21 【アンジェリカ視点】→【リドレイ視点】
かなり誤字脱字があるみたいで申し訳ないです。
報告してくださった皆様ありがとうございます。
【アンジェリカ視点】
「お母様! ねえ、お母様ったら!」
「コラレット。そんな風に大きな声を出しては駄目だと言っているでしょう」
「でも! マリレーンがサロンに入れてもらったって聞いたわ! 本当なの?! 私もまだ使わせてもらったことがないのに‼︎」
……はぁ。
そのことなら私だって驚いたし、こうやって思い出す度に怒りが込み上げてくる。
お父様が決められたルールなのに、それをご自身で破られるなんて!
抗議したのに一笑に付されてしまった。
「勉強を頑張って成果を出したからだ」って、どういうことなのかしら。
スターシアも知らなかったみたいで、ただただ驚いていたし。
マリレーンは最近、どんどん生意気になっているのに、これ以上付け上がらせるようなことはしないでほしいわ。
「コラレット。心配いらないわ。お祖父様をサロンまでお送りして、たまたま部屋に入っただけのことよ。使用人が勘違いして馬鹿みたいに面白おかしく噂話をしているのよ。いちいち本気にしちゃ駄目」
「え? そうだったの?」
「当たり前じゃないの。あの厳格なお父様がルールを破るはずがないでしょう?」
「そっか。そうだよね。なあんだ。びっくりして損したわ」
「ふふふ。あなたが使えるようになったら、大勢お友達を招いてあげるわ。小規模なパーティーにも使える部屋だから、その豪華さにみんな驚くはずよ」
そうよ。お父様の気まぐれなんか忘れていいわ。
堂々と使えるようになったら、うんと活用すればいいのよ。
アイスバーグ侯爵家の後継である私たちが招待したから普段は公開していない部屋を使えるのだと、内外に知らしめてやる。
「それよりも、先生たちとはうまくやっているのでしょうね?」
「え? 先生? 私はちゃんと真面目に授業を受けているわ」
「そうよね……」
お父様から特に叱責された訳じゃないけれど。
マリレーンのことを話している時のお父様のあの目。
そして私がコラレットのことに話題を変えた途端に変わった顔つき。
気になるわ……。
まさか、本気でマリレーンのことを可愛がっているんじゃないわよね……?
長女の私が家督を相続して、夫のパフィオがアイスバーグ侯爵家の当主になるのが既定路線のはずでしょう?
スターシアは寡婦で、しかも子どもは娘。
私たち夫婦がお父様の後を継いで、その次はコラレットとその夫が継ぐのよ。
「じゃあ、私は届いたばかりのドレスに着替えてマリレーンに自慢してくるわ。あの子はおしゃれを分かっていないし、宝石も持っていないんだから! うっふっふっ」
「そうね。あなたには良い物を見抜く目を養ってほしかったから、早くから宝石を与えてきたんだし、従姉妹に教えてあげるのもいいかもしれないわね」
お母様が亡くなった時、お父様が形見分けだと言って、宝石類をいくつか私とスターシアにくれた。
中でも侯爵家に代々伝わる宝石は長女の私が貰った。
スターシアもマリレーンも、私たちが面倒を見てやる家族に過ぎないのよ。
◆◆◆ ◆◆◆
【リドレイ視点】
当主様はお気づきだろうか。
お嬢様方の学習状況を報告している時、コラレット様の時とマリレーン様の時とでは、お聞きになっている当主様のお顔つきが随分と異なっていることを。
コラレット様は同年代の子どもと比べると、やや理解力が劣っていらっしゃる。
そのため予習と復習に力を入れるよう教師陣が何度も提案しているが、当の本人は真剣に取り合おうとせず、学習態度が一向に改善されないと聞く。
決められた時間に執務室で授業を受けさえすればいいと考えているようだ。
進捗も当初の計画から随分と遅れてしまっている。
一方、マリレーン様に関しては素晴らしいの一言に尽きる。
全ての教科の教師たちが口を揃えて絶賛している。
まるで後継者としての覚悟を決められているかのように、旺盛な知識欲で、教師が発する言葉は一言も聞き漏らさず吸収しようと貪欲に取り組まれている。
「よく分かった。コラレットの方はもう少し様子を見ることにしよう。私からそれとなくアンジェリカには伝えておく。マリレーンだが、特別課題について何か相談があったか?」
その件では、先日孫自慢をなさったばかりだというのに、まだ自慢し足りないのだろうか。
それにしても、マリレーン様が男児であったらどんなによかったか……。
優秀さを目の当たりにする度に、ついつい詮方ないことを考えてしまう。
「どうやらマリレーン様は、本当にご自身が会長となったと想定されて行動されているようですね。おそらく相当困難な壁にぶつからない限りは、誰かに相談することは考えておられないのでは?」
「うむ。そうだろうな。さすがに八歳では早過ぎたかと思ったが、私の想像を超える結果を出しているからな。楽しみながらも真剣に取り組んでいるようだ」
「さようでございますね。それにしても、平民の商会組合を使うとは想定外でした。マリレーン様は、座学よりも実践課題の方が向いていらっしゃるようですね。まさか当主様が金貨を十枚も与えられるとは驚きましたが」
「ん? 甘やかした訳ではないぞ? まあ面白そうだからと思ったのは確かだがな。まさかこれほど早く私を驚かせてくれるとは思っていなかったがな! ははは」
本当に嬉しそうなご様子だ。
「商人としての才覚をお持ちなのでしょうね。センスというものは後天的に身につけるのは難しいですから」
ついコラレット様のお顔が頭をよぎってしまった。
顔に出ていなければよいのだが。
「この私に、『記録が残るから口座に振り込んでくれ』と言った時は、いっぱしの商人の顔をしておったぞ」
「領収書もきちんと整理されているようです。私に何か尋ねられてもいいように、毎回ファイルをお持ちになっています」
「ん? そうか。そうだな。この先も重要書類が増えていくだろうな。マリレーンにこそ執務室が必要だな」
当主様は独り言のようにつぶやかれると、早くも部屋の構想を思い浮かべられているようだ。
これほどまでに愉快そうなお顔は久しぶりに見る。
「それでしたら、執務室の続き部屋として、簡易的な倉庫を兼務できるような部屋もご準備されたら、きっとお喜びになるでしょう。商売を始めるにあたり、サンプル品を制作されるようなことをおっしゃっていました。当主様が実践課題の資本金の口座を分けられたことで、課題に関する資料や商品などは、自室ではなく別の部屋に保管するべきか悩んでおられました」
「そうか。それはよいことを聞いた。ふむ」
当主様が顎をさすりながら何やら思案なさっている。
マリレーン様の驚く顔を見たいがために、無茶をされそうだな。
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