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夫とのやりとり

いつもなら圭太が、まだ布団で寝ている時間は、私が起き始めてお弁当を

作る時間だった。


(今日はとてもそんな気になれない)


まだ眠いけど外で、コーヒーでも飲もう。


着替えて家を出る前に、声をかけようと寝室に入ると、圭太はなんでもない顔でこっちを見た。


「あれ?早くない?もう行くの?」


「ちょっと朝に必要な書類があって作業したくて。お弁当はないから自分でお願いね」


「はいはい」


「それじゃ…」


「あ、ねえ。昨日のご飯どうだった?」


「あー……ごはんね作ってくれてありがとう。すごく助かった!」


早く行きたかったのに、引き留められて一瞬ぼろが出そうになるのを作り笑顔でごまかす。


「おいしかった?ちょっと今までとは違うレシピに挑戦してみたんだけど。感想聞きたくて」


「ねえねえどうだった?」


実際は食べてなくて、袋に包んで昨日のうちにゴミ袋と一緒に捨てた。


「おいしかったよ!隠し味に酸味が効いてて。何入れたの??」


「あれ?わかんなかった?料理上手な美玖なら気づくと思ったんだけどなぁ残念」


「じゃあ私急いでるから」


「はいはーい」


すぐに家から飛び出て、エレベーターの中で、思いっきりためていた息を吐き出す。


(なにあの……料理上手ならわかるだろうと思って?みたいな俺様目線…!)


作ったのは浮気相手だろうに。もはや圭太が怖くなる。


会社近くのコーヒースタンドで、コーヒーを買ってSNSを開くと、圭太からDMがきていた。


【ごめんなさい。どこのレシピか忘れちゃって。また探しときますね!エイコさんはどこ住みですか?】


『アイコ』というのは昨日作ったアカウントの名前だ。



浮気しつつも他の女ともっと遊びたいらしい。


(さすが寂しいバツイチ男性……)


【全然気にしないでください思い出したら待ってますね☺▼▼市内に住んでますよーっ】と返すと魚よりも早く食いついてくれる。


【え、、ガチですか。僕もそうですよ。なんだか運命感じちゃいますね】


鳥肌が立ちながら、嬉しい的な返信をすると、圭太のメッセージアプリと

同期しているタブレットに通知がなる。


差出人は義姉だった。


【昨日のご飯おいしそうにできてるじゃん!

やっぱりアンタには成功する可能性あるね!】


義姉【私の言った通りwやっぱ早く美玖さんと離婚しちゃったほうがいいよ】


圭太【ほんとだなw】


朝早くから、タブレットに追加されていく、義姉と圭太のやり取り。


圭太【お金のことがなかったら、すぐにでも離婚してるわ】


(ここでもお義姉さんが出てくるの⁉)


どうやら圭太のこのバツイチSNSアカウントは、シンプルな部屋で暮らす

独身男性のSNSを見た義姉がビジネスチャンスあるかも!と言ってすすめたようだった。


義姉【離婚ビジネスって感じ?今の家もいい感じだし。美玖さんの収入分くらい、あっという間に稼げるって】


そんな意味のメッセージが、ちらほらと出てくる。


SNSの投稿を始めた日を、さかのぼっていくとちょうど仕事を辞める宣言をした日だ。


新しいマンション。新しい環境。

私は邪魔になったらしい。


(バカらしい)


圭太がその気ならば、なにも容赦する必要はない。

私はその日から少しずつ行動を始めた。


2週間ほど見ていると、私が仕事が遅くなる日には「あゆ」こと「中原ちゃん」がご飯を作りにきている。


そして帰宅すると先に寝ている夫は手紙で「ご飯作っといたよ」と、私の分のごはんが冷蔵庫にあると伝えてくる。


2回目のメッセージを確認して、これからきっと何回もくるだろうと確信した私は家に監視カメラをつけた。


3回目、4回目とご飯を作り、夫婦のようにリビングでいちゃつく夫と浮気相手。


妻が帰ってくるまでの短い時間で、ずいぶんとスリルを楽しんでいるようだったのでしっかりと記録を残しておく。


もちろん圭太のSNSアカウントで、「アイコ」としてのやりとりも続けていた。


夫は浮気相手の手作りご飯を自分の自炊記録としてSNSに投稿したり、

「ジムで筋トレ中」投稿のなんかも律儀に上げていた。


【すごい尊敬します!本当ストイックなんですね~私もジム行きたくて】


【体を鍛えるの気持ちよくてハマりますよ。駅前のジムなんで、アイコさんも一緒にできたら楽しいですね(^^)】


と、私が「アイコ」としてメール送ると、圭太も律儀に返してくれるので

順調に関係を深めていけた。



証拠はたまっていくと同時に、任されていた仕事もようやく目途が見えてくる

。


(そろそろ……か)


そして、やっと仕事がひと段落を終えた金曜日。


私は半休を取って、家に帰ってきていた。

すでに夫に今日は接待で遅くなると連絡をしている。


仕事中なのに夫は浮気相手に連絡してすぐOKを得ていた。


圭太『今日うちで映画見ない?』

あゆ『いいですね!お仕事頑張ります!楽しみ』


そんなメッセージのやり取りを見ながら、ウキウキやってくる圭太と浮気相手のための準備を始める。


(私も……楽しみにしてるわね)


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