第29話
日付が変わり、今日はお休みの為朝からログイン。
いつも通りになりつつあるクランホームに到着だ。
零さんに連絡をしつつ、昨日の出来事を思い出す・・・。
一言で言えば大変だった。
何が大変だったかと言えば軽い連携練習をすることになったこと。
誤射しても怒らない、死に戻りしても文句を言わないと全員が誓い、無謀としか思えない連携練習を開始した。
まず、虹鳥が突っ込む。
銃使いである俺よりも先に攻撃しようと突っ込む。
せめて射線を空けろよ。
弓と違って曲射が出来ないんだぞ。
この時点で銃使いの俺と弓使いの赤象が怒る。
曲射を使いこなしていない赤象も射線が無いから攻撃出来ないらしい。
弓道ってまっすぐ撃つ以外やらないのかな?
まぁ、危ないから変なのを教えないと思うし曲射なんて出来なくて当然か。
更に虹鳥が攻撃を外す。
かなりの大振りで盛大に攻撃を外す。
フォローの為に追いかけてた黒猫が虹鳥の攻撃を避けるために隙を晒す。
そこに敵である狼さんの攻撃が来て被弾、黒猫がキレる。
そして、止めの灰虎の魔法攻撃。
なんで君は狼3匹に対してMP全消費の範囲爆発攻撃をしたのかな?
このゲームはPKないからダメージは入らないよ、ダメージは。
爆発で起きた衝撃を食らって吹っ飛ばされましたよ?
咄嗟に回避とか普通に無理だったからかなり飛ばされましたよ?
ダメージはないから許されると思ってた?
現実で一回殴らせろ。
その後は当然の如く、言い争い。
最終的には戦犯を決め、全員にご飯を奢ることで許すことになった。
虹鳥にピザ、灰虎に寿司を奢ってもらう。
高校生には厳しい出費だろうが関係ない、誠意を見せろ。
さて、昨日の出来事を思い出している間に零さんから返事があった。
戦闘訓練だから訓練所かな?と、思っていたが、普通に街の外に行くらしい。
持ち物の最終確認をしてからすぐ集合場所の門に移動した。
「おはようございます」
「おはよう。相変わらずかなり目立つからすぐに来た事がわかったよ」
「最前線にいるトッププレイヤー以上に目立ってますからね、驚きですよ」
「まだイベントとかやってないからね、顔は売れてないよ。さて、移動しながら色々と説明しようか」
「お願いします」
俺個人の戦い方についてはある程度事前に伝えてある。
他にもどれくらい強くなりたいかとか、エンジョイ勢であるとか、重要そうなことも伝えた。
尻尾が9本ある人が最強を目指すとかあり得ないからね。
「知っているかもしれないけど、確認の意味も込めて色々と説明するよ?まず、職業による身体能力補正の違いだ」
まずは剣士、槍士、斧士などの近接職。
相手に接近しないと戦えない近接職は、かなり高い補正がかかっている。
具体的に言えば、現実で100mを15秒で走る人がいる。
その人が近接職を選んだ場合、ゲーム内で100mを10秒で走ったらしい。
しかも、息切れもなく、まだまだ余裕を残して・・・だ。
次に補正値が高いのが銃使い、弓使いの中・後衛職だ。
近接職程じゃないが、そこそこの補正がかかっている、
近接職で試してた人が転職し、銃使いで100mを走ったところ、13秒かかったらしい。
ただ、若干の息切れと疲労感があったため、そこまで大きな補正はないと結論が出た。
最後に補正値がマイナスになっている魔法使い。
完全な後衛職で、独自魔法による自由度がかなり高いため、マイナス補正がかかっている。
このマイナス補正はかなり露骨であり、現実よりもゲーム内の方が動けないときた。
お馴染みの人がまたまた100mを走ったところ18秒かかり、息切れが激しく、しばらく動けなかったらしい。
この検証内容は全て掲示板に書き込まれていて、称賛と走りすぎだろwwwのコメントが送られていた。
検証勢ってリアルでも走ったりしなきゃいけないのか?
VRでの検証って思ってた以上に大変なんだな・・・。
「ここまでは何も問題ないよね?」
「はい、サブ職業だと今の補正値がプラスマイナス関係なく半分しか適用されないのも知ってます」
俺のメイン職業は銃使い、よってそこそこのプラス補正がかかっている。
サブ職業は魔法使い、マイナス補正がかかっているが、サブの為補正率が半分になっている。
差し引きぎりぎりプラスになる程度の補正が現在かかっている訳だ。
なお、尻尾による当たり判定の増加やバランス感覚の違いなどで現実以上に身体を動かせないけどな。
「うんうん、仕様把握は必要だからね。そこは大丈夫そうだ。因みに、最終的な自分の補正値は理解してる?」
「ややプラス。ただ、尻尾が原因で最終的には現実よりも動けない、つまりはマイナスになってるかなって」
「間違いなくなってるだろうね。全身鎧着るだけで動けなくなる人とかもいるし、普段以上に動けないって認識を持たないとダメだね」
「初めてステップのスキルを使った時に転んだんで・・・自分の身体能力は把握してますよ」
「現実の差異が大きすぎる弊害かな?変える気はなさそうだし、それで頑張ってもらうしかないね」
「最強を目指してる訳じゃないんで何も問題ないですけどね」
「ふふっ、違いない」
のんびりと会話しながらだったが、ようやく目的地に到着した。
普段よりもやや手前?で街に近いが、猫を攻撃出来ないってことを充分に考慮してくれている場所だ。
猫好きに猫を殺したのがばれたら怖いからね。
別件だけど、家のクラン内にも派閥はある。
魔物だろうと自分の好きな動物を殺せない派、テイム出来ないなら倒すしかないと考える派だ。
全てのヘイトはテイムを実装してない運営に向いてるがな!!
「さて・・・まずはジャマーに必要な考えを教えようかな?と言っても、俺個人の考え方だけどね」
「合わないって感じたら自分で修正してくので大丈夫です」
「なら問題ないね。ジャマーとは、一言で言えば敵の行動を妨害する役のこと。一番求められるのは相手が十全な能力を発揮出来ない状況を作り続けることだね」
「妨害するじゃなくて、し続けるですか?」
「偶に妨害されるのもうざいけど、全ての行動を邪魔されたら相手はどうなるか。答えは簡単、妨害有きの行動になり、常に無駄が発生する。その無駄は連携の不和を招き、PT全体の隙を作ることになる。上位のプレイヤーになると一瞬の妨害程度はリカバリー出来るようになるんだよ」
「うへー・・・ってことは、上位のジャマーは妨害行動がリカバリーされる前提で次の妨害策まで用意してるってことですか?」
「正解!俺の知り合いに三手先まで読んで妨害するスペシャリストがいるんだよ。あれは怖かったね・・・まぁ、彼はこのゲームやってないからいいんだけど」
「三手先か・・・無理ですね。現状はAIレベルの低い狼程度なら多少は読めますけどプレイヤーは確実に無理ですね」
「知り合い曰く『プレイヤーの方が型通りの動きをするから読みやすい。PT戦だと更に読みやすいな。テンプレ通りの役割に従ったPTなど簡単に崩せる』らしい。近接職は近付かせないように立ち回れば近づこうと無理な行動をする。魔法職は詠唱が邪魔されると回避に徹し、隙を窺うことが多い。とか、多少の誤差はあれどほとんど同じ動きをするし、違う動きをするプレイヤーは覚えればいいだけだからね」
なるほど、その考え方はよく理解できる。
TCGをやってると環境デッキのコピーとばかり当たるからな、テンプレを崩す専用のデッキさえ用意すればある程度は簡単に対処出来る。
VRでの対プレイヤー戦でもほとんど同じなんだな。
相手の立場に立って、何をしたいのか、何をしなければいけないのかを考えれば妨害策はある程度いけそうだな。
「やれるかどうかは別として、ジャマーとしてやれそうな気がしてきましたね」
「おや?理解出来るのかい?」
「TCGもやってるので、トップの劣化コピーテンプレ行動は見慣れてるんですよ」
「あー・・・あの世界は環境トップ以外は勝てないからね、ある意味仕方ない部分もあるよ」
「とばっちりで使いたいカードが禁止になるとかエンジョイ勢である俺からしたらいい迷惑なんですけどね・・・」
「はははっ、TCGはやらないけどその恨みの声はよく聞くよ。さて、そろそろ実戦訓練と行こうか」
「了解です」
「まずは、相手の動きをよく観察すること。今から敵の攻撃を全て回避するからどう動くのかを常に予想してくれ。なるべく誤差の無いように・・・そうだな、8割くらいは当てれるようになってくれ」
「対応出来るかどうかは別として、相手の動きを予測する・・・でいいですか?」
「ああ、そこは別問題だし、一人で全て対応出来る必要はないからね」
「なら行けそうです」
「よし、行こうか」
そう言って、零さんが近くにいたウサギに攻撃する。
よく考えればウサギと戦ったことないな・・・。
いつもここよりも奥に行くから狼以外との戦闘経験は0だ。
ウサギの攻撃パターンは体当りと噛み付きの二つ。
どちらも単発攻撃であり、拳の間合いまで接近しなければ当たらない攻撃だ。
狼と違い、連携攻撃も無いため、初心者向けの敵と言える。
なお、ウサギもふもふ派から睨まれるためあまりド派手な狩りはしない方がいいと言われている。
ウサギのデータを思い出している間に零さんは前線に出ていた。
・・・あれ?
零さんも俺と同じく銃使いで中衛だよね?
なんで回避盾と同じレベルで敵の攻撃を避けてるんだ?
しかも、相手の動きを完全に見切って無駄のない回避行動だ。
プ、プロゲーマーってこのレベルのPSを持ってないと出来ないのか・・・。
零さんが戦闘を開始してから5分くらい経っただろうか。
単調な攻撃しかしないウサギの攻撃をほぼ完璧だと言えるレベルで読めるようになった。
1対1で、攻撃が2種類しかなく、外部の邪魔が入らない状況だからね、これくらいは出来なきゃダメだよ。
これ以上は・・・いや、今読めるのは一手だけだ。
それに零さんの動きは読めてない。
一応一言伝えてから続けるか判断してもらうか。
「零さん!ウサギの動きはほぼ完璧ってレベルで読めるようになりました。ただ、零さんの動きや二手先とかはまだ無理です。続けますか?」
「んー・・・俺の動きはなんとなくも無理?」
「なんとなくでいいなら6割くらいは読めます」
「なら終わろうか」
そう言うと零さんは銃を抜き、ウサギの頭を撃ち抜いた。
なんだあの黒くてゴツくてかっこいい銃は。
俺なんてまだ最初に貰った初心者用だぞ・・・。
これが攻略組とエンジョイ勢の差なのか・・・悲しくなるな。
「ん?この銃は殴ったり盾代わりに使えるように頑丈に作ってもらったんだよ」
「・・・え?殴ったり盾に使う?」
「うん。俺は銃使いだけどサブに剣士を入れててね?回避盾として前衛に出てるんだよ」
「えー・・・いや、剣士をサブに入れれば補正はそこそこありますけど・・・」
「まぁ、別のゲームでは回避盾をやってたからね、これくらいの敵なら余裕だよ」
「うへー・・・流石プロ。俺もゲームで金稼ぎたいなぁ・・・」
「正直に言えばお勧めはしないね。スポンサーの意向でやりたくないゲームをやらされたり会社の名前を出したりとか、仕事感満載で楽しめなくなるんだよ。しかも結果を残さなきゃすぐに首になる。楽しんで遊ぶのがゲームだけど仕事にすると楽しめなくなる典型的な仕事だよ」
「あ、絶対に嫌ですねそれ。プロの世界も色々とめんどくさいんですね・・・」
「契約次第って所もあるけどね。まぁ、契約する会社次第で当たりはずれが決まるってのは他の職業でも同じだけどね。」
「働きたくな~い。大人になりたくな~い」
「はっはっはっ、頑張れ青少年。人生とは一生を掛けて楽しめる趣味とあまり苦痛を感じない仕事さえあれば幸せに感じるものさ」
「たかだか16年ちょっとしか生きてない俺にはきついです・・・」
「頑張れとしか言えないね。ま、時間さえあれば相談くらいは受けよう。さて、次は複数匹での訓練だ」
「はぁ・・・一生遊んで暮らしたい・・・了解!切り替えます!」
Q.なんで零さんは掲示板で煽ってたの?
A.次の街へ行くための結界を通り抜ける際に、他のプレイヤーにチート扱いを受け晒されたからです。
プロゲーマーとして、チートを使用している疑惑は信用問題になり、過去の実績全てが無くなる可能性
がありました。
そこで、信用を傷付けられたと怒り、情報公開しないのは晒したプレイヤーに対する仕返しだと公言し
たとのこと。
零さん「運営やスポンサーに怒られることは理解してた。けど、職を失い、訴えられる可能性があった以上、簡単に許すわけにはいかない。値段が安くなったからこそ、マナーの悪いクソ餓鬼が増えた。問題行動を起こす奴らは全て排除すべき」
余談
遊○王やってました。
勝つことよりも再現やノリを優先する中堅エンジョイ勢だったので環境トップとは程遠いです。
EMEmあたりからモチベが下がり、アニメで萎え、新ルールの発表で完全に熱を失いました。
今度昔のルールで友人とワイワイやろうかな・・・。
次の更新予定日は 10/21 0:00です




