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離婚します

「離婚だなんて困るよ……!話が違うじゃんかぁぁぁぁ……!」


そんなの聞いていないと、圭太はみっともなく、私に縋りついた。


「………裏切ったのはあなたじゃないの」


勝手に仕事を辞め、私の浮気を疑い。

中原あゆと浮気して、アイコという架空の女とDM。

また家に連れ込もうとした。

模様替えした部屋を、わざわざ元の姿に変えてまで。


こんなにも私という存在を、この部屋から消したがってるのになにが困るんだろう。


「で、でも【アイコ】は美玖だったんだろう⁉それなら俺は美玖を

口説いてただけじゃん…!浮気じゃなかったし…!そりゃまた家でパーティしたのは謝るけど……!美玖がいい顔しないから言わなかっただけで!」


「あのさ、教えてあげようか」


私は床に膝をつく、圭太の目線にしゃがんで合わせてあげる。


「あなたのこと、許したことなんて一度もない」


「……!」


「この家もあなたも全部いらないの」


「美玖……!そんな…俺っ、美玖がいないと困るよ……!」


「何言ってんよ、圭太!こんな女いらないわよ!さっさと別れてやればいい!」


部屋の端に追いやられてる、義姉が叫んだ。


「でも姉ちゃん……!」


「静かになさい!」


義母の声で、義姉は慌てて言葉を飲み込み口を閉ざす。


「困るのは、住宅ローンを一緒に払ってくれる人が、いなくなるからって意味でしょ」


「ちがうよ……」


訂正しているのに小さく自信のない声は、その通りだと答えているも同然だった。


「だから無理のない金額にすればよかったのにねー…。今思えば本当に

あなた名義でローン組んどいて、よかったなぁって思うわ」


部屋の中を見渡すと、ふっと、笑いがこみ上げてくる。


「いくら綺麗でおしゃれでも、このマンションに私全然魅力感じないから

あなたのせいでね」


あーあーとカーテンを開け、ベランダから街並みを見る。

空は青く、綺麗だった。


「もうこれからは趣味のワインを開けて、晩酌することもできないかもだけど。ま、せいぜい頑張って」


「イヤだ…‼ヤだ!捨てないでよ美玖!」


全部自分で望んだことなのに。

その場に膝をついて、頭を下げる姿は何とも滑稽だった。


「俺、頑張ってたじゃん…!だからもうすこしだけチャンスを!お願いです…!」


泣いてる子どもみたいな圭太の姿に、義母が唇を固く結ぶ。


「もう少しだけっていつまで?」


私は、今度は圭太を見下ろしながら言った。


「えっ?」


「あなたが私の収入分まで、稼げるようになるまで?しばらく金づるでいろってこと?」


「そうじゃないよ…!」

「いいえ、そうよ!」


「私の結婚生活をめちゃめちゃにしたくせに、よくもまだそんな甘えたこと

言えたわね?」


「私に落ち度があったとか。あなたが不満だったとかなにもかも言い訳!あなたはいらない!私にこれから捨てられるの!」


怒りがもう抑えきれない。


「勘違いしてんじゃないわよ。どうして私が我慢してあげないといけないの?」


「美玖。ごめん…ごめん…ごめんなさい……っ」


私の怒りの剣幕に、圭太はまた子どもみたいに、ぐすぐす涙を流し始める。


「自分だけ不幸。自分だけ頑張ってるとでも思ってた⁉だからなにしても許される?そんなわけないでしょ!世界の中心にでもなったつもり?」


「っ…ごめ…」


「ごめんじゃないわよ!」


もともとまとめていたスーツケースを、部屋から転がしてくる。


「これからどうぞ、自分が犯した過ちをイヤってくらい感じながら、生きてください」


「待って!……待ってよっ」


「待たない。後の荷物はあなたがいない間に取りに来るから」


義母に腕をつかまれ、信じられないという目で見てる義姉を思いっきり睨む。


「だから勝手に触って、持っていかないでくださいね。ちゃんと何を置いているか、記録してますので」


「!」


「私の物が減っていたら、警察にでもなんでも通報します」


「誰が……!」

「麗香!」


言い返そうとする義姉を、義母が名前を呼んで止める。


「ごめん。ごめんなさい…!戻ってきてください…!」


「圭太!やめなさい!!なんで謝ってんの!」


ありえない!と怒る義姉より、圭太はこれから来る、怖い未来が見えたらしい。


「うるさいな!全部姉ちゃんのせいだよ…!どうしてくれんだよ…!」


「はぁ⁉なんでそうなんのよ!」


「美玖が機嫌悪くなるのは、いつも全部姉ちゃんが絡んでんだよ!」


「そんなの知らないわよ!」


「やめなさいアンタたち!」


醜い姉弟げんかをあきれ果てた、義母が止める。


「圭太!全部自分が招いた結果でしょう。泣いてすがって見苦しい…!」


「だって…!」


「だってだってうるさい!ごちゃごちゃ言ってる暇があるなら、この部屋

早く片付けなさい!」



ぎゃーぎゃーいう2人はまるで子どものよう。


「お互いに責任を擦り付け合ってもどうにもならないのに。わかってない

かわいそうな人たち」


義姉がイライラしながら、圭太は見捨てられると怖々しながら、くすっと笑う私の声に反応した。


「これからもどうぞ、無駄な時間を過ごしてね」


部屋を出た後、すぐに夫が追いかけようとしたのを義母が止める声がして、すぐに義母が追いかけてくる。


「今日は来ていただいて、ありがとうございました」


私は気持ちを立て直して、義母に頭を下げる。


「謝るのはこっちだわ」


「離婚の手続きは弁護士を挟んで進めます。しばらくは迷惑かけるかも

しれませんが……その」


義母「わかってる。あの子がしたことだから、ちゃんとあの子に、責任取らせるわ」


お父さんもそう言うと思うからと、腕を組みながら義母はうなずいた。


「助かります。それじゃあ……失礼します」


「ええ」


バン!と大きな音がしたほうを見ると、義姉がいた。


玄関から廊下にいる私に向かって大きく叫ぶ。


「この馬鹿女!」


私は相手にせず、そのまま義母に挨拶だけして歩き始める。


エレベーターを待つ間、最低だとかクズだとか。


そんなののしり声が、たくさん聞こえたと思う。


最後は義母にきつく叱られ、黙ったようだった。



エレベーターがやっときて乗ろうとした瞬間、義姉のふり絞った声が響く。


「あんたみたいな女ぁ!これから絶対に幸せになれないからぁー……!」


(……!)


ドアが閉まり1人きりになり、エレベーターが動いてく。


そんな恨まれるようなことをしたのか。

義姉は何も失わず、私だけがひっかきまわされた。

ただ憎悪だけが残る


いつかどこかの誰かが、腹を立てて人を憎んだとき。憎んだ自分を許してあげると、そんなきれいごとを言っていたのを思い出した。


(そっかそっか……)


そうすることで、怒っていた自分とさよならできるんだと、書いてあって

ストンと納得できたのに、今は納得できそうにない。


その日はホテルに泊まり、日曜日には実家に報告した。


そして月曜日有休をとり、前から連絡を取っていた弁護士事務所に訪れる。


浮気相手、中原あゆへの慰謝料請求。

圭太への慰謝料と財産分与を含めた離婚協議。


そしてもう1つは、とっておきだ。


「こちらでよろしいでしょうか?あまり期待はできませんが…」


弁護士が用意してくれる書類を隅から隅まで、確認すると笑みがこぼれた。

あの義姉を懲らしめるのに、完璧な情報すべてが詰まっている。


「ええ、知らせるだけで、私には十分なんです」

 

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