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坂本さんの異世界飯処  作者: とま坊


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【第19話】肉屋の悩みと謎の肉・後編

異世界に何故か飛ばさせてしまった料理人「坂本」は腹を空かせたお客に温かい普通のごはんを振る舞うハートフルストーリー…

とある営業前にあの男がやってきた…

【今作は前後編の二部作です】

――翌朝。


店の開店前、俺は角煮を温め直していた。

鍋の中では、昨日じっくり煮込んだ肉が、

煮汁の中でボンボンと温まっている。


「すーはー…。

この匂いを嗅いでいたらやっぱりお腹空いちゃいますね!」


「まだ朝だから駄目だぞー。

昼の営業終わったら食べような!」


「はい!」


俺は角煮の状態を確認し、

煮汁を少し煮詰めて仕上げた。


表面には艶やかな照りがあり、

脂身は透明感を帯びている。

箸で持ち上げると、

崩れてしまいそうなほど柔らかい。


――準備は出来たかな…


本日の定食は、角煮定食。


炊きたての白いご飯に、熱々の角煮。

汁物と小鉢も添えて、いつものように一食分ずつ丁寧に盛り付けていく。


開店してしばらくすると、

店の扉が勢いよく開いた。


「おう、坂本ぉ!

昨日の肉、どうなったよ!?」


ミートだ。


「こんにちは、ミートさん。

丁度いい所にいらっしゃいましたね!」


「おうよ!

昨日から気になって仕方なかったんだよ。

で、あの肉どう料理したんだ?」


「まぁまぁ。まずは食べてみてください。」


「楽しみにさせてくれるじゃねぇか!」


湯気の立つ定食が目の前に運ばれてきた。

ミートは昨日の肉をじっと見つめた。


「何だこれは…見たことねぇな…」


艶やかな茶色の表面から、

甘辛い香りが立ち上っている。

肉屋として毎日のように肉を見ているミートでも、これほど柔らかそうな肉料理は珍しかったのだろう。


ミートはフォークで角煮を刺した。

その瞬間、目を見開く。


「ふおっ!!!」


フォークで刺しただけなのに、

肉の端がほろりと崩れたのだ。


「おいおい…こんなの見たことねぇよ…」


ミートは驚きながら角煮を口へ運んだ。


――そして、一口…


「……っ!!」


しばらく何も言わなかった。

ゆっくりと噛みしめ、

肉の味を確かめている。

やがて、彼の顔に驚きと喜びが広がった。


「こりゃすげぇ…!」


思わず大きな声が出る。


「おいおい…すげぇな!

これって俺が持ってきたあの硬い肉だよな!?」


「そうだ。柔けぇだろぉ?」


「あぁ、でも信じられねぇよ…

こんなやり方によって変わるのかよ!」


ミートはもう一口食べた。

肉の旨味が口いっぱいに広がる…

醤油の香ばしさと砂糖のまろやかな甘みが合わさり、噛むほどに深い味わいが感じられる…

脂身はトロリ…と柔らかく、

赤身は繊維がほどけるように崩れていくのだ。


「柔らかいだけじゃねぇな…

しっかりと肉の味もしやがる…」


ミートは白いご飯をかき込んだ。

甘辛い煮汁と肉の旨味が、実に米とよく合う。


「うめぇ!

こいつはライスが止まらねえな!」


ミートは角煮とご飯を交互に口へ運んだ。

肉屋として長年、肉を扱ってきたからこそ驚きは大きかった…

硬くて売りにくい肉…

客に勧めても調理が難しいと敬遠されてしまう肉。

それが、こんなにも美味しい料理になるなんて…


「坂本よぉ。やっぱりオメェはすげぇな…」


ミートはしみじみと呟いた。


「まぁ、食材が良かったのもあるがな…

俺はその食材を活かしただけだ。」


「そうは言ってもよぉ。

俺にはこんな料理考えつかねぇよ。」


ミートは最後のひと切れを口に運び、

満足そうに頷いた。


「ご馳走さん!いやぁ美味かったぜ!」


「おう、そりゃ良かった。」


「なぁ、坂本よぉ、一つ聞いて良いか?」


「あ?何だ?」


「この肉、他の料理も使えるか?」


坂本は少し考えた…


「そうだな…

調理法をまた考えたらまぁ作れるかも知れねぇな。

だけどな、まずは肉の固さを無くすために今日は角煮にしただけだ。」


「はぁ、なるほどなぁ…」


ミートは腕を組み、深く頷いた。


「よっしゃ!

俺も店でもう少し工夫してみるか。

固いからって売れねぇ肉だと決めつけるのは早かったな!」


その表情には、昨日までの困った様子はなかった。


「坂本、ありがとよ!

おかげで勉強になったぜ!」


ミートは豪快に笑い会計を済ませると店を出ていった。


「良かったですね!坂本さん!」


ミートの背中を見送りながら、シャルロットが言った。


「だな。あの肉は何の肉か分からなかったがまだやってない使い方がありそうだからな

ミートの野郎がどんな風に加工するか

楽しみだ…」


俺は厨房へ戻り、鍋を片付けながら考えた。

この世界には、俺の知らない食材がまだまだある…

見た目が似ていても、性質が違う物…

調理法が分からない為に、

本来の美味しさを知られていない物…

そうした食材に出会うたびに、料理の面白さを改めて感じる。


「さて、明日は何を作ろうかねぇ…」


俺がそう呟くと、シャルロットが笑顔で答えた。


「お魚さんの料理教えてほしいです!」


「そうだな。じゃあアレにするか!」


明日もまた美味い料理を届けようと改めて坂本は思ったのであった…

読んでくださりありがとうございました。

今回は固い肉を調理するなら…と言うことで、

角煮をテーマにして書いてみました。

固い肉は調理方法は難しいですが、肉の旨味もより強いんですよね!

(私は親鳥が好きです)

今作は前後編の二部作です。

前編見てない人は見てね!

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