べるところもある」

「クロエちゃんは食べたことあるの?」

 クロエは無言で目を逸らした。それでよく「デザートにする?」とか言えたな。

 

 クロエはウマネズミを森の方向へ飛ばし、引き上げた水を魔法と持っていた薬を併用して浄化してみせた。

「……終わり」

「いやぁ助かったわ、クロエちゃん!」


 ごく普通に感謝されるクロエを見て、牛込が耳打ちする。 

「……普通にすごくね?」

「……ああ」

 半分引きこもりとか言われつつも、なんだかんだ頼られるんだなアイツ……。


「お礼といってはなんだけど、干し肉か野菜でも持っていかない?」

「……礼には及ばない。礼ならこっちから貰う」

 と、俺を指すクロエ。

「……いやなんで最後そうなるんだよ!?折角の活躍が台無しだ!」

 

 結局、活躍したはずのクロエが俺に説教されながら帰路につく姿を見て、「仲が良いわねぇ」と笑う村人たちであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ