【第3話】頑固大工と感謝のハンバーグ
新しい家族となったシャルロット
でも坂本1人分の部屋しかないので街でも有名な大工に依頼することに…!
でもその大工は少し…頑固者で…
「―――で住むところがない、と…」
腕組みをして、地響きの様な低い声を出したのはこの街の大工、マートンだった。
日に焼けた分厚い皮膚と丸太のような剛腕。お世辞にも愛想が良いとは言えない頑固親父が我が城の席に座っている。
その視線の先で、新しい家族――シャルロットが借り猫のように小さくなって俺の背中の後ろにいた。
昨日から『食事処〜坂本〜』で一緒に働く事になった女の子だ。
「あぁ…店の一角に寝かせる訳にも流石にいかんだろ…?屋根裏に空間があるからそこに部屋を作ってくれねぇか?…突然の依頼で
すまんが…頼むよ」
俺がそう言うとマートンは値踏みするような目を彼女に向けた。
「おいおい…坂本よぉ。この街じゃ身寄りのねぇガキなんて珍しくもねぇよ。奴隷に売られるか餓死で野垂れ死ぬのが関の山だ。そんなガキにぃ?わざわざ部屋を与えようってのか…?ふっ…理解出来ねぇな。」
この世界は残酷で…そして冷酷だ。
マートンの言葉はこの世界では「当たり前」の事だった。
背中の後ろにいるシャルロットが、ビクリと震わせる。
「こいつも、色々あってな…俺はただ助けてやりてぇだけなんだ」
俺はマートンの目を真っ向から見据えた。
「こいつはうちの新しい家族なんだ。自分の部屋で寝かせ、きちんと1日3食食わせる。
(少し面倒くさい…)頑固親父のお前にそんな半端な覚悟で依頼はしてねぇよ」
沈黙。
そしてマートンは「フンッ」と鼻を鳴らし豪快に笑った。
「ガハハ!言うじゃねぇかよぉ!Mr.坂本!
良いぜ、そのお前のちっぽけな覚悟、俺らが形にしてやるよ!野郎共、道具もってこい!」
マートンが怒鳴ると店の前に待機していた弟子たちが慌てながら準備をしだした。
そこからは魔法などを一切使わない「本物の職人技」の応酬だった。
カンナで木を削る鋭い音。金槌が杭を打ち込む重低音。
シャルロットは「じぶんのために…」と申し訳なさそうにしつつも、落ちた釘を拾ったりカンナで削った時に出た木くずを掃除したりと健気に手伝いをしていた。
「よし、シャルロット。俺達も準備するぞ!」
俺達は厨房へと向かった。
マートン達が時間を、そして命を削って仕事をしてくれている。
俺達に返せるのは1つだけだ。
―――「よっしゃ、これで終わりだ!」
マートンが汗を拭い、声を上げた。
弟子たちはも木くずにまみれ、体内の塩分と体力を使い果たしていた…
「お疲れ様!俺らが出来る事をさせてもらったよ。カウンターに座りな」
俺がそう声をかけると同時に厨房で最後の仕上げに入った。
―――ぱん!ぱん!ぱん!
店内に響くのは手のひらで踊らせる乾いた音だ。
絶妙な比率で合わしたオリジナルの合い挽き肉に、俺が細かく刻み飴色になるまでじっくり炒めたあま~い玉ねぎ、それに繋ぎのパン粉などを加え一気に練り上げる。余分な空気が抜けたその肉塊は楕円形に変形していく。
その中心を親指でぐっとへこませた。
アツアツの鉄板に肉塊を並べる。
―――ジュワァァァァーーーッ!!
肉の焼けるような音が店内に響き渡る。
同時に大工達が一瞬で言葉を失うほどの焼き付ける脂と甘い玉ねぎの香りが店内に充満した。
強火で肉の表面をしっかりと焼き肉汁の逃げ道を塞ぐ。
ひっくり返し蓋をして蒸し焼きにする。
肉塊の中に閉じ込められたスープが沸騰し肉塊がぷっくりと膨らんだ。
「ガハハ!おいおい、坂本よぉ…何なんだよこの匂いは!?堪らねぇぜぇ!」
マートンがゴクリと喉を鳴らす。
「お、おまたせしました。
特製ハンバーグ定食です。」
シャルロットが直ぐにマートンに持っていく。
「スゥ~…良い匂いだぁ…噂は聞いていたが…本当に美味そうだな!早速頂くぜぇ?」
マートンは卓上のフォークを手に取りハンバーグに突き刺す。
その時だった。
―――プシュッ
「な、何なんだよこれは!?中からスープが溢れてきやがる!」
肉の断面からは閉じ込めた肉汁が溢れ出てくる。マートンはその大きなハンバーグを豪快に口に放り込んだ。
「―――ッ!!うっ…うまい!!」
男の目がカッと見開く。
柔らかい…なのに噛むたびに玉ねぎの甘み、ナツメグのスパイスの爽やかな香りが口内、そして鼻腔を刺激する。
「こっ、これが肉なのか!?信じられねぇよ、すげーうめぇ!」
マートンは物凄い勢いで特製ハンバーグ、ツヤツヤの白米、そしてお揚げの入った味噌汁を平らげていく…
エネルギーと言う矢が、1日中働いた大工たちの肉体に突き刺さったのである。
「ふぅ…」
定食を綺麗に平らげたマートンは長い息を吐き、俺の顔を見た。
「想像以上だなぁMr.坂本!お前が普通の料理人じゃねぇ事は聞いていたんだがな!」
マートンが豪快に笑いながら俺の肩を叩く。
だが俺は首を横に振った。
「確かに米と味噌汁は俺が作ったが、ハンバーグを作ったのは俺じゃねぇ。」
「あ…?何言ってんだ?お前が作ってなきゃ誰が作れるんだよ、こんなうめぇの。」
俺は一歩下がりカウンターの奥で小さくなっている少女の肩にそっと手を置いた。
「お前が食ったその1番大きなハンバーグ、肉をしっかりと完璧な状態になるまで仕上げたのは…このシャルロットだ。」
「………なっ!?」
マートンが目を見開く。弟子達も一斉に彼女に視線を向けた。
「おいガキ…お前がやったのか…?」
「は…はい。坂本さんに教えてもらいながら…その…お礼がしたくて…一生懸命…こねました。」
シャルロットは顔を真っ赤にしながら小さい手をギュッと握りしめている。
マートンは呆然とその光景を見つめ、それからふっ…と格好を崩した。
丸太のような剛腕を伸ばしグシャグシャッとシャルロットの頭を撫でた。
「ハハッ!そうか…そうかい!
おい、ありがとな!最高に美味かったぜ!
Miss.シャルロット!!」
「…っ、はい!ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします。」
シャルロットは満面の笑みで頭を下げた。
そしてマートン達は満足そうに夜の街へと帰っていったのだった…
読んでくださりありがとうございました。
シャルロットの成長が著しくとても可愛らしく個人的に気に入ってます。
話は変わりますが、私はひらがなってとても文章を書くのに大切だなぁと思うときがあります。
実はシャルロットの成長もこっそりと、ひらがなと漢字で自分なりに表現してみましたので気になる方もしいたら見てみて下さいね!
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それではまた次の営業でお会いしましょう……




