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【完結】俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
2章 ファナエル=???編

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シンガンは君を見つめている

 「君達に配ったプリントの図3に載っているのは私が発見した悪魔文字というものだ」


 よくわからない授業の時間が進んでいく。

 いつも授業なんてそっちのけでYouTuberの話をしているクラスメイトも、爆睡しているクラスメイトも、みんなみんな興味深そうな顔をしてその授業を聞いていた。


 まるで皆洗脳されてしまったかのようにおんなじ笑顔を浮かべている。

 隣の席に座るファナエルだけは、警戒心に満ち溢れた顔をして黒板の文字を眺めているのがまたひどく印象的だった。


 これぽっちも話の内容が理解できない俺は一人うなだれながら配布されたプリントを見る。

 

 それにしても……この悪魔文字ってやつ、子供が書いた落書きみたいじゃないか。

 本当に意味のあるものなのか?


 「悪魔文字はとある地域で特定の人間にメッセージを送るために使われたとされている」


 チョークと黒板で奏でる甲高い音が聞こえてくる頃にはさっきの疑問が解消された。


 霊府琴音(れいふことね)が悪魔文字のルーツを黒板に書き込んだその刹那、机の上に置いてあったプリントに異変が起こる。


 「な、何だこれ!!」


 異変の発現地はまさに先ほどまで話題に出ていたプリントに記載されている悪魔文字だった。

 子供の落書きとしか思えなかった曲線の塊が生物のように蠢き(うごめき)、何か別の物へと変わろうとしているのだ。


 「ヒッ、気持ち悪い。だ、誰か!!」


 ガランと音を立てて荒ぶる俺の椅子。

 ドスンと尻もちをつき、思わずみっともない声を上げてしまう。


 けれど教室にいるクラスメイトが俺の事を気にする様子は無かった。

 あのファナエルまでも含めた全員が俺の動きや声に動揺すること無く授業を進めている。


 何かがやっぱり変だ……この状況を打開する方法は無いのか?

 そうだ、さっきの悪魔文字。

 あれは結局何だったんだ。


 上手く回らない頭を逡巡させながらさっきのプリントに目を通す。

 悪魔文字が書かれてあったそのスペースには、綺麗なゴシック文字で俺宛のメッセージが添えられていた。


 『シンガンは君を見つめている』


 その文字を見た瞬間、俺の意識は暗闇へと落ちていった。



 「……夢の世界に誘われたってことでいいんだな」

 「少し強引な手を使った事は理解しているのです。それでも私はあなたと話をしなければいけないのです」


 視界に映るのはこの前と同じ星空が輝く夜の草原。

 目の前にはシスター服を身に着けた少女、氷雨が立っていた。


 「それと正確にはシスター服ではなく修道服なのですよ、お兄さん」


 困り顔で指摘する彼女の顔はまるで弟の面倒を見る優しいお姉ちゃんと言った雰囲気を纏っている。


 しかし、和やかなその表情には似合わないひどく冷静に俺の身体を見つめるその目だけは深刻な何かを宿していた。


 「体に巻き付いている髪の毛の量、昨日より随分増えているのです。何か体調に変化はありませんか?」

 「熱心なファナエルの介抱があったおかげですっかり良くなってるよ」

 「……あくまでも彼女さんと別れる気は無いのですね」

 「ああ、ファナエルと別れるつもりも今俺に巻き付いているこの髪の毛達をどうにかするつもりもない」

 

 ハァと吐き出した彼女のため息に乗っているのは疲労や不安。

 けれども表情だけはそのため息に似合わない穏やかなものだった。


 君ならそうすると分かっていたと言わんばかりの顔のまま、彼女は何かに祈るように手を組む。

 彼女の動作に合わせて夢の世界は段々とぼやけ始めてゆく。


 地面の芝生が木目の見える床に、星が輝く夜空は蛍光灯が光る天井に。

 現実の世界で俺の身体が寝ているであろういつのも教室を夢の世界は表した。


 「今、私の仲間がお兄さんの教室に能力をかけているのです」

 「あの霊府琴音(れいふことね)って先生の事か」

 「琴音ちゃんだけではないのです、あの教室にはもう一人の仲間が侵入しています」


 その言葉を聞いてピンときた。

 蠢く(うごめく)悪魔文字にビビッて悲鳴をあげた俺をクラスメイトの誰も気に掛けなかったあの状況を作りだした能力者がいるんだな。


 普段は「勘が悪い、察しろ」と斬琉(きる)に罵倒されがちな俺だが、今は非常事態だからなのか頭がグルグルと回ってすっきりしている。


 「こんな大掛かりな事までして、俺に何か要求するつもりなのか?」

 「……貴方ときっちり話をしようと思うのです。今から、夢の世界ではなく現実で」


 氷雨がそう言うと、また夢の世界がぼやけて違う景色を映し出す。

 

 「この体育館裏にて待っているのです」


 氷雨はそれだけ言うと両手を合わせてパンを音を鳴らす。

 強制的に起こされて、夢の世界から現実の世界へと戻って来たって感じだな。


 目の前で教鞭をとっている霊府琴音(れいふことね)の顔をチラリと見やると彼女は不気味な笑顔を浮かべて見つめ返してきた。


 「拒否権は無いって顔だ」


 一人ため息をつき、俺は走って教室を抜け出した。

 授業中に音を立てて走り出す俺を注意する人間がどこにもいないことに不気味さを感じながら。

 

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