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第30話

「つ、疲れた・・・」


「お疲れ様」


複数相手での訓練を開始してから2時間程経過していた。

VRでの連続戦闘はかなり精神にクるって聞いてたけど、これはやばいな。

最初の狩り場だからって普段はのほほんと狩りをしてたけど、本気で集中しての狩りはここまで違うのか。

職業が中衛向きだからって関係ない、ソロでの狩りは絶対にしたくない。

間違いなく集中が切れて死ぬ。


「本気で長時間の戦闘ってやばいですね・・・ここまでとは思いませんでした」


「ははっ、だろうね。被弾しても大丈夫だと分かってるからこそ、この先を想像したんだろう?」


「はい・・・。さっきまでの集中力を維持して被弾したら死ぬ恐怖に打ち勝って戦闘し続けるとか最前線は嫌です」


「だからこそ、タンクが必須と言われ、役割を明確に分け、型に嵌ったPTが増えたんだけどね。アタッカーにジャマーに回避盾にって何もかもやれる人は本当のトップ勢以外いないからね」


「零さん結構出来てませんでした?」


「んー・・・俺はあれだね、軽戦士での回避盾で1年以上戦ってた実績があるから出来るんだよ。避けるついでに攻撃、避けるのが難しそうなら攻撃って感じで回避優先してるだけだし」


「避けるための攻撃・・・あー・・・そういうことか。普通に攻撃されたら被弾する。だから、普通に攻撃出来ないように邪魔をして回避するのに必要な時間を稼ぐ・・・ジャマーであり、回避盾でもあるのか」


「正解。最前線で回避盾をやり続けたって経験があるからこそ、どの攻撃が避けれて、どの攻撃が避けれないかが分かるんだよ。素人が簡単に真似出来ると思っちゃダメだよ?」


「真似するためにはまず尻尾を外す所から始めなきゃだめですね」


「はははっ、確かにそうだ。外す気は無いんでしょ?」


「当然!」


二人で笑う。

安全地帯での休憩だからな、完全に油断出来る。

ああ、ついでにあの試作品を見せてみよう。

山狩りをしてた時に考え、暇を見つけて作成した弾を。

余談だけど、借りた工房は狭くて辛かったです。


「あ、休憩ついでに一つ見てもらいたいものがあるんですけど、いいですか?」


「お?何かな?」


「この弾・・・一応特殊弾になるんですけど・・・」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:魔力弾

種類:弾(特殊)

説明:被弾すると魔力が回復する特殊な弾薬


開発者メモ:

オリジナルレシピで作られた特殊な弾薬。

システムが認めているため、作ることが可能。

開発者の目に留まればこのメモが変わる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「ふむ・・・魔力が回復する弾か、ありそうでなかったものだね。どれくらい回復するんだい?」


「店売り可能品質よりやや劣るかなと言ったレベルです。が、問題がありまして・・・」


「・・・・・・ああ、弾だからダメージが発生するのか」


「はい。仲間に撃った場合、ダメージが無いけど痛いらしいです」


昨日灰虎に魔力回復させるために数発撃ちこんで実験したからな。

回復量や被弾時の痛みがあることは確認済みだ。


「戦闘中でのMP回復がポーションよりも早いのは明確なメリットだけど、痛みが発生するのは問題だな・・・本当の緊急なら大丈夫だろうが、痛みによる怯みに仲間を、人を撃つことに対する精神的消耗が発生するのは・・・許容出来ない可能性が大きい・・・おしいな。多分これじゃ売れない」


「ですよね・・・。ただ、少し打開策があるんですよ」


「ほう?一応言っておくけど生産系は就いてないからわからないよ?」


「いえ、これを見てください」


そう言って、店売りの弾を出す。

もしかしたら出来るんじゃないかと思って買った秘蔵の弾だ。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:魔樹弾

種類:弾(特殊)

説明:魔力を吸収し、弾から木が生える弾。


開発者メモ:

撃たれたと思ったら木が生えるとかSANチェック

しなきゃいけない・・・。

誰だよこんな弾を思いついたのは!!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



開発者メモが完全なお遊びだけど、この弾の性能はかなりやばい。

魔法型の敵が現れた場合、これを撃てば相手のMPを消費し、行動を阻害する木が生える訳だ。

作成難易度がかなり高く、それに付随して値段もバカみたいに高い。

その値段に相応しい性能を持ってるけど序盤から使うには心と財布が痛むものだ。


「魔樹弾か・・・・・・・・・ん?魔力を吸収して?・・・・・・もしかして」


「そのもしかしてが発生するんじゃないかって思って昨日買って来たんですよ」


「なるほど。確かにこれは打開策であり、面白い」


「俺の記憶が正しければ、外した矢って地面に刺さったままですよね?もしも、もしも弾も同じ仕様なら地面に罠を設置出来るんじゃないかなって」


「ふむ・・・確か弾も残ったはずだ。少し試したいけどいいかい?」


「問題ないです」


「ありがとう。それじゃ、一応安全の為に少し離れていてくれ」


零さんが弾を持って安全地帯から出ていく。

一応付いて行くが、安全地帯からは出ない。

咄嗟の回避とか無理だからな。


「さて、まずは魔樹弾を地面に撃って、残るかの確認だ」


そう言いながら零さんは銃を構え、地面に向かって弾を撃つ。

地面に着弾するも、何も起きない。

地面に魔力が無い以上、何も起きないのは正解だ。


「まずは弾の確認・・・うん、あるね。じゃあ、次は魔力弾を当てるよ」


さっきよりも慎重に構え、正確に魔樹弾が埋まっている場所に撃つ。

金属同士が当たった音がしたと思ったら、小さな木が生えてきた。

実験は成功だけど・・・予想以上に小さいな。

これは魔力弾の品質が悪いからか?

MPの回復量が増えればもっと成長するのか?

うーん・・・これは今度性能評価の実験をしなきゃいけないな。


「木の成長がかなり悪いのはMPの回復量が少ないのが原因かな?まぁ、それを差し置いてもこれは間違いなく有用だね。この設置罠は普通じゃ見分けれないからかなり厄介になるだろうね」


「確実性は無いですけど俺も回復量が原因かなと。あ、もう少し確認したいことがあるんですけどいいですか?」


「ん?なんだい?」


「魔樹弾に魔力弾を当てれる自信が無いんですよ。ぎりぎり当たらない距離に撃ちこんでもらってもいいですか?」

「なるほど・・・確かに弾同士が当たらないと意味がないのであれば難易度が跳ね上がるね。ならもう一度実験だ」


先ほどと同じく銃を構え、地面に弾を撃ちこんでいく。

合計6発渡した内の残り5発をぎりぎり魔樹弾に当たらない位置に撃っていく。

1発目は10cmほど離れた位置に、そこから少しずつ近くの位置に・・・だ。

そして予想通り、嫌な結果で終わる。

1cmくらいの位置に撃ちこまれても魔樹弾は反応しなかった。

回復量が少ないからなんて楽観視していてはだめだな。

当たらないと効果が出ないと考えるべきだ。


「これは難易度が高すぎるね・・・実戦運用するにはかなりのセンスと練習が必要になる」


「俺はそっと諦めましたね。当てる練習するよりも弾を改造します」


「・・・ふふっ、そっちの方が早そうだね」


「ええ、今は火薬の代わりに一部MPポーションの原料になる粉末薬草を入れてるんですよ。別の作り方をして、着弾時に魔力を放出するように改良出来ればいいな・・・と」


「それが本来の改良案に・・・いや、現状は体内に摂取するか独自魔法以外に回復方法はないから着弾地点に散布だと回復出来ない可能性が高いのか。本来の目的にはどうしても到達できない」


「はい、俺も同じ結論になりました。山籠ってる間に考える時間はいっぱいあったので」


「山狩りでしょ?掲示板でも話題になってて面白かったよ。他に方法は無かったの?」


「あるかもしれませんが探す時間よりも稼ぐ時間を優先しました。効率は罠の分母を、人を増やす方向で解決しました」


「人海戦術以上の効率化は難しいからね・・・さて、午前の訓練はこれでお終いかな?」


「まだ聞きたいことはありますけど、脳が持たないですね・・・他のゲームならまだまだ余裕なんですけどVRは予想以上に負担が大きかったです」


「初めてVRをプレイした人は皆そう言うよ。意識しなきゃいけないことがかなり増えて、動かす範囲もかなり増える。軽い気持ちで周回するとか言うと後悔することになるからね」


「いやー・・・これで効率とか考えていかないとダメとか最前線はやばいですね。何年経っても出来そうにないです」


「はっはっはっ、こっちは仕事でお金の為にもやってるからね、やる気が違うんだよ」


「うへー・・・俺は今まで通りのんびり楽しむことにしますよ」


「うんうん、それがいい。純粋に楽しむことがある意味で一番大切なことだからね。さっ、街に戻るよ」


「了解です」


少し休憩時間が長引いたが、午前の訓練はほぼ終了した。

帰り道に復習しながら帰った為、結構疲労感が溜まったけどな。

攻略組トップと一緒に街に帰っている以上特に問題も起こることなく無事に到着した。

ただ、門で俺が目立って少し騒ぎになった。

門番さんが俺を名指しで挨拶してきたため、プレイヤーがざわついた。

が、俺を見た瞬間に全員が納得してた。

ほぼ全員の顔に


「NPCに名前を覚えてもらえるとかどn・・・あれは覚えられて当然だな」


って書いてあったからな・・・。

完全に見間違えることのない目立つ格好ですからね。

隣にいた零さんはかなり笑ってたけどあなたもそこそこ目立ってますからね?


「いや~・・・会ったことないNPCに名指しで挨拶されるとか有名人だね~」


「まぁ?俺よりも目立つ人は今現在存在しませんからね?当然ですよ」


渾身のドヤ顔。

これは決まったな。


「ぷっ、くくく・・・そこでドヤ顔出来るとは将来大物になれるよ。さて、雑談はここまでにして午後は何時集合だい?こっちは・・・そうだね、今が12時過ぎだし13時30分以降なら問題ないよ」


「んー・・・黒やんへの連絡とかもあるんで、きりよく14時でどうですか?多分少し早めにログインするんでそこで連絡取り合ってーって感じで」


「特に問題は無いかな?じゃあ、14時を目安に・・・集合場所はここかな?早めに全員がログインしたらそのまま集合するって流れで」


「問題なしです。では、また午後お願いします」


「うん、また後で」




次の更新予定日は 10/24 0:00です

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