↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

義姉の言い分


「はぁ⁉」


義姉がこれだけびっくりしてる顔を見るのは久しぶりだから、私がこうやって

言い返す人間だということを忘れてしまったらしい。


「ねえ、圭太。なんでお義姉さん来てるの?家には勝手に呼ばないでって前に言ったよね?」


義姉を招き入れたくせに、存在を消して、ごはんを並べようとしていた圭太にズバリと聞く。


「えっと……それは姉ちゃんが来てくれるっていうから……だから」


「だからなに?メールだって、電話だって。私に一言いうくらいできたでしょ」


「でも、姉ちゃんが……」



助け舟を求めるように圭太は義姉に視線を送る。


「弟の家なんだから、わざわざ美玖さんの許可がいるわけないし!」


「私の家でもあるわけですよ。お義姉さんも、お義姉さんで、少し気をつかうことを覚えてくださってもいいと思いますけど」



「はぁ⁉」


「お義姉さんも結婚してますよね?その態度でいつもいたら、旦那さんのご家族にずいぶん嫌われてるんじゃないですか?」


「そんなことないし!それこそアンタに関係ないでしょ⁉」



「えーっ。じゃあ親戚の皆様は特に優しい人たちなんですね」


よかったですねーとわざとらしく驚いてみせると、義姉はぷんぷん怒り始める。


「相変わらずイヤな子!その態度改めたら⁉」


「お義姉さんこそ改めてください。私がどうしてお義姉さんを呼ぶときに、声をかけてほしいのかわかります?」


理由を知っている夫はぎくりとした。


「お義姉さんが私の物を、服でもなんでも物色するからですよ。そんな手癖の悪い人間に、いてもらいたくないと思うのは当たり前のことじゃないですか?」


家にいても居なくても、勝手にタンスの中や戸棚の中から、物がなくなれば、誰でもそう思う。



「そんなことしてないわ。美玖さんが出しっぱなしにしてたんじゃないの?」


「いいえ?私綺麗好きなのできっちり片づけてましたよ。家に帰ったらびっくりしました。こんなことする大人がいるんだってことに」


その瞬間、義姉は顔を真っ赤にした。


「ちょっと見ただけじゃない!」


もし「ちょっと」だとしても、勝手に触られること自体が、イヤなことがこの義姉には伝わらないのだろう。


「だからお義姉さんは、できるだけ私のいないときに来てほしくないんですよ。まあいる時にも来てほしくないですけど」


ストレートに言いたいことを言うと義姉の顔は怒りで、さらに紅潮する。


「頭きた……っ!性格悪すぎ……!だから圭太に浮気されるのよ!」


「私が男だったらアンタなんて絶対いや!」


私を全否定する義姉に、圭太は自分の立場が悪くなっていくことを感じていた。


「ね、姉ちゃん……!そのくらいでいいからっ……!」


「私もお義姉さんはお断りしたいですね」


あははーと義姉に返し、慌てる圭太に鋭い視線を送る。


「……お義姉さんに泣きつきでもした?」


威圧感を覚えたのか、圭太は一瞬身体を固める。


「いやっそんなつもりなくて、ただ話の流れで言っちゃって…。それで姉さんが一言言いたいっていうから…。ただそれだけで……!」


「………」


弟の不甲斐なさに謝る。

この義姉にそんなことは、決して起こらない。


金づるで便利な私と、弟が別れられるように、SNSで副業と女探しをすすめるような女だからだ。


「浮気されたのは、私が悪いと考えてるんですね」


「そうよ。食事も作らない帰ってくるのも遅い。働いてるからってそんな

偉いわけじゃないの!女としての優しさとか男が甘えたいところがない!」


「はいはいはい…」


やっぱりこの姉弟は救えない。


「もういいですか?帰ってもらっていいですよ」


「え…」


「結構遅い時間ですし。お義姉さんこそ晩御飯の準備、しなくていいんですか?」


いたずらっぽい笑みを浮かべながら、今にも怒りで弾けそうな義姉に皮肉を言う。


「誰よりも早く帰って、出来立てのごはん出さないと!浮気されても仕方ないですよ」


「なんなの…!」


「え、そこで怒るんですか?あー…もしかして…はは。気づかなくてごめんなさい。お義姉さん『も』浮気されてました?」


「⁉されてるわけないでしょ⁉」


「え、そうなんですか?私は出来てなくて、浮気されてあたりまえって、言われたんで……。ついお義姉さんの体験談だと思っちゃいましたー」


ふふっと小さく笑うと、義姉はどたばだと荷物を持った。


「相手にした私が、ばかだった…!もう帰る!圭太もこんな女とは、早く別れなさい!」


「姉ちゃん!」


まるで「行かないで」と、情けない声を出しながら、圭太は義姉を追いかけた。


(あほらし……)


私は帰るまで返事をしていた、圭太のアカウントへのDMを見直す。


帰る前に、圭太に今度の日曜日、1日家にいないと伝えてみると、

すぐに『アイコ』宛に、こんなDMが来ていたのだ。


【アイコちゃん今度の日曜、よかったらウチにこない?美味しいもの御馳走するよ!友達呼ぶからさ】


……だから私はこう、返すのが正解よね。


【いいんですか?憧れのお家にお邪魔できるなんて感激ですぅ。ケーキとワイン持ってきます!圭太さん好きでしたよね?】


義姉が帰った後、圭太はまたヘコヘコした態度に戻って、リビングへ戻ってきた。


「あの……勘違いしないで欲しいんだけど、姉ちゃんはただ俺のことを

思って言ってくれただけで…!俺は美玖に歯向かうとかそんなつもりじゃないから…!」


「知ってる」


義姉の援護射撃が有効と思っている圭太の能天気さが、とてもまぶしい。


圭太は私の笑顔にどんな意味があるのかも知らない。

DMのやり取りしてる相手、アイコが私だとも。


ご飯をあっためなおし、今日も夫婦団らんの食卓が始まる。


「中原さん。すごい風当たりきつくなってさ……。俺は気にしないで

おこうと思ってるのに、取り付く島もないんだよね…」


中原あゆからすれば信じていた圭太に、最後に裏切られたのだから、あたりまえのことだろう。


「そうなんだー?」


私はまだ、中原あゆへ何も行動を起こしていない


慰謝料の請求は浮気が、発覚してから3年らしい。


私に個人情報をつかまれてから、中原あゆは毎日毎日びくびく、震えて過ごしているのだろうか。


ぜひこのまま圭太へイライラと、恨みを貯めていってほしい。


不安と焦り、恐怖を抱えて、いくら待っても来ない知らせが、日常になる日まで。


そして、何もしてこないかも…と、どうぞ思いきり安心してほしい。


その過程で2人が和解したとしても、私には何も変わらない。


私にとって、もっとも都合の良いタイミングで、2人にまた教えてあげたい。


現実という名の地獄を。



「おかげで仕事しにくくて、しょうがないよほんとに」


すべて自業自得なのに、圭太はまるで他人事だ。


「普通にしてって言っても、なんか聞く耳持たずに、ヒステリー起こすんだよね。美玖が許してくれたから、何も気にしなくていいのに。大人の対応ができないんだなって幻滅したよ」


どこまで本当かわからないが、一体いつ、誰が、『許す』と一言でも言ったんだだろう。


そして、浮気しといて、よく妻の前で浮気相手を貶めて機嫌を取るような

行為ができたものだ。


「そっかー…大変だね。あ、そういえば料理上手になったんじゃない?」


「えっほんと?嬉しいなー!最近SNS見て勉強してるんだ。妻が喜ぶ映え飯ってのがあってさ~」


「へーすごーい」


「まあこれくらいはね!だから姉ちゃんの言うことは、気にしなくていいからさ。美玖の気が済むまで、ちゃんということ聞くから」


圭太はどこか誇らしく、自慢げに頷いて見せる。


「ありがとう」


気なんか一生すむわけがない。


私が許すときが来るのを、待っている圭太の態度が腹ただしい。


義姉にすがったくせに。

いい夫アピールをする夫と【アイコ】としてやり取りしながら、私は土曜日までに着々と準備を進めていいった。


夫との約束の時間は14時。

その2時間前、私は12時にある人と会っていた。


「美玖さん。圭太が、浮気したって本当なの……?私の息子が……本当に?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。