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【完結】俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
2章 ファナエル=???編

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【ファナエルSIDE】私はそっち側じゃない

「あの建物なんじゃねーか?」

 

 学校から走る事数十分。

 私とハジメ君はキルちゃんから貰った地図を頼りにアキラが居るとされていた場所にたどり着いた。


 管理などされてもいないだろう草木が生い茂る中に古びた廃墟が一つ。

 廃墟にある扉の前には緑色の箱をいじくり倒しながら待ち構えている霊府琴音(れいふことね)の姿があった。


 「やぁ……来ると思ってたよ」


 「その妙な格好どっかで……あ、思いだした、今日の一時間目に変な授業してた先生」


 「おっと驚いた。私はてっきり君が一人で来るものであるとばかり思っていたのに……どういった心情の変化なのかなぁ、ファナエル・ユピテル」


 「私の目的は変わらない。アキラを早く助けるためにも彼に協力してもらった方が良いと思っただけだよ」


 私の返答を咀嚼するかのように人差し指を頭にツンツンとリズムよく当てていた彼女は数秒立った後、「まぁいいか」と吹っ切れたような独り言を吐いた。


 「もしかしたら、そこの男子生徒君にも驚くような素質があるかも知れないし……実験サンプルは多い方が良いってものだからねぇ」


 「お、おいあんた、変な事言ってないで早く秋良を開放しろ!!」


 「まぁまぁ落ち着きなよ少年……これを見ても気絶しないというのなら考えてあげても良いからさぁ!!」


 ハジメ君の言葉など聞く耳も持たない勢いで霊府琴音(れいふことね)は叫ぶ。

 その声に呼応するように、彼女の手のひらにある緑色の箱はシャリン、シャリンと音を鳴らして変化し始めた。


 サイコロにも似た綺麗な正方形だったその箱はグシャリとつぶれ、やがて緑色の花のような形を作りだす。

 その花の中心からは緑色の鎖が顔を出し、その全長を伸ばしながら天へ天へと昇っていく。


 「は?なんだよアレ、マジックかなにかだろ?」

 「いいねぇその反応。初めて私が悪魔と遭遇したことを思い出すよ」

 「あ、悪魔。アンタ何言って」


 自分の世界と言うやつにどっぷり入った彼女は狼狽しているハジメ君を置き去りにしながら言葉を唱え続ける。


 「悪魔、天使、神……神話や創作上で語られるこれらの神々の種族は実在する。それはこの地球における生物の何よりも、もちろん私達人間よりも上位の生命体としてデザインされているんだよ。ゆえに私達人間はその姿を見るだけで精神に異常をきたし、気絶しながら跪いてしまう」


 彼女の持つ緑の花の上に小さな文章が浮かび上がる。

 それと同時に雲の上まで伸びきっていた緑色の鎖がジャラジャラと音を鳴らして地面に向かって落下を始めだした。


 「な、何なんだよさっきから……意味が分からねぇ」

 「……ハジメ君。あそこに書いてある文字読める?」

 「へ……いや、あんな文字ネットの世界の中でも見たことねーよ」


 私を見つめながら小さく肩を震わせている彼は必死に顔を横に振る。

 人間の彼が読めないのだとすると、アレを読めるのはきっとこの場で私一人だけなんだろう。


 『下等種族である人間に使役される事による尊厳の破壊と身柄の束縛によって貴様の罪を清算する』と書かれたあの文字を。


 「しかし、上位存在である神々の姿を見ても普段の態度のままいられる人間が稀に存在するらしい。その人間は神々に対する無礼者であり、同時に世界に革命をもたらす勇者であるそうだ」


 ズドンと地面が大きく揺れる。

 気づけば緑色の花から出ていた鎖は全て地面に舞い降り、その全貌が見えるようになっていた。


 その鎖の先には大きな鉄製の首輪。

 その首輪をはめられているのは、人間より3倍大きな図体を持つ灰色の悪魔だった。


 「さて……君たち二人は凡人か?それとも世界に革命を起こす勇者か?どっちになるのか私に見せてくれ」

 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 悪魔の姿を見たハジメ君は金切り声を上げて、逃場を捜すように地面に顔をうずめていた。

 じたばたと動かしていた体はやがて動かなくなり、彼の恐怖を表す声だけが辺りに響く。


 「アッハハハハ!!!やっぱり私の見込んだ通りだ。ファナエル・ユピテル、君はこの悪魔を見ても全く動じなかった。君は今後この世界に大いなる革命を起こす素質を持った人間、勇者となれる逸材なんだよ」


 狂ったように笑い続ける彼女の言葉を無視して、私はハジメ君の背中にゆっくりと手を当てる。


 『怖い、怖い、許して、許して』


 「ハジメ君、私をここまで連れてきてくれてありがとう。アキラは必ず私が助けるわ。だから君は今日の事は忘れてゆっくり休んで」


 『##、##、###、###』


 ゆっくりと力を出して彼の中にあった恐怖心にノイズをかける。

 これでハジメ君は今日見た悪魔の事は忘れて明日には普通の生活に戻れるはずだ。


 私はゆっくりと立ち上がって、荒い鼻息を立てる悪魔と目を合わせた。


 「それにしても、こいつを見てここまで冷静でいられた人間は初めてだよ……あの氷雨だって最初はびっくりしてたんだからねぇ」


 「貴方は一つ、大きな思い違いをしてる」


 「うぅん。思い違いかい?一体何を私が間違っているというのかな?」


 「私は勇者にはなれない……私は下等種族(そっち側)じゃないからね」


 私は手のひらを悪魔の方に向けて耳を澄ます。

 それと同時に全身から力を開放して、聞こえてきた悪魔の心の声にノイズをかけていく。


 『ココ、トオサナイ、トオスト、オレノ、クビワ、シマル』

 『ココ、#####、トオスト、###、クビワ、###』

 『##、#####、####、###、###、###』


 私の身体から黒いノイズの掛かった白い光が溢れ出る。

 パリンと何かが割れるような音が響いた後、私の左肩にベトリと生暖かい液体が覆いかぶさった。


 「そうか……そうか、そうか、ハハハハハハ!!!私としたことがこれは盲点だった。君はー」

 「悪いけど、この扉の先に行かせてもらうよ」


 私の言葉を合図に黒いノイズの走った白い光が大きなうねりを上げて悪魔の身体を穿つ。

 それは哀れにも人間に使役されていた悪魔の心を踏みにじるように……後ろに立っていた霊府琴音(れいふことね)の身体ごと廃墟の扉を打ち破った。

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