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はじめまして

どうやら圭太と浮気相手中原あゆは、仕事終わりに買い物をしてから帰ってくるらしい。


最近カメラに写っている帰宅時間はだいたい19時くらい。


お腹もすいたので、私は晩御飯を作っておく。


彼女が作ったものよりもうんとオシャレで、おいしそうな料理を並べる為だ。


あらかた料理を作り終わり、圭太の高いワインを開けて、これから自分が起こす修羅場に備える。


(だいたい既婚者だってわかってて、奥さんの分までごはんを作り置きするって、どんな神経してるの?)


私の作ったお弁当に「ごちそうさまでした♡」の手紙を見つけた時から、ずっと気になっていた


ガチャガチャ、キー…パタン


ちょうど少しワインを飲んだところで、圭太と浮気相手中原あゆが、帰ってきた音が聞こえた。


「もー圭太さんが買ったアイスとけちゃいますよ」


「ごめんってー。はやくはやく!冷凍庫入れよう!」


付き合いたての男女のような楽しい恋人同士の会話。

思わず鼻で笑ってしまう。


「あれ?電気ついてる……」


リビングから廊下へ。そして玄関へと足を進めていく、私を見るなり圭太が大きく目を見開いた。


「おかえりなさい。あら、お客さん?」


「えっ……⁉あっ…えっと…!!」


相当驚いたのか圭太は、私の名前も忘れてしまったようだ


「どうしたの。そんな顔して。えーっと…そちらの方は?」


妻の登場にもかかわらず、中原あゆは、圭太の腕に手をかけたまま、私をまじまじと見ている。


(逃がすつもりもないけど)


「あ、えっと…ちょうど仕事が早く終わったから、宅飲みでもしようかなって……思って……その……」


「宅飲み?こんな素敵で可愛い女性と?へぇ…意外とモテるんだ」


「あ……ははは」


素直に謝りなさいよ……!そう口を開く瞬間だった。


「あのぉ……圭太くんのお姉さんですよね?いつもお仕事お疲れ様です!」


(えっ…お姉さん??)


「私の夜食食べてくださってましたか?その…お姉さんの料理ほど

美味しくはないと思うんですけど」


中原あゆの話し方と私を見る目が、なぜ「浮気相手の奥さん」じゃないのかようやくわかった。


「ずっとご挨拶したくて。今日会えると思ってなかったので嬉しいです!

よかったらお姉さんも一緒に飲みませんか?」


「あっ……!つい誘っちゃいました。私の家でもないのに、すみません」


可愛く恥ずかしがる中原あゆは、嘘をついていないように見える。


(これはこれは……)


圭太を見ると顔面蒼白、さらに汗をかいている。


一緒に暮らす私のことを、姉と伝えているのか。


(だからあんな手紙に、この態度……)


このまま浮気の証拠を突きつけてもいいが、状況がわからない。


2人のメッセージで、中原あゆは既婚者と知って夫と付き合っているうえに

「待ってる」と言っていた。


(たかだか2ヶ月程度……。不倫ごっこが楽しい時期か何だか知らないけど)


私との離婚をきっかけに、待ってましたと付き合い始めて、幸せになるだけなる?


そんなふざけたこと許せない。

この男の信用をすべて。

失わせてやらないと。


「ええ、どうも、姉です。いつも圭太がお世話になっています」


「えっ⁉」


声にない声で驚く圭太を無視して、私は中原あゆを部屋の中に入れる。


「ごはんもいつもありがとう。美味しく頂いてるわ」


にっこり微笑むと中原あゆは、とても嬉しそうに顔を輝かせる


「いえいえ!私こそ留守の間にお邪魔してしまっていて……!ちゃんと

ご挨拶したいと思ってたんです。ねっ圭太君」


「えっ…あ、ああ…そだね」


私の怒りがいつ爆発するのか、圭太は気が気じゃないらしい。

私を見る目に不安と期待が入り混じっている。


なにもせずにこの場を上手くやりすごしたいという気持ちもあるのか、すぐに調子を合わせてきた。


「だけど今日まさか早く帰ってくるって思ってなくて……姉ちゃんも疲れてるだろうし、中原ちゃん悪いけど今日は帰ってもらってもいいかな…?」


「えっ?でも…」


中原あゆは、別に大丈夫そうなのに、なんで……?と不思議そうに私と夫を交互に見る


「今度ちゃんとまた別の機会に集まればいいだろ>じゃ、俺はちょっと送りに……」


「なんで?私は全然気にしないわよ」


「!」


流れるように中原あゆの手から、アイスの入った袋をとりリビングへ誘う。


「ちょうど仕事が早く終わってね?もしかして来るかなって、食事を準備してたの。会えたらいいなみたいな気持ちだったんだけど……」


リビングへ扉をくぐれば、二度と元の生活には戻れない。

知っているからこそ、圭太は逃げるんだ。


「とにかく会えて嬉しいわ。さ、どうぞ上がってください」


「わーっ嬉しいです。それじゃお言葉に甘えて……お邪魔します」


中原あゆはそわそわと家に上がる。

すでに何回も来ているのに、そんなことも感じさせない愛想のよい子らしい。


先にリビングに入った私は、圭太たちが買ってきたアイスや飲み物を冷蔵庫にしまう。


圭太はまだ、リビングの前で真っ青で震えて立ち尽くしていた。


「あれっ圭太くん?どうしたの?はやくおいでよ」


「……う、うん」


数秒の沈黙の後、夫が笑顔を作って入ってきた


中原あゆは、すでに私がテーブルに並べた料理に目をつけている。


「わっ……!すごい…!お義姉さんって、お料理上手なんですね」


「そうかしら?」


「ええ~っだってすごく美味しそうじゃないですか!わーん、私こんな料理上手なお姉さんにあんなご飯出して……。圭太くん恥ずかしいじゃん~早く言ってよぉ」


きゃいきゃいと話す私と、中原あゆを見て圭太はほっとしたようだった。


とりあえず、大丈夫だと。


「いやいや中原ちゃんの料理もおいしいって」


「そうね、とっても美味しかったわ。普段私ばかりが作るから、人に作ってもらったご飯ってそれだけで何倍も美味しいの」


「それならよかったんです。お姉さんには及ばないごはんでしたけど

喜んでもらえてうれしいです」


「少しでも圭太が料理してくれたら、私も楽なんだけど」


ちらっと圭太を見ると、ぎくりとした表情になる。


「あ、ああごめん。姉ちゃんのごはん美味しくて」


(姉ちゃん……ね)


この瞬間から圭太は、私が咄嗟についた嘘でこの場を乗り切ろうと決めたようだった。


「とにかく食べようか!そうだ俺ワイン持ってくるよ」


「ああそれなら」


私はさっきまで開けていた栓もしていないワインを見せる


「もう開けといた。あなたの趣味よくわかんなくてラベルで選んじゃったけど

グラスに注ぎましょうか」


「へえ、どれにしたの?……え⁉」


私から受け取ったワインを見て圭太は信じられない顔をする。


「あら…これダメだった?ごめんなさい」


(まあわざとだけど)


圭太が特別に大事にしていた貴重なワインだから。

優しい笑顔で謝り、中原あゆにワインをなみなみ注いであげた。


「はい♡どうぞ」


「ありがとうございます~。え、これすっごいいい香りしますね?ワインに全然詳しくないんですけど、いいやつなんですか?」


今にも泣きそうなキレそうな顔でふるふるしている圭太を、横目ににっこり微笑んで返す


「さぁ……?知らない♡」

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