再会 ⑪
何でエバンさん?
ほら。やっぱりエバンさんだった。
アスクレーくん部隊の荷馬車の前に付けていた騎馬が1騎、馬列から外れて行った。
今、クア・・・、何て言ったっけ?
テツさんも反応したってことは、クア何とかさんはテツさんのお仲間の1人かな?
馬列が乱れたことでお母様が停止命令を出したみたいで、北門を目前に馬列が停止する。
目の前の荷馬車も停まったから、私たちも手綱を引いて馬の脚を止める。
慰霊碑を見上げている一団の傍へ馬を寄せたエバンさんが、ヒラリと鞍から飛び降りて1人の男性の元へ駆け寄った。
観光中に、突然、自分目掛けて騎馬が突進してくれば、誰だって驚くよね。
騎士って職業は軍人で有ると同時に警察権も与えられている。
何も悪いことをしていなくても、突然、拳銃を手にした警察に職務質問されたらビビって当然だろう。
動揺が収まらない様子を見せる男性の両手を、有無を言わさぬ勢いのエバンさんがガシッと両手で掴み取った。
「クァタル!! 生きていたのか!!」
「エバン殿? エバン殿が、なぜここに!?」
両手を取られた男性も目を剥いて驚いてるよ。
えーっと? クアタルさんだっけ? 発音がちょっと違うかな。
クア? カ? むむっ・・・。クァ? クァタルさんで良いのかな?
見た感じ獣人族だね。
何系だろう?
耳の形は―――、ノーアの耳に似ているように見える。
ルナリアの馬に同乗しているノーアの耳と見比べても、やっぱり形状が似ている。
あの人も猫系だよね?
蓬髪と顎ヒゲが繋がっている容姿から連想される猫系の動物となるとライオンかなぁ。
頭の天辺に耳を生やしたクァタルさんと一緒に別の獣人族の男女が居て、背の低いガッチリとした体格に髭モジャのオジサンと、オジサンに顔つきが似た小柄な女の子も居る。
あの容姿・・・!
「・・・アレは、もしやドワーフ族!?」
「フィオレ! どうどう!」
現物だよ!? 生ドワーフ族!
クァタルさんから髭モジャオジサンと女の子へと完全に興味が移った私が居ても立っても居られず馬を降りようとしたら、ルナリアからレフェリーストップが掛かった。
「・・・ええっ!? いや、でもドワーフ族だよ!?」
「分かったから、落ち着きなさい!」
妙に冷静なルナリアに一喝されて馬から降りられなくなったけど、私はドワーフ族の父娘をロックオンしたまま目が離せない。
アレを逃したらドワーフ族なんて、いつ捕まえられるか分かったものじゃない。
何としても取っ掛かりを作って抱き込まなきゃ!
私を行かせまいとカバディ的に牽制するルナリアと馬の背中で睨み合っている目の前で、荷馬車の荷台から身を乗り出してエバンさんたちを覗いたテツさんが首を傾げている。
「アイツら、知り合いか?」
「そうみたいですね」
器用にテツさんの上に乗っかって覗いているケイナちゃんも同意する。
あの人たちがテツさんたちのお仲間で間違いなさそうだね。
「・・・あのクァタルさんって人、どういう人?」
「どう、ってのは、クァタルの身の上か?」
お仲間なんだから知ってるでしょ? と視線に籠めてみれば、プライバシーを気にしたのかテツさんが僅かに警戒を滲ませる。
大事なことだから答えて貰わないと困るんだよ。
「・・・うん。エバンさん―――、あっちのピーシス家の騎士は、勇王国の侵略で滅んだ旧エクラーダ王国から逃れてきたんだよ。知り合いってことは、クァタルさんも旧エクラーダ王国民なのかな?」
「あ~・・・。故郷の国が神教会の圧力に負けて、故郷から脱出しなきゃならなくなった、とは聞いたな」
対等な関係性を重視するっぽいテツさんの性格を考えて、こちらから周知されている範囲の情報を開示すれば、欲しい情報で返してくれたテツさんに続いてケイナちゃんも頷く。
「確か、その国だったと思います」
「・・・そっか」
神教会の圧力に負けた国、か。
“国家の礎たる国民を売った国に未来は無い”とお母様たちが言っていたことを思い出す。
その結果、紆余曲折を経て目の前で見せられているものが偶然の再会劇だ。
互いに生存の危機を乗り越えた知己同士の胸中は、失った故郷を知らない私には計り知れない。
それでも、フレーリアの人生を引き継いでいる私は無関係では許されない。
当時、幼児だったフレーリアにも責任はないだろう。
だからと言って、心情的に“フレーリアも被害者”だと飲み込めないのが人間というものではないだろうか。
オカルト的に中身が別人でも、生物学的にはエクラーダの血肉を引き継いでしまっている私も無関係ではない。
だって、中身が別人だなんて外観からは判別できないからね。
国民を売った執政者たちの判断を私は支持しないし、私だったら最後の最後まで抵抗を諦めたりしなかっただろうけど、フレーリアの後継者になってしまった以上、彼らの尻拭いも私が背負わざるを得ない。
なぜなら、今ここに“フレーリアが生きている”のは事実なのだから。
フレーリアの魂が死んで中身が他人だろうが、あの連中にとっては関係ない。
私を殺そうとしてくるか、利用しようとしてくるか、“敵”は必ず私に関する要求を王国へ突き付けて来るだろうからだ。
敵の要求に従って敵の元へ行くのか? なんて答えを考えるまでもないでしょ。
私は断固拒否するし、ウォーレス家のみんなも断固拒否してくれるだろう。
その意志に王国が国家として応えて異国人の私を守るには、守るに値するだけの理由が必要になる。
私は王国に自分の価値を示し続ける必要が有るだろうし、私に協力してくれる味方は1人でも多い方が良い。
やっぱり放っておけないな。
再会⑩です。
フィオレ、動きます!?
次回、ちょっと署まで!?




