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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第3巻発売&コミカライズ、もうすぐです!】  作者: 一 二三


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精霊種 ㉝

「・・・他にも何か問題が?」

「数十個程度なら問題ないと思うけど、もっと大量に、となると純粋に手が足りなくなるだろうと思ってね」

 顔を難しくしているレイクスさんに訊いてみれば、返ってきたのはご尤もな答えだった。


「・・・ああ。生産能力かぁ」

「それはロブウッドたちも同じじゃない?」

「まだ図面しか見ていねえが、アレを作るとなれば数十個でも大変だろうよ」

 レイクスさんに視線を向けられたロブウッドさんも渋い表情で頷く。


 魔法道具作りにどんな工程が有るのかも私は知らないけど、全員で取り組んでくれたとしてもエルフ族はたった100人しかいない。

 ドワーフ族に至ってはロブウッドさん父娘の2人きりだ。

 とてもじゃないけど大量生産になんて応じられる人数じゃないだろう。


「・・・だったら人を育てるしかないね」

「ヒト族に儂らの技術を教えるのか? それ以前に嬢ちゃんよ。一人前の職人ってのは、今日明日で育てられるもんじゃねえんだぞ」

 よほど嫌な思いをした経験が有るのか、ロブウッドさんの言葉には職人のプライドだけじゃなく、ヒト族に対する嫌悪感が滲み出ているように感じる。


 そりゃあね。ヒト族至上主義なんてバカとしか思えない思想に狂った連中に、生まれ育った故郷を追われたのだから嫌いにもなるだろう。

 我が身に置き換えてみれば気持ちは理解できる。

 それでも退けない。


 これは“時代の要請”ってヤツだよ。

 必要が有るのなら呑み込んで貰わなきゃいけない。

 それはエルフ族も同じ。

 一段上に立った経営者目線で考えて貰わなきゃ。

 周囲には兵士さんたちも居るし、あんまり聞かせたくないから声を潜める。


「・・・一人前じゃなくて良いんだよ? むしろ、一人前になられる方が困るし」

「なに?」

「どういうこと?」

 ロブウッドさんもレイクスさんも眉を顰める。

 チョイチョイと手招きして、内緒話だと気付いてくれた2人と頭を寄せ合う。

 テツさんも頭を寄せてきたけど構わず口を開く。


「1人1人は決まった1つの部品だけ作れれば良いんだよ。それ以上の仕事が出来るようになると、その人が敵に寝返るだけで技術が漏れちゃうから」

「ははぁ。“分割して統治せよ”か。工場制にでもすんのか?」

 そう。それだよ。

 納得顔で理解を示したテツさんに、我が意を得たりと頷き返す。


「・・・生産する上で機密情報を守るには、それが一番だから」

「分割? 何だそりゃ?」

 好奇心を見せたロブウッドさんへの説明役をテツさんが買って出てくれる。


「“分割統治”ってのは、多民族国家が生み出した叛乱を防ぐ国の治め方だ。企業―――、大きな工房でも人が多いと技術を盗まれやすいんじゃねえのか?」

「そうだな。どいつもこいつもに技術を盗まれると困るから、弟子を取るときにも人を選ぶんだ」

 当然だと言わんばかりにロブウッドさんが頷き返して来る。

 やっぱり鍛冶師業界は師弟制か。


「だろうな。だから、仕事範囲を小分けして決まったことしかさせねえんだ」

「それじゃあ仕事にならねえじゃねえか」

 熱いうちに鉄を打たなきゃいけない一貫作業の鍛冶仕事だと、そう考えるのが普通なのだろうね。


 ロブウッドさんの丸太のように太い二の腕が、鍛冶師の仕事の在り方を示している。

 1つの芸術品とも言える剣を打つのなら、一貫作業が正解なのだろう。

 でも、複数の部品を組み合わせて完成するものなら正解は変わるはずだ。


「・・・なるよ? 1つの工程が終わったら次の工程へ引き継げばいい。そうやって1つ1つの仕事を分けてしまえば、1人の職人では品物を完成させられないでしょ」

「全部の部品が揃ったら、組み立て専門のヤツが完成させるんだよ」

 テツさんの補足に頷いて私も追認する。


 王様から研究を許された“姿を消す魔法道具”の構造を思い出す。

 あの魔法道具には複数の製造工程が有るように見て取れた。

 3重に重なった回路の部分も、お母様のサーベルのように金属製なのだろう。

 お母様がサーベルの複製品を作らせようとして、何人もの鍛冶師が匙を投げたと聞いている。


 それはなぜか。

 あの魔法道具と同じようにサーベルの内側にも回路が刻まれていて、それを模倣できなかったからだろう。

 剣の内部に回路が存在することにも気付いていなかった可能性が高いよね。

 そのことは以前にも推察はしたけど、今は推察が確信に変わっている。


 本体の内部に多層構造の回路が刻まれているのなら、単一工程で出来上がるものではないと断言できる。

 きっと、ベースとなる部品を作り、回路を刻印し、回路の溝を埋める金属を流し、上層のベースを乗せ、再び回路を刻印する、そんな工程が有ったはずだと予想する。

 そこにこそ、遺物の遺物たる所以(ゆえん)が有るのだろう。


 1つ1つの工程には、簡単に模倣できないコツと技術が有って、その集大成として1つの魔法道具が完成する。

 だったら、なおのこと分割しやすいはずだ。

 作業工程の分割を理解したらしいロブウッドさんがテツさんの目を見返した。


「そうなると、どうなる?」

「部品を作るヤツは他の部品の作り方や組み立て方がわからねえ。組み立て専門のヤツは部品の作り方が全く分からねえ。1人や2人を買収して裏切らせたところで技術は盗めねえ」

 ロブウッドさんが感心したように唸り、同様に理解したらしいレイクスさんが悪戯っぽく目を細める。


「1つのことしか教えなくていいなら、人が育つのも早くなるね」

「・・・そういうことです。何なら、食肉加工場へ見学に行くと良いですよ。実際にその方法で干し肉を大量生産していますから」

 今こうして事前知識は植え込んだのだから、実例を見学すれば2人の理解はもっと深まるだろう。



精霊種㉝です。


入れ知恵!

次回、爆発だ!?

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