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坂本さんの異世界飯処  作者: とま坊


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【第4話】お疲れ受付嬢と鯖の味噌煮定食

異世界に何故か飛ばさせてしまった料理人「坂本」は腹を空かせたお客に温かいごはんを振る舞う料理人だ。

店をオープンして一週間が経ち段々と繁盛してきたのだがギルドの社員がやってきてとある依頼をする…

サクッと読みやすいので是非ご覧ください

『食事処〜坂本〜』が開店して一週間が過ぎた。


大工のマートン達が言いふらした口コミが街に徐々に広がっていき、少しずつ繁盛するようになってきている。

昼の賑やかさが一旦落ち着くと、一度暖簾を下ろし、夜の日替わり定食に向けて仕込みをする。

そうして日が落ちる頃に再び明かりを灯すのがこの一週間のルーティンになっていた。


「坂本さーん!お皿全部拭きましたー!」


厨房から声が聞こえてくる。

シャルロットが誇らしそうに胸を張っていた。


「よし、お疲れ!じゃそろそろ暖簾出すぞー。」


俺がそう言って立ち上がった時、入り口のドアが重々しく開いた。


「すみません…明かりがついてたんですけどもう開いてますか…?」


入ってきたのは、肩をがっくりと落とした女性だった。

仕立ての良い紺色の服はシワだらけで、目の下には大きなクマもある。

彼女はこの街の冒険者ギルド職員の常連、

――アンドレーだ。

毎日、血気盛んな荒くれ者たちの冒険者の相手をし膨大な書類と戦っている。


「あぁ、丁度開けようと思ってたところだよ。まぁ席に座ってくれ!」


「た、助かった…も、もう一歩も歩けないくらいお腹が減ってて…」


アンドレーは吸い寄せられるようにカウンターに進むとそのまま机に突っ伏した。

ギルドの職員の労働環境は想像以上に過酷だ。

野郎共の喧嘩の仲裁、死亡してしまった冒険者の書類整理、予算の計算。体も心もボロボロになった彼女から漏れたのは重く、切実なため息だった。


「ひ…日替わり定食お願いします。

温かくてオコメをいっぱい食べれるようなもので、なんかこうほっこりするようなものだと良いなぁ…」


「よし、待ってな!急ぐぞシャルロット!」


俺達は厨房の中に入り火にかけていた煮込み鍋の蓋を開けた。

脂の乗った大ぶりの青魚。丁寧に霜降りをし青魚特有の臭みをしっかりと取る。生姜の薄切り、酒、砂糖そして坂本が独自にブレンドした特製の味噌でコトコトと煮込んである。

一晩寝かせることでしっかりと骨の際まで濃厚な味噌の旨味が染み込んでいる。


小鍋で温め直し、とろりとした味噌のタレをたっぷりと鯖にまわしかける。


―――ふわり…ふわっ……


生姜の爽やかな香りと少し煮詰まったような香ばしい味噌の匂いが一瞬で店内に広がった。


「うわぁ…す、すごぉい…」


アンドレーがガタッと勢いよく上半身を起こした。その目は懐かしいような温もりを求めるように厨房へ向けられている。


四角い皿の真ん中にふっくらとした魚を盛り付け傍らに針生姜を添える。

かき玉汁、そして炊きたての白い米を少し大きめの茶碗にたっぷり入れ準備が整った。


「待たせたなぁ。鯖の味噌煮定食だ!」


「綺麗…お魚が凄いふっくらしてる…

美味しそう…」


アンドレーはフォークではなく箸を器用に持ち鯖の身にそっと差し入れた。

じっくりコトコト煮込まれた身は驚くほど柔らかく箸がすっと入っていく。

身に濃厚なタレを絡め大きめに切り口に放り込んだ。


「あ、甘くて…美味しいです。」


アンドレーの口から張り詰めていたようなものが一気に解けるような、小さくも優しい声が漏れた。


「これオコメが止まらない味ですね…!」


アンドレーはすぐさま白い米を口に運んだ。

特製のタレが染み込んだ鯖とホカホカの白米が口の中で混ざり合い絶妙な調和を生み出す。アンドレーの頬が自然と緩み食べるスピードがどんどん上がっていく。


毎日張り詰めた緊張の中で戦っていた彼女の体からすーっと余分の力が抜けていくのが見て取れる。

ただ腹を一杯にするだけの食事ではなく、

孤独な夜の疲れをそっと優しく包みこんでくれるような「ほっこりするごはん」だった。


「ふぅ…ごちそうさまでした…

なんか凄く食べてて落ち着きました。」


米粒1つも残さず、綺麗に空になった皿と茶碗を眺めながらアンドレーの顔には店に入ってきた時とは見間違えるような穏やかで優しい笑顔が戻ってきていた。


「ありがと、坂本さん。このお魚すっごく美味しかった。私また明日から頑張れそう!」


「そりゃ良かった。明日もギルドの仕事頑張ってな!」


アンドレーは嬉しそうに代金を払い足取りも軽く夜の街へと帰っていった。


静かになった店内で俺は振り返る。


「さぁ、俺達も頑張るぞ!」


「はい!」


開店して一週間。

『食事処〜坂本〜』には今日も小さくてほっこり温かい救いの灯火がともっていたのだった。


読んでくださりありがとうございました。

「ほっこり」するようなお話を書いてみました。


今回は鯖の味噌煮定食をメインに書いてみたのですが皆さんはお好きでしょうか?

私は鯖の味噌煮好きなんですが特に一緒に煮た生姜が好きです。

あれ美味しいんですよね!


あ…話が脱線してしまいました…

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また次の営業でお会いしましょう……

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