↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/26

義姉、麗香の転落劇

「なんなのっあの女…!」


(本当に頭にくる…!なにもかもぶち壊して…!)


人気が出ている弟、圭太にあやかって、今日の集まりで、私は仕事をもらう予定だった。


そうすれば、嫌味を言ってばかりの夫の航平を見返せる。

コンサル?秘書?やったことなんかない、でも、圭太を成功させた私には、才能がある。やればいくらでも、成功するに決まってる!


(なのにあいつら…!)


お金をかけて用意したのに、集まったインフルエンサーたちは薄情者ばかりだった。

圭太が、バツイチじゃなかったって情報流さないか、気が気じゃない。


(そうなれば仕事の話だってなくなるかもしれない!)


指の爪を噛む私を、お母さんが冷たい目で見てくる。


「………麗香。自分のしたことわかってるの?」


「私は何も悪いことしてない!お母さんこそなんで、あんな女の味方すんの!」


「敵とか味方とか……。なんでそういう風にしか考えられないの?」


お母さんはいつもこう。

私の質問に対して、どっちでもない答えをする。


「やっていいことと、悪いことがあるでしょう。あんたたちは、その一線を超えたの」


「なにが!?」


弟のことを考えてあげただけなのに。

そんなイヤそうな顔して怒鳴るの?!


部屋にずかずか戻ると、まだ涙の筋が顔に残る圭太が膝をついていた。


「なにへこんでんの?!」


返事は嗚咽でしか、返ってこなかった。


「あの女と別れたかったんでしょ!思い通りになってよかったじゃない!」


そうだ、圭太が望んだとおりになった。



「………だよ」


「え?」


「全部最悪だよ!姉ちゃんのせいで、ぜんっぶ終わった!!」


「なっ…⁉」

(はあ!?)


「姉ちゃんの言うことなんか聞かなきゃよかった!終わりだ終わり…!

今日来てたやつらにぜんぶ、ばらされて終わり!!せっかく時間かけて育てた

アカウントもパーだし、美玖も出てくしなんっも上手くいかねえの!」


「それがなんで私のせい⁉元はといえばあんたが先に、浮気しちゃったからじゃん!それが原因でいろいろバレちゃったんでしょ⁉」


「それも姉ちゃんが、浮気くらいいいじゃん!広い目で探さないとねーって

言って止めなかったじゃん!」



部屋に戻ってきたお母さんも、圭太の言い分に、目を丸くして驚いている。


「あのね。『止めなかったから』じゃないでしょうが」


お母さんの言うとおりだし。どうせ私が止めなくても、浮気してた。

逆恨みもいいとこよ!



「でも、でもさ…とにかく姉ちゃんが責任取ってよ…!美玖の最後の顔見ただろ…⁉ぜってぇ許してくれねぇもん…!慰謝料とかなんやら請求されたら、俺金なんっも残らないよ!」


「……はぁ⁉なんで私が!?そんなのアンタの自業自得じゃん!私には関係ないし!」


「自分で何とかしたら⁉とにかく私には関係ないから!」


優しさでいろいろ教えてあげたのに。

圭太は恩を仇で返すつもりだ。


(しんっっっじらんない!)


「待ちなさい!まだ話は……!」


「話すことなんかない!帰るからついてこないで!」


「お姉ちゃん!このことは~!」


出ていく私に、母がごちゃごちゃ言ってたけどどうせお説教だ。


(やってらんない!なにが私のせい⁉嘘を実行したのは圭太本人じゃないの!)


私はイライラしながら自分の家に帰った。


(SNSが上手くいったのも、私が教えてあげたからなのに)


よくよく考えれば私とは違って、フォロワー数も伸びてる。


もしかしてバラされるかもと、心配してあげた私が馬鹿みたい。


思いのままカバンを放り出すと、がちゃっとイヤな音がした。


「もぉー!こんなとこに物置かないでよ…」


今日のために買ったちょっといいカバンなのに。

傷でもついたらどうしてくれんの?


イライラしながら見ると、壊れたのは夫が作っている途中のフィギュアだった


「この辺に置いとく方が悪いし」


作りかけのフィギュアは、まだ箱に入ってたが、開けてないから中身が見えない。


「気分転換に飲んじゃお!美味しいおつまみどこだっけ」


どうせわからないと思ってそのまま放置。

海外ドラマとお笑いを見ながらソファで、いつのまにか眠ってしまった。


「おい……おい!起きろよ!」


「いたっ…何⁉やめてよ…⁉」


ぺちぺちと起こされたほっぺが痛い。


さっきお母さんに叩かれたばっかりなのに…!

目を開けると、旦那の航平が怒っていた。


「お前…!俺のフィギュア落としたか⁉」


「はぁ……っ⁉そんっなどうでもいいことで起こしたの⁉」


「どうでもいいことじゃねえよ!」


航平の大きな声は久しぶりに聞いた。

不穏な空気をようやく感じた。


「思いっきり落としてそのままとかありえないだろ⁉上司に頼まれて買ってきた高いやつなんだぞ⁉」


「だ、大事なもんなら、ちゃんと仕舞っておけば⁉」


「置いてたろ!ここは触るなって、さんざん言ったぞ⁉」


朝そういえばそんなことを、言われたような記憶がよぎる。


「すぐ持っていけるようにしてたのに…。家も片づけないし働きもしない

マジで何なの…⁉さっさとこの家から出てけよ!」


「………⁉た、たかがフィギュアで出ていけ…⁉頭おかしいの⁉」


理解できるはずもなく、反論すると航平はより、声を荒げた。


「こっちはもう限界なんだ!だいたいなんだよこのカバン!」


フィギュア近くに置いた、買ったばかりの鞄を投げられる。


「ちょっとやめてよ!」


「ブランド物って!バカにしてんのか⁉どう考えても小遣いじゃ買えないだろ!この前から、こそこそ仕事だーなんだか言ってるけどさぁっ!何にも稼げてないだろ!それなのに無駄遣いしてよくドヤ顔できんな!」


こっちは必死なのに、なんでそんな言い方しかできないの?

成功に下積みは絶対なのに。利益が出るには時間がかかるものだ。


「私が何を買おうがどうでもいいでしょ!あなたのお金は夫婦のお金

なんだから!」


言い切った私を、航平は憎しみを込めた目で、私を睨みつけたと思うと、呆れたように溜息をついて、すたすた部屋に戻っていった。


(ほら言い返せない。私は何にも悪いことしてないのよ!夫を妻が養うのは当たり前のことじゃない!)


思えばこのとき、結構酔っていたかもしれない。


圭太は私のアドバイスが、あったらから上手くいった。


私も自分よりレベルの高い人からアドバイス受けたら…上手くいくんじゃない?


そのまま高額スクールに、申し込み、航平のクレジットカードを借りて支払いを済ませた。


(これで、航平もなにも言わなくなるでしょ!!)


離婚したいなんて嘘。

私が稼いでないから、あの人は多分不満なだけ。


翌朝起きてきた航平に、私は自信満々に宣言した。


「仕事見つかったから。私が何しても文句なしね」


まだ見つかってはないけど。スクールつながりでいくつか、仕事はもらえるらしい。

だからきっと大丈夫だ。


「………早く出てけよ」


航平は特に反応もせず、無言で仕事に出かけてった。


(おめでとうも言えないんて、最低ね)


翌日には離婚届が置いてあったけど、私に何も非はないのに、離婚するが意味ない。


1人パソコンに向かって、よくわからない動画を見ながら勉強していたら、

帰ってきた航平に、いきなりパソコンの電源を切られた。


「⁉なにすんの⁉消えちゃったじゃん!」


「おい、これどういうことだよ」


「…は⁉」


航平が持っていたのは印刷したクレジットカードの明細。


「60万も何使ったんだ⁉こいつ誰だよ…!」


支払先は、まさに今見ていた動画のSNS運用を教わってる先生だ。


「……初期費用よ仕方ないでしょ」


航平を無視して、パソコンの電源をつける。私には1分1秒が貴重だから。


「……じゃあこれは?お前、なにやってんの?」


深いため息の後、航平がぺしっと渡してきた書類は、封筒の封が空いていた。

「勝手に開けたの⁉」と、怒ろうとしたとき書類に、書かれてる名前が目についた。


「井口 美玖……?慰謝料請求に関する通知…?」


「このたび、あなたが私の夫の離婚を助けていたことが判明しました。この行為により、精神的・経済的な苦痛を受け……慰謝料50万円請求させて

いただきます…ぅ⁉」


差出人は弁護士。そして送ってきたのは美玖さんだ。


「あの女……!私は何もしてないのに!」


今すぐ訴えてやる!とスマホで電話しようとする私を、航平が心底、軽蔑してきた。


「お義母さんから聞いたよ。君がしたこと全部。自分はなにも、できてないくせに。よく偉そうにできるよな。マジでないわ」


「はぁ⁉可愛い圭太を助けてあげただけだし!」


圭太の偉そうな嫁を、姉として躾けただけ。

なのに、なんで航平がキレてんの?


「俺も、お前にクレカの60万請求するから。全額返せよ」


「家計から出したお金でしょ⁉返さないし、返せないわよ!無理!」


話を聞かず部屋から出ていく航平に、いちゃもんをつけようと追いかけると、

大きな荷物を持っていた。


「どこ行くのよ……」


「麗香の仕事が見つかるまで、我慢するつもりだったけど。俺の方こそもう

一緒にいるのマジで無理だ」


何を言ってるのか理解ができない。


「人の家庭壊しといて、罪悪感もまったくないのも信じられない」


よく部屋を見れば、航平の私物が少しずつ減ってる。

(私の知らない間に、出て行く準備、してたの?)


「この部屋、今月までだから。それまでに出てけよ」


「え……」


「離婚届も書いといて」


「なに勝手に決めてんの⁉書くわけないし、離婚しないわよ!」


まだ稼げる手段もない。

どうやって生活しろと?


「もう決めたことだ。お義母さんにも言ってる。長引かせる方が時間のムダだから」


「………!!う、訴えるわよ!こんなの認めないから!」


喉のかぎり叫ぶ私を、航平は鼻でフッと笑う。


「弁護士雇う金もないのに?」


「……っ!まだお金になってないだけよ!これから稼ぐの!!」


「自分は口だけだっていい加減認めろよ!じゃあな」


「……!待ちなさいよっ。航平!!!!」


叫んでも、叫んでも、振り返りもせず、航平は私を置いて出ていった。


「ありえない……っ」


全身に寒気がする。

スクール代金、慰謝料、挙句に引っ越し……。それに離婚?

生活費はこれからどうすればいいの?


努力して努力して……。上手くいきはじめた途端、全部あの女に壊される。


「っっっあああああ!私がなにをしたっていうのよぉおおお!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。