【第9話】公爵と至高の宝箱『前編』
異世界に何故か飛ばさせてしまった料理人「坂本」は腹を空かせたお客に温かい普通のごはんを振る舞うハートフルストーリー
開店前に以前来店したあの男がやってきた…
その目的とは一体…!?
こちらの話は前編、後編に分かれております。
後編は本日20時半に投稿します。
ブックマークをして待っててくださいね!
午前11時…
昼の営業を控え厨房では、トントントン…と
心地良い音が響いていた。
今日の定食は「角煮定食」。
その汁物の具材を切ってきた。
仕込んでいる特製の出汁の香りが立ち上る。
「よし、これで昼の準備はざっくりとは終わりだな!シャルロット、米は後何分で炊ける?」
「あと、30分です!」
「よし、12時からいけるな。」
坂本が額の汗を拭った。
その時だった……
……カラン、カラン…
まだ開店していないのにも関わらず入り口の鈴が鳴った。
「すまねぇ、まだ準備中なんだわ。
12時頃にオープンするからその時間くらいに…ってあんたか。」
入ってきた男を見て坂本は苦笑した。
上質なマントを羽織り、あの時と同じようにやけに偉そうなオーラを纏っている男。
そう「おでん定食」を平らげていった男だ。
「ふん、準備中なのは百も承知だ。
この時間しか公爵の私は空いてなかったのだよ。」
「公爵…。お前さん公爵だったのかい!
ま、いいか。ところで…?
何の用事があってここまでお越しに?」
「相変わらず言葉の使い方がなっておらんな。まぁ良い。
今日は貴様に頼みがあって来た。」
公爵一セバス一はカウンター席にドスンと座り腕を組んで坂本を真っ直ぐ見据えた。
「頼み?俺に出来ることって言っても限られるからなぁ…何だ?日替わり定食を増やせ、か?」
「そうではない。……今週末にこの街で作物の収穫を祝う祭りがあることは貴様も知っているな?」
「あぁ、常連達も楽しみにしてたな。屋台がいっぱい出るんだろう?シャルロットも楽しみにしてるよ。」
「そうだ。その祭り当日私の警備兵や他国から招く予定の重要人物の為に特別な食事を用意せねばならぬ。
……そこでだ。お前の手で『ランチボックス』と言うものを作れ。それを会場まで届けさせるのだ。」
セバスの突然の要求に、流石の坂本も仰天した。
「はぁ!?べ、弁当を作れだってぇ?
おいおい…、お前さん公爵何だろぉ?
何でこんな小さい飯屋で大量発注してんだよ!凄腕の料理人共に作らせればいいだけの話だろぉ…?」
「黙れ。奴らの料理はどうもな、手軽に食べるのは不向きなのだ。
やたらと豪華な大皿な料理か、冷めると美味く無くなる肉料理ばかりでな。
だが、貴様が作ったあの『おでん』は違った。地味で泥臭い料理で食えたもんじゃないと思っていたのだが、少し冷めても美味い工夫がしっかりとされており、何より激務で疲弊していた胃にも優しく収まる工夫もされておった。」
セバスは少しバツの悪そうに視線を外しながら、けれどもしっかりとした口調で続けた。
「お前が作る『ランチボックス』なら祭りの中でも食べれるだろう?
……どうだ?この私の依頼だ。断る理由もあるまい。」
相変わらず傲慢な物言いだ。
しかし坂本の料理に対する隠れた最大の評価と信頼が隠されていた。
坂本はしばらく呆れたようにセバスを見ていたが、やがてニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「しゃねぇなぁ…作ってやるよ!」
「ほぉ、受けてくれるか!」
「おぅ、やってやるよ。
ただ金貨では支払うなよ。ちゃんと日常で使えるお金で払ってもらうからな!」
「ふん!当然だ!私の注文なのだ。
報酬などいくらでもくれてやる。楽しみにしているぞ、坂本。」
セバスは満足気に鼻を鳴らすと、確かな足取りで店を後にした。
「やれやれ、あの公爵さんは…
今週はシャルロットとのんびり屋台巡りでもしようと思ってたんだがな…
ごめんな、シャルロット手伝ってくれるか?」
「はい!がんばります!!ふんふん!」
シャルロットはやる気だ。
坂本は包丁を握り直し、新たな挑戦に目を輝かせるのだった。
後半へ続く……
あの男は公爵だったんですね…
知らなかったです!!(棒読み)
少しでも『お腹が空いた』『おもしろい』と思ったら、下にある【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で応援していただけると、執筆の励みになります!
ではまた夜にお会いしましょう…




