義母への願い事
※美玖目線に戻ります。
「ああ…そうですか。ご連絡ありがとうございます」
義母からの電話を受け、私は小さく息を吐いた。
私のお願いした約束の2つ目を、ちゃんと守ってくれたその報告だった。
今回の騒ぎを義姉の夫、航平さんに、しっかり知らせてくれたらしい。
(お義姉さん……私に散々ケチつけといて、自分は結局何もできてないのね)
義姉はかなり前に派遣を切られて、働かなくなったらしい。
義姉夫としては、子どもがいるわけでもないけど、働けるうちは少しでも
働いてほしいという希望だったそうだ。
『共働きのときは、麗香じゃなく航平さんが、ほとんど家事をしてたみたいでね。仕事を見つかるまでは、麗香が家事って話だったみたいなんだけど」
『掃除もしないし高い家事代行を頼んだり。遊びに行ったり無駄遣いばかり
最近はネットビジネスだなんだか言い始めたらしくて』
と、義母は電話先で、頭を抱えて話していた。
『義姉の夫、航平さん、義姉との関係は大丈夫ですか?実は、夫の圭太と、この間こんなことがあって……』
と、そんな風にだけ伝えてもらうつもりだったはずだが、むしろ、義姉の夫から悩みがどんどんあふれだしたそうだ。
『60万の授業料、航平さんのカードを勝手に使って払ったんですって。かばう気はないけどね』
もともと離婚したいと考えていた義姉夫の背中を、図らずも背中を押す形になった。
(お義姉さんへの慰謝料は、とれるとは思わないけど、事情を伝えるきっかけにはなったしね)
メッセージのやり取りも、義姉がここに来た時に撮れた会話もある。
何か文句を言われたら、それを出すだけ。
かき乱された分、義姉にはとことんイヤな目にあって悩み苦しんでほしい。
あれから私は、マンスリーマンションを仮住まいにしてい。
今ごろ夫の圭太。そして浮気相手の中原あゆにも、内容証明が届いたころだろう。
その証拠に、さっきから圭太からの着信がなりやまない。
『300万ってなに』
『電話でて』
『中原さんにも送ったの⁉
さっき電話来たんだけど…!』
『ねえ見てるんだろ⁉』
『許すっていったのに』
『ごめん俺が悪いから返事返して…!』
『こんな大金無理』
『俺らの家はどうなんの⁉ローンもあるんだよ⁉』
というメッセージもずっとだ。
あと1つ、私がお義母さんにお願いしたことは、義姉と圭太が私に関する件で
金銭的援助を要求してきても絶対に対応しないこと。
自分たちがしたことが、どういうことなのか。
ぜひ毎日働いた給料から、まとまったお金が虚しく引いていかれる瞬間を味わい、そして生活に負担を及ぼしてほしい。
(弁護士を雇ったとしても、こっちには動かない証拠がある)
圭太の次に、知らない番号から、電話が大量にかかってくる。
この前聞き出した、中原あゆの番号とは違う。
ということは、多分これが義姉だろう。
勝手に電話番号を教える。それが圭太だ。
鳴り響く電話をトンと指で止める。
相手にもしてあげない。時間と心のムダだから。
「ごめんね?忙しいの。あとは、勝手に落ちぶれて」




