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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第3巻発売&コミカライズ、もうすぐです!】  作者: 一 二三


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迫る影 ⑮

「・・・さてと。後はコイツだ」

「エライワーですね。どうすれば?」

 ルナリアと私とレヴィアさんとマーシュさんの4人で麻袋の中を覗き込む。

 麻袋に詰まっているのは真っ黒に熟したオリーブの実だ。


 うーむ・・・。

 工業的なオリーブの搾油って種子ごと圧搾しちゃうんじゃ無かったっけ?

 でも、オリーブの木をどんどん増やしたいのだから種子は残したい。

 だったら、取れる手段は一つしか無いよね。


「・・・実を剥いて、果肉と種子に分けて欲しいんだよ」

「手作業になりますね。まあ、数が知れているので問題ないでしょう」

 実際に作業する人には手間を掛けて申し訳ないけど、こればっかりは仕方ないな。

 何か注意点って有ったっけ?


 桃とか梅とか種子に固い殻を持つ果実はどうだっけ。

 いわゆる果実とは、植物の生存戦略だ。

 確か、動物に果実ごと種子を食べて貰って、動物の体内で果肉が消化されて殻の付いた種子がふんと共に排泄されるのが前提なんだよね。

 種子まで噛み砕かれては困るから、固い殻で種子は守られている。


 果肉ごと種子を食べた動物が種子を運び、親の木から離れた場所で発芽することで個体数を増やして棲息域を広げるんだよ。

 糞と共に排泄された時点で果肉は消化されて残っておらず、糞が被さっているために種子は乾燥せず、排泄物に含まれた水分と排泄物が発酵分解された肥料を得て種子が発芽するわけだ。

 樹木の増殖システムに則るなら、果肉は不要物だから種子から取り除いてしまうのが正解のはず。

 むしろ半端に果肉が残っていてカビたり腐敗したりは、生物の生育環境としてマイナスじゃないかな。


「・・・種子の方は果肉を綺麗に削り落として、カビないように乾かしてから、他の種子と一緒に保管して欲しい」

「承知しました。果肉の方は、どう処理しますか?」

 それな。

 どの程度まで加工技術が進んでいるのか、把握できていないんだよね。

 やりたいことを伝えてみて、今がどうなっているのかを訊いた方が早そうだな。


「・・・圧搾―――、高圧を掛けて汁の最後の一滴まで絞りたいんだよ」

「ワインの絞り作業と同じでしょうか?」

 ああ、そっか。ワインが有ったな。

 レヴィアさんの質問に、どんな圧搾技術が有ったかを思い出してみる。


 足踏み―――、は、紀元前のメソポタミア文明の頃だっけ。

 日本人がイメージする古典的なワイン製造作業では、プルプルピチピチの若い女性が大きな桶の上で葡萄をブチブチグチャグチャと踏み潰すアレだよね。

 悪意のある感想でゴメンね?


 だってさあ、若い女性と見れば何でも興奮するスケベオヤジは喜ぶのだろうけど、同性の目から見れば、ええ? グツグツに煮え滾った熱湯で熱菌消毒もしていない素足で踏ん付けた汁を飲むの? と思わざるを得ないんだよね。

 少なくともアレを見た私は、そう思ってた。


 葡萄を踏ん付ける女性が水虫持ちだったら大惨事じゃない? 知らんけど。

 私は缶ビール派でワインは飲まなかったからなあ。

 私のワインへの偏見は缶ビール派ゆえの感想かも知れない。

 工業化されたワイン生産で、いつまでも葡萄を踏ん付けて回ってるわけが無いものね。


「・・・ワインの場合、どうやって絞るの?」

「丸太の下に積んだ葡萄を、こう、押し潰すんですよ」

 私の問いに、マーシュさんは葡萄に見立てた右拳の上に左手の手首を載せて、押し下げる仕草をした。

 見覚えの有る左手の動きに、エピソード記憶と意味記憶が結びついて私の脳裏に答えを引っ張り出す。


「・・・ははあ。テコ式の圧搾機か」

 日本では平安時代に京都で発明された圧搾方式だ。

 形状を分かりやすく言い表すと、書類の端にガションと穴を空けるパンチの刃の部分が圧搾する部分になる。

 朝廷に献上するエゴマ油を絞った方法で、長木式搾油機だっけな。


 今でも油の神様ってことで京都の神社に祀られていて、大発明した当時の何とかいう宮司さんの功績は、朝廷に油司あぶらのつかさという官職までいただくほどだったらしい。

 欧州では木ネジ式というか、螺旋形状の溝を刻んだ柱で万力まんりきみたいに締め付けて圧搾する方法が主流だったと思うんだけど、アレって場所を取らないからだったっけ?


 なぜか召喚魔法の拉致被害者は日本人が多いみたいだからね。

 日本の長木式の情報が伝わっていても不思議は無い。

 ふむふむ。

 ともあれ、搾油に技術的な問題は無さそうだな。


「・・・ワインと油は圧搾機を分けるべきだと思うけど、同じ方法で良いよ」

「了解です。新たに用意させます」

 木材が足りない、とかなら私が森で木を伐ってくるからね。

 マーシュさんがメモったのを見届けたレヴィアさんが提案してくる。


「果肉を削ぎ落としたら、試しに絞ってみますか?」

「・・・そうだね。どのぐらいの比率で油が採れるかを見ておきたい」

 油分と水分では比重の軽い油が上に浮き水分が沈殿する。

 搾油機で絞った果汁をしばらく置き、水分と不純物を沈殿させた上澄みを掬い取ったものがオリーブオイルだ。



迫る影⑮です。


水虫パンデミック!?

次回、アイツ!?

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― 新着の感想 ―
【一言】 そう言えば、巫女さんが造るお酒で「口噛み酒」があるって聞いたことあったな。他にもアフリカの取材で部族全員でお酒を造る際にもモグモグ噛んで唾液と一緒に樽?に入れてたのを観たわ。 懐かしいなぁ。…
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