第33話
「さて、付き合いが長いこと、他ゲームで連携して対戦をしていたことを考えるに充分な基礎は出来ていると思う。ただ、VRゲームにおいての連携は出来ていないね」
「VRにおいての連携?」
「そう、VRではある意味でなんでも出来る。だからこそ、魔法使いが前衛をやっても問題ないんだ。それこそ、狐火で敵を囲んで逃げれなくしてから攻撃するとかね。VR以外だとハメ技と呼ばれ修正されたりするけど、ここじゃそんなの関係ない。バグ以外は何を利用したっていいんだよ」
「零さんが今まで利用した中で一番やばそうなのってなんですか?」
「インベントリにどんな物でも入るって時代に大量の海水を入れてボスを水責めしたかな?土魔法で壁作って水で生き埋めにしてボスを倒すなんてVR以外じゃ無理だからね」
「他にも、巨大NPC国家と戦争することになった時はやばかったね。同調する周辺国家を潰したり街中に侵入して食糧庫を壊して兵糧攻めをしたね。まともにやって勝てないなら策を講じればいいってことでやりたい放題やったさ」
「ああ、思い出深いもので運営との戦いもあったね。どこまでやったら共闘ペナルティが発生するか実験だって言ってさ、戦闘に巻き込まれないように落とし穴掘ったり重要施設を破壊したりね。最終的には修正されたけど、当時は攻撃さえしなければ標的にならない、つまりは共闘扱いにならないからって戦闘中に生産職が作ったものを受け取ったりしてたよ」
思ってた以上にやばい。
これは確かにVRでしか取れない戦法だけどさ・・・ここまでやるか?
普通に考えたら・・・やるね。
俺もこの段差くらい登れよとかどう見ても弱点あるのになんで攻撃しないのとか思ったりするからな。
やれるならやってみたくなるのが人間だ。
「さて、ここまで言えば分かるかな?VRにおける連携とは何か」
「極論を言えば一人が狼を羽交い締めにしてもう一人が殴ってもいい」
「正解。VRで戦う為の連携は出来てる、ここから先に求められるのは勝つ為の連携。ルールの裏をどれだけ突いて、安全に素早く、そして確実に勝つかって考える必要がある」
「フルダイブ型のVRゲームを舐めてた・・・なんでもありなのは分かってたけど分かってなかった」
「だな・・・けど、早めに分かったのはよかった。アホ共にも・・・いや、アホ共は元から自由に暴れてたか」
「・・・否定できない」
「こと戦闘に関して言えば、それが正解なんだけどね。PVPはまぁ・・・うん。多少違うものがあるけど、モンスター相手なら周りに迷惑をかけなければどんな手法を使っても許されるんだよ。さっきの戦いで言えば、狼を斬るんじゃなくて蹴ったり殴ったり、別の狼に投げつけたりね」
「敵を敵に投げるか・・・あー・・・他ゲーだと出来ないのが多いからなぁ・・・その発想は出てこなかった」
「VRならではって所があるからね、しかたないよ。ここから先はそのならではを利用しなきゃいけない、そうするとボタン押してモーション見るだけの連携じゃあ対応出来なくなるんだ。突然味方が変な方向に攻撃したと思ったら崖が崩れたりとかね、どうやって対応しろって話だよ」
・・・あ、それやばい。
うちには火力特化のロマン砲がいる。
周りが壊れる地形だった場合は確実に前衛に被害が出る。
その場合の対処方法を考えておかないとな・・・。
「まぁ、長々と話したけど、連携はきちんと出来ているしお互いの実力を把握し、的確な指示も出てた。ただ、VRでの理不尽で理解出来ない自由な行動をまったくしないのはこの先詰むから危ないよってだけさ」
「勝てば官軍負ければ・・・なんだっけ?」
「賊軍。勝った方が正義扱いになるだっけ?」
「確かそんなん。バグやチートを使わなきゃ何してもいいか・・・やっべテンション上がってきた」
「わかる。アホ共の暴走を制御出来れば絶対面白くなるよな」
「初見殺しを用意しなきゃ」
「初見殺しは対人用・・・つまりはPVP用になるね。対モンスター用なら確実にハメ殺せるようなのを考えるべきだよ」
「地形を利用する?いや・・・地形に左右される策に頼るのはダメだろ」
「いやでも地形を利用するのが一番簡単だし安定策だと思うぞ」
「基本系をいくつか用意して━━━」
その後、2時間くらいだろうか。
延々と卑怯で姑息な策を考えつつ、実際に運用してみた。
合間合間に零さんからのアドバイスやお手本があり、結構いいレベルに仕上がったと思う。
仕上がった策や技は途中で、零さんに評価してもらった。
MP回復ポーションが必要だけど、俺の必殺技はかなり評価されたのが一番嬉しかったかな?
見た目のインパクトに使い勝手、性能その他全てが面白く、素晴らしい我が必殺技、感無量だ。
「そろそろ時間的に終わりかな?」
「いやー・・・VR舐めてたね。ここまで自由に戦えるとは思ってなかった」
「白やんのそれは卑怯ってレベルじゃないだろ」
「ちゃんとデメリットもありますー」
「あれはメリットだろ・・・あー俺も何か似たようなの作ろうかな・・・」
「ふふっ、白狐さんの必殺技は面白かったね。俺も魔法使いをサブに入れてたら似たようなのを作ろうと思ったほどだ」
「そう言えば零さんのサブって何ですか?あ、答えれないなら大丈夫です」
「いや、問題ないよ。俺のサブは槍士、剣士よりも器用さや敏捷に補正が入っていると言われてる奴だよ」
「何だっけ・・・剣士は全体的に少しの補正で槍士が器用と敏捷、斧士が筋力と耐久だっけ?」
「マスクデータだから詳しくは分からんけど確かそれで合ってるはず」
「それで合ってるけど、どうだろうねぇ・・・。確かに違いは分かるけどサブだからそこまで差が出ないんだよね。まぁ、銃使いだけど前衛で回避盾をやっている以上は、敏捷が上がって回避しやすくなるのはありがたいね」
中・後衛の銃使いで前衛か・・・俺には無理だな。
まず言ってて悲しくなるけど身体能力が低い。
魔法使いから変えれば問題なくなるだろうけど、自分らしさが無くなるのはいやだ。
次に尻尾の当たり判定が問題だ。
当然の如く、尻尾も身体の一部判定を受ける為、敵の攻撃が当たればダメージになる。
当たり判定のでかいのが回避盾は厳しいからな・・・。
「回避銃使いか・・・かっこいいけど、俺には無理だな」
「まず尻尾を外す所からだな」
「リセマラ不可避とか絶望しかない」
「マラソンまでは必要ないだろ」
「この美しい尻尾を捨てるなんてとんでもない」
「たまに視界の端で揺れててうざい」
「それ狙ってやってるから」
「アピールうぜぇ」
ピコンッ
黒猫と戯れながら休憩していると、メールが1通届く。
差出人を見て、そっと無視することを決定。
「メール来た?」
「いや?俺は何も見てない」
「白やん一応見てやれよ・・・。クラン作る準備出来たってさ」
「あー・・・真面目な内容なのか。一応終わったし合流可能って返しておいて」
「ん?クランをまた作るのかい?あんな凄いのがあるのに?」
「あー・・・えー・・・元々は俺達5人でクランを作る予定だったんですよ。それより先に別の人に作りませんか?って言われて作ったのが愛好会なんです」
「獣愛好会と亜人同好会が融合して今の名前になりました」
「あの変な名前はそんな由来があったのか・・・っと、すまない。バカにしてる訳じゃないんだ」
「大丈夫です。こっちも変な名前だってのは分かってますから。バカしかいない以上クラン名もちょっと遊ぼうって意見が出てるレベルですし。それに規模が大きい分寄生目的で来る人が出てくるんですよ。それへの牽制も兼ねてますから」
「ああ、その名前の所には入り辛いね・・・。規模だけ見れば凄い羨ましいけど」
「うちのクランへの入団試験・・・団?まぁ、試験ですけど、かなりレベル高いですからね。愛を語れとかド素人の寄生目的の人には無理ですし」
獣組は色んな所でうちの子が一番だって言い合ってるからね、知らない人から見たらギスギスしてる。
本気の喧嘩ではなく、愛を語り合っていると分かる人じゃないと居辛いだけだろう。
だから、試験と言うよりも、語り合う空気に耐えれるかどうかを試してる。
「愛を語る?」
「あなたは獣派ですか?亜人派ですか?から始まって何が好きかどこが好きかを語ってもらう」
「・・・・・・普通の人には厳しくないかい?」
「エルフについて語ると言ってエルフ特有の小さい胸とダークエルフの大きい胸について語った一般人がいますよ」
「それただの胸好きでしょ・・・」
「種族的なうんぬんを考察に入れていたので合格ですけどね」
「・・・なるほど。やはりそっちの世界は理解できそうにないな」
「簡単に理解されるような世界なら肩身の狭い思いなんてしてませんから・・・」
「辛そうだね・・・。こっちもゲームで稼いでるって言うと変な眼で見られるから少しはわかるよ。今の時代でもそんな古風な考えを持ってる人がいることにも驚きなんだけどね」
「まだそんな古い人いるんですか?絶滅したと思ってましたよ」
「これが結構いるんだよ。しかも、エリートに多い。あれだろうね、自分達は優れた人間だと思ってこっちを見下してるんだろうね」
「流れぶった切って悪いけど、あいつらが合流したいってさ。どうする?」
「俺は問題ないけど、零さんはどうします?」
「特にこれと言った用事はないからね、解散でいいよ」
「なら合流するって返事するね」
「お願いー・・・あっ!零さん」
「ん?」
「フレに呼ばれたので抜けますね」
サムズアップしての決め顔で言う。
ネトゲをやってる人間なら一度は聞いたことあるであろうセリフ・・・セリフ?
いやまぁ、うん。
そのままの意味で取られることはほぼ無いんだよな。
「ぷっ、くくくっ・・・久しぶりに聞いたなぁ・・・VRだとあんまり野良でやらないから死語に近いからね」
「いやぁ・・・いっつも固定メンバーでやってるんで一度は言ってみたかったんですよ」
「分からなくはないね。こう・・・意味は特にないけど人生で一度は言ってみたいセリフとかあるし」
「この前黒やんが猫を愛でてる所に、お兄ちゃんどいて、そいつ殺せないっ・・・をやりました」
「おっ?懐かしいを通り越して古いセリフだねぇ~・・・いや~でも、それも言ってみたいね」
「実際に殺そうとしたら返り討ちにするけどな。門に集合だってさ」
「了解っと・・・零さんも一緒に戻りますか?」
「そうだね。街まで戻って転移門で帰ろうかな?」
「了解ですっと・・・帰りますか」
他愛もない会話をしつつ、街に戻る。
道中は全員が過剰レベルの為、特に苦戦することもなく会話しながらの戦闘のみだった。
まぁ、会話内容は零さんが過去にやったゲームでのやばい話だったけどな。
GMコール中は運営とのやり取りだから無敵になる、だから強敵に挑むときはGMコールしてた話とか面白かった。
どんなゲームでも意味の分からないことを発見し、悪用する人はいるんだなって思ったよ。
Q.サービス開始日とか混雑してないの?
A.日本の出勤ラッシュを見れば大抵の混雑はスルーできます
つまりはそう言うことだよ
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