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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第4章 学園入学編
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再会

 「うう、だりい………」


 誰が好き好んで、面倒だとわかり切ったところに行かにゃあならんのだ。ぶっちゃけ、参加したくない気持ち10割である。今なら100%と間違えて、100割と言っても間違いじゃないかもしれん。俺のその様子に不満を持ったのか、隣を歩いているニーナが抗議の声を上げる。


 「レオン君、ちゃんとしてください。せっかく認めてもらえたんですから、胸を張るべきですよ?」

 「面倒事にしかならんのなら、名誉も汚名も同じだっつの。俺は普通に暮らしたいもんだね」

 「普通、って……どんな感じにですか?」


 ニーナが少し首を傾げて、俺を見上げてくる。俺は少し考えた後に、思ったことをそのまま口にしていた。


 「小さくてもいいから、あんまり人が来ねえようなとこに家持って、のんびり暮らしたいわな。近くに川かなんかがあれば、なおよし」

 「それじゃあ、もう隠居生活と変わりませんよ………」

 「それじゃ、もう隠居したいわあ………」

 「レオン君………」


 ニーナがジト目で見てくるが、仕方ない。こちとら面倒事に突っ込むのは、勘弁したいところなのだ。大体、入学式卒業式という二大イベントは、往々にして面倒だということがわかっている。さしてありがたくもないようなことを、だらだらと並べる話が続くのだ。そんなことはない?じゃあ、卒業式で来賓やら校長やらから貰った言葉を覚えているだろうか?俺は即忘れたね。入学式は適当に寝てればいいかと思っていたのに、とんでもないことが舞い込んだものである。


 「そういえば、これどうでしょうか?変じゃないですか?」

 「ん?ああ、似合ってんじゃねえのか?」


 ニーナが聞いてきたのは、自身の制服のことだ。魔法研究科は白いワイシャツに、紺色のブレザーを着ていた。で、赤いリボンが襟の周りに巻いてある。俺は普通に似合っていると思うのだが、いかんせんファッションセンスがない。何をどう褒めればいいのか、それすらもわからないのだ。


 「そうですか。よかったです」

 

 けれど、ニーナは嬉しそうにしていた。これで十分なのだろうか?いや、そんなわけないわな。どう考えても、言葉が足りな過ぎる。読んでたラノベでも、これで上手くいくのは主人公補正があるやつか、もしくはよほどのイケメンかだ。どっちもないわけだし、これはニーナくらいしか喜ぶやつはいないだろう。少しは勉強した方がいいかもな………


 「おや?君は………」


 後ろから聞こえた声に振り向く。そして、瞬時に見なかったことにした。


 「ええ!?いや、君だよ、そこの黒髪の子!確かレオン君だったかな?」

 

 そこら辺をきょろきょろと見回す。チッ、周りに黒髪のやつがいねえ。なすりつけようかと思ったのに。


 「人違いです。見間違いです。では、僕はこの辺で」

 「いや、それは無理があると思うよ?黒髪で黒目の人なんてそうそういないんだし、何より隣に妹さんがいるからね」

 「……チッ、無駄に勘が鋭いやつだ」


 仕方なく振り返り、後ろにいた人物の応対をした。ニーナは首を傾げて、俺の袖を引っ張る。


 「レオン君、知り合いさんなんですか?」

 「知り合いっちゃ知り合いだわな……というか、お前は少し世間に興味を持て」

 「???どういうことですか?」

 「こいつはクリストファ・ディルロス・グレンヴィル。要はこの国の王子様だよ」


 俺の紹介にも、王子の方は笑っているだけだった。反応があったのは、ニーナの方だ。俺を見て、王子の方を見て、再び俺の方を見た。


 「……ええっと、ききまちがいかもしれないですから、もういちどききますね?このひとはだれなんですか?」

 「クリストファうんたらかん。王子」


 いちいちフルネームを言うのもめんどくさいので、もうファーストネームのところだけを抜粋した。俺のその説明に、王子は苦笑しながら反論してくる。


 「いや、そこはちゃんと説明してほしいな」

 「うるせえ、全部言うのはめんどくせえんだよ」

 「あ、あわわわわわ、レオン君!」

 「ん?どうした……って、うおっ」


 ニーナの声にそちらを向くと、いきなり襟首を掴まれて、ガックンガックンと揺さぶり始めた。ちなみに、目が焦点を結べてなかった。うーん、ヤッてる最中なら興奮するやつもいるかも?この目。何をとまではいかんが。あと、想像したやつ表出ろ。ぶち殺す。


 「ななななんで王子様と普通に会話してるんですか!礼儀は必要だって、あれほど言ってたじゃないですかあ!」

 「ん?ああ、嫌われねえためにはな。別に俺は嫌われようが構わんから、この口調なだけだ」

 「ど、どうするんですか!いきなり処刑だとか言われたら!」

 「こいつに限ってそれはねえだろ。したがってるのは、周りのやつらだろうさ」


 後方を見やれば、殺気を向けているメイドや女騎士がいる。……というか、女性率高過ぎじゃねえか?みんなこいつの女だったとしたら、全国の非リアを代表して、部屋に爆弾を投げ込むかもしれん。リアルにリア充爆発しろと言う状態である。まあ、テロ行為と取られても仕方ないのかもしれんが。


 「ん?ああ、そうかもしれないね。みんな、いいんだ。彼とは主従関係にはなりたくない。ただの友人でありたいんだ」

 「しかし………!」

 「お願いだよ」


 王子の願いに折れたのか、全員が渋々といった様子で下がる。それにしても、今聞き捨てならないセリフがあったんだが。


 「おい、誰が誰と友人になりたいって?」

 「私が君となんだけれど……構わないかな?」

 「却下で」


 俺が即答した瞬間、辺りが凍り付いた。ニーナも口をパクパクとさせている。まあ、あまり時間を掛けていると、後ろのやつらがうるさいだろう。先に口を開くことにした。


 「まずお前と友人になることの利点。お前っつー後ろ盾ができるわけだ。多少の無茶は許されるようにはなるし、表立ってくだらねえことをやるやつは出てこなくはなる」

 「ふむ……ということは、悪いこともあるということかな?」

 「ああ。そもそも、俺から声を掛けられたことがまずい。周りの貴族どもはほぼ確実に敵に回すと考えられる。さらに、表立ってしないだけで、目立たないところではやってくる確率もある。最後に。お前との橋渡し役に使われることになる。どう考えても、損失の方が利益を上回ってるだろ。だから嫌なんだよ。俺は面倒事が嫌いなんだ」

 「……そうか。わかった。そういうことなら、諦めるよ」


 王子はどうやら引いてくれるようだ。内心ホッとしながら、適当に見送ろうかと思った。が。


 「じゃあ、次は友人として、利益があると思えるようなことを考えておくよ」

 「……はあ?」

 「いや、だって、君は自分に利益があるなら、友人になってくれるみたいだったじゃないか。それなら、利益があるようにすれば頷いてくれるかなと思ったんだ」

 「いや、まあ、そうだが」


 首を捻らざるを得ない。何故こいつはここまで俺に執着するのだろう。意味がわからないのだが。


 「なんでそこまで俺にこだわる?別に他のやつでもいいだろうが」

 「勘だよ。君とは深い関係を結んでおいた方がいい。そう思ったんだ」


 そう言って微笑む姿は、男の俺から見ても魅力的なくらいだった。入学してもいないのに、初めから厄介事が舞い込んできた現実に、俺はため息をつくのだった。

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