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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第3巻発売&コミカライズ、もうすぐです!】  作者: 一 二三


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迫る影 ⑯

 この実験で、どの程度の油が採れそうかの目処が立つ。

 1本の木から、どれぐらいの果実が採れるか未知数だけどね。

 第一段階としての目安が欲しい。

 ひとつ一つの目安が明らかになれば、目標とする産出量から、どのぐらいの農園が必要か逆算できるようになる。

 絞りかすは馬糞と混ぜて発酵させれば肥料になったはずだし、広げていく農地の土を肥やすのに使える。


「そのように段取りします」

「・・・お願い」

 マーシュさんに出した指示で冷蔵倉庫作業は終わりだ。

 馬糞の処理を現状どうしているのかも確認しておかないとな。

 ウォーレス領は軍馬の一大産地で馬の飼育数が多いから、発生する馬糞の量も半端じゃないはず。


「・・・馬糞かあ」

「ばふん? 馬のふんのこと?」

「・・・えっ? ああ。その馬糞」

 おっと。独り言が出ちゃってたか。


「馬糞がどうしたの?」

「・・・いやあ。馬糞って堆肥の中でも土壌改良効果がすごく高いらしいんだよ」

 同じ草食動物である牛の排泄物と較べても、馬は反芻しないから繊維質の消化が進んでいなくて土の通気性や保水性が良くなるとか何とか。


 ワナの技術と違って実体験による知識じゃないから自信を持って言い切れないところが辛い。

 堆肥として発酵させる期間も3ヶ月間とか書いてあったと思うんだよね。

 発酵分解工程だから気温や湿度に影響されるだろうけど、3ヶ月ぐらいなら落ち葉から作る堆肥よりは早く出来上がるはずだ。


「どじょう改良?」

「・・・荒れ地のカチカチに固くて痩せた土に混ぜ込めば、土がフワフワになるとかならないとか」

 魚類のドジョウと判別が難しい感じで返ってきたけど、こっちの世界にドジョウが居るのかどうかも分からないし、ドジョウを説明する方が難しそうだから全力でスルーだ。


 どうだったっけ?

 農業系の記事ももっと読んでおけば良かったな。

 私の記憶がいつもに増して曖昧なことをルナリアは見抜いたらしい。


「あんまり興味が無かったのね」

「・・・面目ない」

 的確なツッコミだな。


 私の性格を把握しているルナリアに苦笑を返す。

 狩猟系野生児だった私は、狩猟の成功率を引き上げるために動物の生態を知ろうとした結果、糞が堆肥に利用されている記事に行き着いただけで、糞そのものや利用方法を知ろうとしたわけじゃなかったからね。

 惰性で読むことは有っても、興味が無いことには知識欲の食指が動かなかった。


「取っ掛かりが有るだけで十分です。お気になさらず」

「・・・ありがと。現状、馬糞の処理って、どうなってるか分かる?」

 目を丸くしてマーシュさんと顔を見合わせたレヴィアさんが首を傾げる。


「肥料に使われているでしょうが、ほんの一部だと思いますよ」

「・・・えっ? そうなの?」

 レヴィアさんの後をマーシュさんが引き継ぐ。


「とんでもない量が出ますからね」

「・・・あっ。馬の数か」

 多くの軍馬を目にするウォーレス領では見慣れてしまっているけど、兵器でもある馬という“商品”は、こっちの世界でも高額だと聞いたはずだ。


 高額なだけに普通の農村では馬の数が限られているだろうけど、馬の数が多いウォーレス領では糞の量も多くなるのは必然だろう。

 肥料として馬糞が必要な農村には馬が少なくて、馬の生産地で有るウォーレス領では馬糞を余らせてる?

 有る意味、宝の山なのに勿体ない。


「都市内や訓練場の馬糞は集めて処分していますが、放牧地なんかは、そのまま放置していたかと」

「・・・街道も? そう言えば、採掘場の行き来でも馬糞は放置してたね」

 直線道路で馬たちが落とした糞は、そのまま放置して行き過ぎていた。

 いつ触角ヘビが落ちてきてもおかしくない危険な場所で馬糞掃除なんてするわけがない。


 ウォーレス領はそれほど人口密度が高かったわけじゃないし、処理しきれなかっただろうしなあ。

 そのうち自然に還るだろう排泄物処理の重労働に回す人手が有れば、他の仕事に回していたはずだ。

 だからと言って排泄物を放置すると、発酵分解の過程で増殖した細菌が疫病蔓延の元になるんじゃないだろうか。


 産業革命前のロンドンだったかパリだったかで、排泄物処理が原因で蔓延した疫病ってコレラだっけ?

 こっちの世界の医療発展進度でコレラなんて蔓延したら致命的じゃない?

 治癒魔法で病気の治療をしたことが無いから未知数だし、疫病の発生には注意しておかなきゃ。

 糞を原因とする何かを、私が心配していることを察したらしいレヴィアさんが肩を竦める。


「放って置いてもスライムが食べますから」

「・・・スライム? ははぁ。アイツか」

 慰霊碑を建てたときに予想外のスピードでニュルニュルと移動して、地面に溶け込むようにして消えていった姿を思い出す。


 毎日、おトイレで会っているはずなんだけど、実際の姿を目にしたのはあの時が初めてだったからね。

 作物の根を食べるとは聞いていたけど糞も食べるんだな。

 あ。違うじゃん。逆だ。

 糞を食べるからおトイレで飼われてるんだ。


 動物の死体も食べるんだっけ?

 糞も死体も有機物の塊に過ぎないのだから、食べて当然か。

 それを言ったら、作物だって有機物だ。

 そりゃあ食べるよね。



迫る影⑯です。


馬糞を科学!?

次回、前乗り!?

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― 新着の感想 ―
なるほど、だから遊牧民が燃料に使えるくらい燃えるんだ。
もしかしてスライムって粘菌の仲間だったりするのだろうか?
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