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【完結】俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
2章 ファナエル=???編

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かくして日常は非日常に呑み込まれてゆく

 ひどい頭痛、何故か頭に響く他人の声、夢の中に現れた氷雨と言う子供のシスター、ここ最近の生活は毎日が非日常に侵食されて行っていると言っても過言ではない。


 そして今日、寝ぼけ眼をこする俺を待っていたのは最高で最も重要な非日常であった。


 「アキラ起きて、朝ごはんだよ」

 「えっと……これは一体?」

 「忘れたの?昨日アキラの家に泊めさせてもらってたこと」


 制服の上にエプロンを被ったファナエルが俺を起こしているのだ。

 彼女は俺が起きたことを確認すると部屋のカーテンを開け、「着替えここだから」と言って丁寧に畳まれた俺の制服を机の上に置いた。


 「朝ごはん食べたら服の上に置いてあるガムを噛みながら登校してね。これで頭痛も収まるはずだから」


 そう言う彼女の顔はどこか朗らかだ。

 眺めているだけで朝特有の憂鬱感をどこかに吹き飛ばしてくれる。


 「早く着替えてね、アキラには温かい内に朝ご飯を食べてほしいから」

 「お、おう」


 パタンと戸を閉めて部屋を出るファナエル。

 一回のリビングからは彼女と俺の家族のワイワイガヤガヤとした話し声がうっすらと聞こえてくる。


 こんな幸福なことがあっていいのか?

 夢じゃないよな……これ現実だよな。

 

 そう思いながら制服に着替え、俺はゆっくりとリビングまで下りる。


 「あ、秋にぃやっと降りてきた」


 テーブルの席についていた斬琉(きる)は俺を見るなりトテトテと足音を鳴らしながら急接近する。

 

 「ねぇファナエルさんの料理大丈夫なの?僕、ゲロクッキーの噂しか知らないからちょっと心配なんだけど」


 口元を両手で隠し、誰にも聞こえないぐらいの小さい声で質問する斬琉(きる)の声は深刻そのものだった気がするが……今はそれどころじゃない。


 今の俺にはすぐさま確認しないといけないことがあるのだから。


 「斬琉(きる)……俺の頬をひっぱたいてくれ」

 「え?なに秋にぃドMだったの?てか僕の質問は無視????」

 「だってよ、ファナエルがまるで同棲してるみたいに家に居て朝起こてくれてそれでー」

 「あ~理解した。これは夢じゃありませんよっと!!!」


 「全くもう」とため息をつく斬琉(きる)から繰り出されたビンタは痛々しい強烈な音を打ち鳴らしながらこれが夢ではないことを俺に知らせてくる。


 「朝から惚気るんじゃないよ。それで!!僕は安心してファナエルさんの朝ごはんを食べていいの?」

 「イッテテ、ああそこは問題ないと思うぞ。俺はすっごい美味いファナエルの料理食ったことあるし。それに父さんや母さんのあの顔みろよ、すげぇ美味しそうに食べてるじゃねーか」


 そう言って指をさした方向にあったのは、極楽浄土に居るんじゃないかと錯覚させるほどの笑顔をしている両親とテキパキ家事をこなすファナエルの姿だった。


 「アキラもキルちゃんも準備出来た?二人の分も料理作ってるからこっち座ってね」


 チラリとこちらを見つめたファナエルは手招きするように俺達兄妹(きょうだい)を呼ぶ。

 この後、警戒心をむき出しながら料理を食べた斬琉(きる)がファナエルの事を絶賛し出すのは言うまでもないことだった。



 あれから数分後、俺とファナエルは二人一緒に家を出て登校した。


 「妹さんと仲いいんだね」なんて話を振られたり、「今日の朝ごはんは人生で一番おいしかった」なんて柄にもないようなことを言ってみたり、ファナエルから「先生にばれずにガムを噛む方法」を教えてもらったり……そんなたわいのない話をしながら。


 思えば最初に会った時は俺が緊張しすぎてロクに話せなかったファナエルともすっかり打ち解けた話が出来るようになった。


 心なしか距離もだんだん近くなっているような感じがする。

 

 「家から教室までずっと一緒だったの、なんか新鮮だな」

 「そうだね。いつもより学校行くのが楽しくなる感じがして私は好きだよ。またこうやってアキラと一緒に登校を……いや、色んな所に行ってみたいな」


 彼女がそう言って教室の扉を開ける。

 そこで俺達を待ちうけていたのは……


 「おう秋良!!それにファナエルさんも!!今日は良い朝だな!!」

 「始……お前今日やけにテンション高くないか、どうした?」

 「あれ、知らないのか?今日の一時間目は特別な授業が始まるってのによ」

 「そんな話知らないよハジメ君。今日の一時間目は古文じゃなかったっけ?」

 「ファナエルさんも知らないのか??今日は特別な講師が来て、古文から神学に変更なんだとよ!」


 夏の日差しが起こしたものとは違う熱気が渦巻く教室と異様に興奮したクラスメイトの姿だった。


 始は俺達にそのことを伝えると別の友人がいる場所へ移動し、その『神学』とやらについて楽し気に、まるで当たり前の話をしているかのような会話を始めた。


 「なぁファナエル……始が言ってた神学が何か知ってるか?俺は全く分からないんだけど」

 「……神様がいるのを前提に宗教やそれに関するものを考察するものだけど、普通は日本の高校で取り扱うような物じゃない」

 「だよな……なんかみんなの雰囲気もおかしいし不気味だし」

 「ねぇアキラ、今すぐここから逃げよう。アキラは頭痛を理由に体調不良を訴えれば怒られはしないよ」


 珍しく焦った顔を見せ、俺を腕を力図良く握ったファナエル。

 そんな彼女を否定するかのように、無慈悲にも授業を始めるチャイムの音が鳴る。

 それに合わせてぴしっと席に座るクラスメイト達の姿は、『逃がしはしない』と俺達に訴えかけているようだった。


 「おやおや、チャイムが鳴ったのに席に座っていない子がいるじゃないか。見た感じ二人はアベックなのかな~お熱いね」


 ガラガラと音を鳴らして開く扉。

 

 腕や顔など、服で隠れていない素肌の部分に意味ありげな模様のタトゥー。

 数々の動物の皮で出来たであろう服。

 大量の目玉模様と巨人が門を守っているイラストが描かれた円盤状の首飾り。


 俺達に声をかけながら現れた20代ほどに見える女性は異質そのものだった。


 「あの首飾り……どうしてここに」

 「私の首飾りの事に興味があるそこのお嬢さん。悪いことは言わないから素直に授業を受けることをお勧めするよ……そこの彼氏と一緒にね」

 「あなた……一体何なの?」


 隣に立つファナエルの声は明らかに動揺していた。

 まるで信じられないものが目の前に立っていると言わんばかりの表情で目の前の女性を見つめ、俺の腕をぎゅっと握って離さなかった。


 「おっと、自己紹介がまだだったとはうっかり。忘れっぽくなるから年を取るのは嫌だねぇ。私の名前は霊府 琴音 (れいふ ことね)、神と言う存在を追い求める変わった研究者であり、研究者の中で最も神に近い人間だよ」

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