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第35話

冒険者ギルドにて行われる試験。

設定上は強い魔物が徘徊している場所への移動が可能かどうかを試す為。

ゲーム的に言えばフィールドボス的な扱い。

こいつを倒さなければ次の街へは移動できない。

一応抜け道的なのはあるけどね。

商人レベルを上げて護衛を付けるのが一番有名な抜け道だ。

お金が必要なのと護衛のレベル次第じゃ死ぬ可能性があるのがデメリットかな?

まぁ、自由に探索したければレベルを上げて実力を示すのが早い。


この試験は全ての街に存在し、合格すれば次の街への地図が手に入る。

試験の内容は街によって異なり、色々なテーマが存在する。

例えば、今俺達が受けようとしている試験は『強大な力を持った個』への対処力を試す試験。

ゲーム的に言えば高レベル単体ボス。

取り巻きが存在しないため、しっかりと敵の動きを見れば対処可能なはずだ。

普通だったらな?


「ふっざけんな!なんでこっちに来るんだよ!」


そう、普通じゃないんだ。

俺が今までノ―ダメだったのが気に食わないこいつらは俺にダメージが入るように敵を誘導している。

それだけじゃない、まったく隠す気のない誤射が飛んでくる。

ダメージ無くても誤射されたら痛いんだけど仕返しはありかな?


「あっぶねっ!HP!減ってない!セーフ・・・なんでお前ら舌打ちしてんだよ!」


「早く死ね!」


「そうだそうだ!」


「俺らが味わった痛みを知れ!」


俺の怒りの声に対し、上から虹鳥、赤象、灰虎の順で返事が返ってくる。

おかしくない?

ノ―ダメが気に食わないからダメージ食らえって言ってたのに死ねまで来たよ?

誰が好き好んで痛覚倍になるデスペナを貰うんだよ。

あと、灰虎さんよ。

お前の魔法での誤射はかなり痛かったぞ?

それを棚に上げて文句を言うのか?

納得できないんだけど?


「ガチでいい加減にしろや!これ勝たないと次の街行けないんだぞ!」


「今回勝たなくても問題ないだろ!」


「そうだそうだ!」


「俺らが味わった痛みを知れ!」


先ほどと全く同じ順番での返答。

後ろ二人はまったく考えずに反射で答えてるよね?

さっきと同じこと言ってるよ?


因みに、俺がノ―ダメを貫けているのは先読みでの回避なんかじゃなく、背を向けての全力疾走してるからだ。

試練の間と呼ばれる、半径100mの真円型闘技場の外周を延々と全力疾走だ。

この試練の間は神が用意したと言われる超古代道具を用いているとかなんとか。

神様・・・いや、運営よ。

めっちゃ走りやすい地面だと少しだけ感謝しよう。

ありがとう、無理だとわかってるけど助けて。


「埒が明かない・・・策を練らねば・・・っおおぁ!HP!セーフ」


「チッ」


「これ以上ぎりぎりを狙うとこっちに来るから厳しいな」


「俺の魔法じゃ余裕で熊に当たるからなぁ・・・」


熊・・・今回の試験で倒さなきゃいけない『強大な力を持った個』の攻撃が当たる少し前に赤象からの攻撃が飛んできた。

構えたのが視界の端でぎりぎり見えたから避けれたけど、その隙を熊に狙われた。

この攻撃はさっきから何度か行われている。

最初の方は抗議していたが、


「え?熊の攻撃が来そうだったから援護射撃しただけだよ?ちょっと距離が離れてるからずれただけだって」


と、100%嘘だとわかる言い訳をされた。

お前それ信じてもらえると思ってるの?


ダメだ、あいつらへの不満を考えてる場合じゃない。

打開策を考えなきゃいけない。

まずは状況の整理だ。


ここは試練の間、半径100mの真円型闘技場であり、遮蔽物は一切存在しない。

敵味方問わず、増援が来ることはない。

アホ共は俺と正反対の位置にいて、合流するには熊を振り切る必要がある。

あと、アホ共は俺からも逃げてるから距離が縮まらない。

敵は熊型のモンスターであり、パワータイプだ。

【魔物鑑定】を行った結果も再確認だ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:パワーベアー

種類:熊型魔物

適正レベル:15

素材:毛皮、毛、牙、肉、魔石


開発者メモ:

試練用モンスター。

スピードを落とし、パワーを上げたタイプ。

上司に怒られない範囲で火力を底上げしたぜ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


底上げしたぜ★に凄いイラってしたけど、ただのメモだからしかたない。

しかも今はそんなこt━━━


「だああああああああああ!HPは?セーフ!まだノ―ダメだ!」


うん、予想通り集中を切らした瞬間に狙われたね。

攻撃モーションが分かりやすいからぎりぎりで避けれてる。

別にノ―ダメに拘ってるつもりはないけど、ここでダメージを食らうのは嫌だ。

なんであいつらが喜ぶようなことを態々しなきゃいけないんだ。

意地でもなんとかしてやる。


「奥の手はあるっ!つあぁっ・・・セーフ!セーフ!」


スタミナと集中力の切れが見えてきた。

実力でなんとかしたかったけど、やっぱり無理だ。

卑怯な手だけどなんとかするしかない。

俺はアホ共に向かって叫ぶ。


「勝ち負け問わず、この戦いが終わったらクラン抜けてお前らブラックリストに突っ込むから覚悟しとけよ!!」


アホ共が驚いてる。

なんでここまでして許されると思ってるのかが分からない。

俺一人じゃ対処できない以上、アホ共に無理矢理協力させる。

その為なら多少友情にヒビが入っても・・・いや、この時点で入ってるか。

仲のいい友達だから最終的には許すけど、普通はいじめレベルだからな?


「あと!リアルで女子に今回の事言って彼女作れる可能性下げるからな!童貞のまま死ね!」


他のメンバーよりも女子との接点が多い俺だからこそ使える手。

ゲーム内の出来事をリアルに持ち込むのは思うことがあるけど今はどうでもいい。

現状を打破出来るなら後からくるお小言くらい我慢しよう。


「最後に黒やん!てめー何俺は関係ありませんみたいな顔して逃げてんだ!助けない時点で同罪だぞ!」


ここまで一切名前が出てこなかった黒猫。

実は俺やアホ共とも違う場所で我関せずって顔して逃げてた。

俺を助けない代わりに、追い詰めることもしてない。

けどな?

助けないってのは見捨てるってことだ。

助けないってのは見殺しにするってことだ。

何もしないから中立?

何もしないってのは中立なんかじゃない。

押されてる方を見殺しにする加害者側だ。

被害者は助けてくれなかった存在も恨む。

黒猫よ、お前も同罪だ。

早く助けろ。


「チッ・・・ダメk・・・お?」


赤象が構えた為、回避の準備をした時だ。

アホの攻撃が俺じゃなくて熊に当たった。

勝ったわ。

これで俺が襲われずに済む。

少し休憩したい・・・。


「っし!予想通りあっちに行った・・・様子見しながら休憩だ」


「・・・白やん。護衛するから許して」


「・・・・・・・・・・・・」


「許して。俺だって彼女欲しい」


「・・・・・・今度なんか奢れよ」


「コンビニでいい?」


「いいよ」


「あざっす」


黒猫を仲間にした。

これで俺の安全は確保したも同然だな。

・・・なんでこんな無駄に疲れることしてるんだろう。


「ふぅ・・・茶番は抜きにして、熊相手はどう?勝てそう?」


「スピードはないって言っていいレベル。サブに魔法使いが入ってる俺ですら逃げれた」


「あー・・・確かに。鑑定でもスピード落としてるって書いてあったな」


「あと、パワー型特有の攻撃前モーションが大きい。被弾時のダメージは分からないけどよく見れば対応可能」


「その割には全力疾走だったな」


「パンチとタックルと噛み付きは余裕なんだよ。あいつ全力疾走からの飛びかかりがやばい。他の攻撃と違って移動しながらの攻撃だし、地味にホーミングする」


「どれくらい?」


「45度くらい?ただ、あれを常に行うのかはわからん。一定以上離れてるとか一定以上のスピードで走った場合とかの条件がありそう」


「条件付きか・・・ありそうだな。回避優先での戦闘か?」


「かねぇ・・・一応準備しておくか。【親火】」


魔法を唱え、怪火を出す。

自己増殖型の魔法であり、連鎖型の魔法だ。

戦闘で邪魔にならないように上空に待機させる。


「おー・・・これで一気に減らす算段?」


「灰虎がなんかこっちを見てるな・・・あー・・・ちゃんと利用出来るの作ってるっぽいな。これ完全に時間稼ぎ優先だな。超ロマン砲が炸裂するぞ」


「俺らも地味に危なそうだな」


「それな・・・っと。合流するか。あ、一応言っておくけど、俺MP切れたから」


「は?え?それそんなMP食うの?」


「うん。今のMP量でぎりぎり発動できるってレベル。自己増殖型はやばいくらい燃費悪いからな」


「うへー・・・俺も作ろうかなって思ってたけど考え直そうかな・・・」


「作るだけ作ってみたら?そこまで手間じゃないし・・・あ、あれ危ないな」


「ん?あっ・・・走るぞ!」


「もう走りたくない・・・くそがっ!」


掲示板で手に入るレベルの情報のみを入手した前半戦が終了。

いやまぁ、前半戦戦ってたのは俺一人なんだけどね?

ようやくまともな戦闘が始まるよ・・・。




次の更新予定日は 11/09 0:00です

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