第36話
「作戦!黒やんを軸に展開。熊後方に虹鳥、左右を俺と赤象で囲む。灰虎はチームの勝利の為に逃げ優先するように。上のあれを利用する魔法はあるよな?」
「任せろ!1発で仕留めてやるから美人お姉さん系の人紹介して」
「一回死ね!黒やんは回避優先、虹鳥は一撃離脱、離脱時の隙は俺とアホでカバーする」
「あ、俺らの攻撃外したらお互いに当たる可能性あるけど大丈夫?」
「お前の攻撃なんぞ見てから回避余裕じゃボケ!あと、俺はお前と違ってお前に当てるような雑魚じゃないわ!」
「はぁ!?ふっざけんな!俺だって全部当てれるわ!」
「ジャマーメインだから地面に向けて撃ってもセーフだからね?頼むから俺と虹鳥のサポート優先してね?」
作戦内容を指示から軽い口論になり、脱線しかけたところを黒猫が諭す。
さっきまでのことがあるからね、ストレスいっぱいなのよ。
喧嘩腰で話しかけるのも許してね?
「チッ・・・まぁいい、結果が全てだ。外すなよ赤象」
「はっ!全部当てて・・・今のノーカン!」
「いいから手を動かせ!こっちは当たったら死ぬ可能性があるんだぞ!」
速攻で外す赤象に対し、黒猫がキレる。
流石にしゃべってて攻撃が疎かになり、その上外したんじゃその気持ちは分かる。
これやっぱり敵の攻撃を受け止めるタンク役必要なんじゃないの?
反省会や役割については後からまた話し合うか。
「使えねぇ・・・アホ!熊の行動パターンをちゃんと見てたか?攻撃も移動も方向転換も全て動かない軸足があるだろ!それをちゃんと狙え!」
「あー・・・把握した!こっからは大丈夫だ!あと俺はアホじゃない!」
「だから手を動かせ!!仕事しろや!!」
黒猫さんや、回避に手一杯で大変そうですね。
俺が攻撃する度にちょっかいを掛けて自分にタゲを向ける大変な作業中に遊んでるのがいるもんな。
俺もこれ以上遊んでると怒られるからね、真面目にやるか。
今回はジャマーメイン、熊の行動を妨害するのが仕事だ。
火力は必要ないし特殊弾を使わなくても充分仕事出来るから安めの弾のみ使用だ。
狙うべき場所はアホにも伝えた軸足のみ。
噛み付き以外の攻撃は全て4本足で立たない状態で繰り出す。
残ってる足に攻撃すればバランスを崩し、攻撃が中断されるって寸法だ。
噛み付きは範囲が狭いから黒猫個人で対応してもらう。
全部を防ぐのは無理だからな、そこは諦めてくれ。
全員でまともに戦闘を始めてから5分が経過した。
虹鳥が叫びながら攻撃し、盛大に空振り。
俺の射線を完全に防いでた為、フォローが若干遅れ、熊の裏拳を食らった。
「生きてる!?」
「ぎりセーフ・・・おおっ!ミリ耐えだすげー。サブに斧士入れてなければ死んでたな」
「あ、お前サブ追加したんだってか早く回復しろ」
知らない間に虹鳥がサブに職業を追加していたらしく、HPがぎりぎり残った。
多分だけど、筋力上げて大剣を扱えるようにしたかったんだろうな・・・。
てか、いつの間にそれを他のメンバーに伝え・・・俺が飯食ってる間か。
「ポーション持ってないです」
「は?」
「買う金がない」
「死ね。つーか俺が殺す」
「やめて!?」
「攻撃に参加しないで大人しくしてろや!もしくは灰虎に恵んでもらえ」
「あ、俺も持ってないから無理」
「赤象!」
「ないでーす」
「黒やんは・・・無理か。赤象はしばらく任せて大丈夫?それともあいつ放置する?」
「放置で」
「了解。死んだら自分の準備不足を呪え」
「薄情者!死んだら呪ってやる!」
「てめーら遊んでんじゃねーよ!こっちは大変なんだぞふざけんな!」
黒猫が再びキレる。
一人でほぼ全ての攻撃を対処してるからな、大変だろう。
俺もさっきまで一人で対処してたからな?
仲間の援護もなく、勝ち筋もない状態だったからな?
別にさっきの復讐するためにわざと遊んでる訳じゃないからね?
「そろそろパなす?」
「あー・・・灰虎さんや、いけそう?」
「初めてやる訳だからわからん。いけるんじゃない?」
「黒やんきつそうだし今回勝つ必要ないしパなそう」
「っしゃ!上にあるのを集めるのにちょい時間かかる。集め終わったらすぐ逃げてね」
「うい。黒やん!攻撃に移るから離脱準備しておいて!」
「了解!ちゃんと倒せよ!」
「それ俺に言わないで」
「おい!」
小声で言ったことを黒猫に突っ込まれた。
思ってた以上に余裕があるな・・・。
これならもうちょっと追い込んでからでもよかったか?
まぁいいや。
今回の戦いはこれで終わりだ。
後ろで灰虎の詠唱が始まった。
本来しなくていい詠唱を行うと、MP節約だったり威力の向上だったりと利点がある。
俺は恥ずかしいから絶対にやらない派だけど、やる人はやる。
厨二病なのか効率重視なのかで対応が変わるな。
上空にて自己増殖していた俺の【親火】で作った怪火。
空を覆い尽くすほどに増えていたそれらが灰虎の手元にある光の玉に集まっていく。
ゆっくりと、確実に集め、光の玉が少しずつ大きくなる。
これなら問題なく勝てると、少しだけ油断した。
俺を含め、全員が移動する怪火を見ていたのが問題だった。
熊が灰虎の方を見てることに気付くのが遅れた。
その結果、熊包囲網が解けてしまった。
「っ!やべぇ!抑えろ!」
一番近くにいた黒猫の声でようやく気付く。
熊は俺の方に、より正確に言えば俺の後ろにいる灰虎に向かって走り出していた。
死ぬのを覚悟して特攻?
いや、俺のステータスじゃ時間稼ぎも無理だ。
攻撃・・・ダメだ、安めの弾しかリロードしてないし他の弾を準備する時間がない。
それにMPが切れてるのも問題だ。
回復をケチったのがここで響くとは・・・最悪だな。
今灰虎を動かすことも魔法を中断させることも出来ない。
考えてる時間がもったいない。
俺が時間を稼いで他のメンバーが追いつくことを期待しよう。
「灰虎を守れば勝ちだ!後は頼んだ!」
俺は叫んで熊へと走った。
前半で何度も攻撃を避けたからな、攻撃が届く距離は理解してる。
避けれるかどうかは分からないけど、俺に攻撃すればその分止まるはずだ。
確実に俺に攻撃するように、進行方向に対して攻撃しなけれ━━━
「【アローレイン】」
赤象がスキル名を唱えるとともに、上に向かって矢を放つ。
確か面攻撃が出来るスキルだったはず。
フォローありがt・・・上に向かって矢を放つ?
俺が嫌な予感がしたと同時に上空にあった【親火】に矢が当たる。
攻撃魔法だ、何かに当たれば効果が発動する。
【親火】は爆発属性を持った怪火であり、連鎖爆発する。
何が起きたかは誰にだって理解出来る。
そう、大爆発だ。
敵味方関係なく、全員が吹っ飛ばされた。
ここでフレンドリーファイアの仕様を確認しよう。
味方からの攻撃のことであり、FFと略されることが多い。
このゲームでは、ダメージは受けないが衝撃や痛みは受ける。
つまりは、キャラクターのHPは減らないだけで、状況は少なからず悪化する。
咄嗟にだけど腕で頭をかばった為、他のメンバーよりも早く復帰出来た。
俺の魔法だからな、他の誰よりも性質を理解していた。
だからこそ、取れた行動だな。
「っつー・・・身体中痛いな・・・熊は・・・あー・・・うん」
身体を起こしつつ、状況確認する。
俺を含め全員吹っ飛んでいたけど、全員無事だ。
熊を含め、全員が無事だ。
俺達プレイヤーはFF扱いになり、ダメージを受けない。
【親火】は1つ1つのダメージが小さい。
それを相手の周りに大量に展開し、小さいダメージの蓄積で倒すのが本来の使い方だ。
そこそこの距離があったこと、爆発自体にはほとんど当たってなかったことが原因だろう。
普通に立ち上がり、こちらを警戒している。
「これは・・・無理だな。うん、撤退安定だろ」
全員HPは問題ない。
虹鳥が死にかけのHPのまま放置されてるけど問題ない。
MPに関しては俺と灰虎の二人が確定で枯渇。
確認してないけど、灰虎がMPを残すような魔法を使うはずがない。
そして、精神状態。
俺は前半でかなり疲労していて集中力は確実に落ちてる。
多分黒猫も同じ状態だろう。
終わりが見えた所でもう一回初めからは辛い。
ここまで状況が悪いのが分かっている以上は撤退しかない。
「戦闘継続は不可能だと思いまーす。俺は勝手に撤退するけど残りたい人は頑張ってくださーい」
「・・・俺も帰るわ。疲れた」
俺の言葉に黒猫が賛同する。
声からしてもかなり疲れてるのが分かる。
文句はアホに言ってね?
「撤退って出来るの?俺MP無いから何も出来ないし撤退したい」
「メニューに諦めるボタンがあるからそれ押せばここから出られるよ」
「へー・・・ほんとだ。なんで知ってるの?」
「・・・最初に説明あっただろ。ちゃんと聞いてた?」
「話が長かったから聞いてない」
「知ってた。さて・・・おいこら赤象!お前は責任取って死に戻りしろ!」
「えっ!?」
「あぁ・・・それいいな。お前普通に戻ってきたらキレるからな?」
黒猫さんや、めっちゃ声怖いんですけど。
あれだけ頑張ってたのに全てを無駄にされたら怒る気持ちは分かる。
けど、怖いからやめて。
「じゃあ、戦犯の赤象は死んでもらうとしてー・・・虹鳥はどうする?」
「俺も撤退するわ。このギブアップボタンでいいんだよな?」
「それでいいぞ。んじゃ、この後は喫茶店で反省会だな」
「クランホームじゃないの?」
「椅子もソファも座布団もないんだよ?」
「喫茶店でオナシャス」
「じゃ、赤象。死ね」
それぞれが思い思いに文句を言いつつ、ギブアップしていく。
一応ノ―ダメは継続してるけどさ・・・なんか・・・うん、嬉しくない。
とりあえず、反省会終わるまでは赤象に冷たく当たろう。
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