第17話
授業が全て終わり、帰る準備を始める。
アホ共を含むやらかした組は今から補習だ。
こっそりと帰ろうとした奴もいるけど、廊下で数学担当がスタンバイしてたので即捕獲。
追加補習が確定とのことで、若干泣いてたのは不謹慎ながら笑ってしまった。
ざまぁ。
少し誤算だったのは、ミッチーからの頼まれ事だ。
なんでも、後輩の女子も買ったらしく、色々教えてほしいと頼まれたらしい。
なぜそれをこっちに投げる?
俺たちはレベル1だぞ?
お前が頼まれたならお前が対応しろよ。
まぁ、今度ご飯を奢ることを約束させ、引き受けた。
なんでもいいって言ったからな、焼き肉でも奢らせるか。
カイ君とのんびり話しながら待っていると、教室に見慣れない顔が訪れる。
多分だけど、ミッチーに頼んだ人物だろう。
二人いることを聞いてないんだけどミッチーの伝え忘れかな?
顔は・・・うん、普通。
体型は・・・うん、微妙。
どちらかと言えば可愛いに分類されると思う・・・が、好みじゃない。
もう一人も似たような感じだな。
もう少し好みの子なら連絡先とか色々・・・なんでもないです。
「あの~・・・」
「ミッチー・・・って伝わんのか?光実にゲームの頼み事した人?」
「あっ、はい!そうです」
「聞いてるかわかんないけど、あいつらは補習。で、代打で俺らが対応することになってる」
「え?補習?アッキーって人とカイ君って人がですか?頭が良いから勉強をよく教えてもらってるって聞いてたんですけど・・・」
・・・ん?
なんで俺らが補習受けてるって判断した?
これもしかしてだけど・・・
「質問。最初に頼んだ時に、誰と誰に教えてもらえるって言われた?」
「アッキーって人とカイ君って人に教えてもらえるって聞きました」
「ミッチーが教えるとは言ってないってこと?」
「え?あっ、はい。自分が教えるよりもわかりやすいって・・・」
最初からこっちに押し付ける気で話してたのが確定した。
無言でカイ君と目を合わせ、お互いに頷く。
お仕置きは確定で、焼き肉・・・いや、しゃぶしゃぶやすき焼きもいいかもな。
とりあえず、簡単に説明するか。
「あー・・・うん。俺が忠明、アッキーって呼ばれてる」
「俺は飛沫、海を連想するってことと似たようなあだ名で呼ばれてた人がいたから差別化を図り、カイ君って呼ばれるようになった。簡単に状況を説明すれば、俺たちはミッチーの代わりに教えると思ってた。実際は最初から押しつける予定だったってこと。ミッチーは後で処刑だな」
「えっ、あっ、そうなんですか・・・?あっ、えっと・・・1年の佐藤茜です。こっちは川内美奈です」
「よ、よろしくお願いしますっ」
「よろしくー。まぁ、俺ら体育会系じゃないしそんな畏まらなくていいよ?」
「そ、その・・・先輩ですから・・・」
「んー・・・まいっか。んじゃ、カイ君説明よろしく」
「・・・お前は?」
「補足説明」
「・・・把握。じゃあ、基本的な部分から説明するね?」
アークライト、VRMMOと呼ばれるゲーム。
既存のMMOとは違う部分が多いが、MMOと言い張っている。
なんでも、言葉の意味は時代と共に移り変わるもの、細かいことを気にするな・・・らしい。
面白ければジャンルが若干違うとかはどうでもいいことだな。
野球ゲームなのに恋愛シミュレーション並みに選択肢が豊富だったりするし、気にしたら負けだ。
このゲームの一番の特徴は、現実に近いと言うこと。
現実ではステータスを見れないからゲームでもステータスは非公開。
現実では、情報は自分で調べるか知り合いから聞かなければ手に入らない。だから運営からの情報公開はほぼなし。
スキルや魔法は現実に存在さえすれば自分勝手にカスタマイズする人が出てくる。だから作成可能。
特定の職業に就いていなくても、趣味でプロを超える人はいる。だから、職業は補正がかかるだけで就いていなくても問題ない。
他にもたくさんあるけど、現実に存在すればこうなるだろうって仮定で作られているものが多い。
冒険者ギルドは許さないけどな。
「さて、ここまでが基本的な部分だ。質問はある?」
「現実に近いってどれくらいですか?」
「魔物斬ったら手に感触が残る」
「「え?」」
女の子二人が驚く。
そこまで現実と同じだと思ってなかったんだろうね。
俺もゲーム始める前までは同じ気持ちだったよ。
銃を撃った反動とか、かなりリアルだったし・・・。
現実で銃を撃ったことないけどね?
「剣士やってるよっしー・・・あー・・・同じゲームやってる友達に聞いたんだけど、実際に斬った感触が残るらしい。だから、敵を殺したってのが心に残るらしい。安くなったこともあって、未成年・・・大学生や高校生が結構始めたらしい。そして、剣を手にとって敵を斬る。それがあまりにもリアルで即引退って人が結構いる・・・ってネットで見た」
「へー・・・俺まだそれ経験してないけど大丈夫かな?」
「わからん・・・が、最悪街に引き籠ればいいだろ。あいつらいるし」
「・・・だな。あいつらは大丈夫っぽいし、生産特化になればいいか」
「俺は銃使いだし、斬った感触はわからない。だから引退確立はカイ君よりも低いかな?多分大丈夫」
「それでもないって言えないのがな・・・。プレイするまでは凄い楽しみだったけど、こう・・・なんかな」
「わかる。そっちの二人は大丈夫?戦闘は思ってる以上に辛いよ?」
軽く二人の方を見ると、若干表情が暗い。
10万払って買ったゲームで、魔物を殺す感触が手に残るなんて言われたら暗くなるのも当然か。
心が弱いと言うと語弊があるけど、弱い人は引退か生産特化、遠距離や支援特化に転向するらしい。
前衛職の割合がかなり少なく、どこのPTでも前衛張れる人が求められてる・・・ってネットに書いてあった。
買って2日目だし、戦闘に出てないから詳細は知らん。
「10万だからなー・・・。まぁ、戦闘は安全マージンとってガチガチに固めれば大丈夫だろうし、生産特化になれば更に安全だな。冒険に拘らなければそこまで悲観しなくてもいいよ?多分だけど・・・ミッチーがなんやかんや言って助けてくれるだろうし。俺ら巻き込んで」
「間違いなく俺らは巻き込まれるな、うん。実際に今巻き込まれてるし」
「あははは・・・。そう・・・ですね、とりあえず、1回ログインしてみます。それで・・・その後考えます」
「うん、それがいい。・・・・・・いいんだけど・・・ちょっと問題があるかな?」
「へ?ど、どんな問題ですかっ?」
「問題?なんかあったっけ?」
「カイ君はダメだな―、ちゃんと人を見ないと。そっちの・・・川内さんは人付き合いが苦手でしょ?ゲーム内じゃ、NPCやプレイヤーとの交流はかなりあるからさ、別の意味で辛いと思うよ?」
彼女の、川内さんの顔がかなり暗くなる。
多分、ネットゲームをほとんどやったことないんだろう。
定型文しか話さないNPCとAIを積んでるNPCじゃ必要コミュ能力が段違いだ。
ちなみに、俺とカイ君は人見知りする方だった。
アホ共がネトゲや現実で問題を起こし、一緒に謝りに行ったりしたため、知らない人でも普通に接することが出来るようになった。
嬉しくないからな?
「あー・・・確かにな。NPCつってもAI積んでるからほぼ人間と一緒だし」
「うっ・・・」
「逆に言えばここで練習するってのもありかもね。俺らもアホ共に巻き込まれてコミュ能力上がった口だし」
「あー・・・いや、荒治療はダメだろ。ライオンの子育てかな?ってレベルになるぞ」
「崖から突き落とすんだっけ?」
「ほんとかどうかは知らんけどらしいね」
「あ、そうだ。一応言っておくけど、小説とかに出てくる他人に絡むアホはほとんどいないからね?昔のネトゲならかなりいたんだけど・・・まぁ、VRで実際に顔を突き合わせて強気に煽れる人はそこまでいないから」
「あと、問題起こしたら垢BANされる危険もあるからな・・・。10万払って買ったのに喧嘩して垢BAN、じゃあ10万を捨てるのと同義だからな」
「まぁ、いざとなったらどっかのクランに入ってそこの人達のみと交流すれば大丈夫だろ」
「先輩達はクランどうするんですか・・・?」
クランをどうするのか・・・か。
よっしーがトップに立つクランは作る予定だ。
けど、実は、内緒にしてるけど別のクランを作ろうとしてるんだよね。
「よっしーがクランマスターのクランを作る予定だから・・・あー・・・どうだろ?どう思う?」
「ん?なにが?別に入れてもいいんじゃない?」
「いやさ、今回のクラン名って俺とアッキーの名前に関係してるじゃん?自由に名前付けると浮くんじゃないかなーってさ、心配なのよ」
「あー・・・それか。先に説明するか。俺の・・・俺たちのゲーム内ネームは色+動物名になってるんだよ。リーダーが虹鳥、俺が白狐でそっちのカイ君が黒猫、ミッチーが赤象、最後の一人が灰虎。で、クラン名がcolor zoo」
「ダサいとか厨二とか言わないでね?アホ共が決めただけで俺たちは関わってないから」
こっそりと予防線を張るカイ君。
一瞬マジかよみたいな顔されたら予防線張りたくなりますよね、わかります。
「同盟的なのがあるかはわからんけど、一緒に活動したり受付?あー・・・窓口って言った方がわかりやすいか。まぁ、そういうのになって欲しいって言うならこっちは問題ないからな?」
「カイ君優しいね」
「人付き合いはミッチーに投げて、戦闘関連はアホ共に投げる。俺達がやるのは生産系と振り分けだけだ」
「カイ君鬼畜だね」
「役割分担をしっかりしてると言ってくれ」
「あ、あのっ!お願いしてもいいですか・・・?」
「ん?いいよ。まぁ、常にログインしてる訳じゃないから毎回助けれるとは言えないけどね」
「ありがとうございます・・・」
「いえいえ、女の子を前にカッコつけたいだけなので」
「アッキーって最後の最後で好感度下げるよね」
「我が愛はキツネたんにのみ向く」
「好感度下げすぎだろ」
「へいへい。まぁ、今はいいか。他に聞きたいこととかある?無ければ解散するけど・・・」
若干・・・いや、うん。
若干じゃないくらい引いてるのは見てわかるけどさ、少しは隠そうよ。
まぁ、これ以上慣れてない人と話すのは辛いだろうし切り上げてもいいよってオーラを出す。
オーラ出てるといいな・・・。
「えーっと・・・特にはないです」
「大丈夫です・・・」
「そっか。なら、お疲れ。俺らはミッチー達を軽く煽ってから帰るから、また何かあったらミッチーに相談してね?」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました」
きちんとお礼を言って教室から出ていく二人。
そんなお礼を言われるほどのことしてない気がするけどなぁ・・・。
「さて・・・と、ミッチー潰すか」
「・・・アッキーは何を考えてるのかな?俺は一緒に謝りに行くのは嫌だぞ?」
「補習してる教室に凸してミッチーに補習の追加を先生にお願いする」
「流石に怒るんじゃ・・・100%あっちに非があるから文句も言えないか」
「そういうこと。きちんと説明してれば焼き肉で許したけどこれはダメだわ」
「焼き肉は確定か・・・俺、しゃぶしゃぶがいいな。あんまり食べた事ない」
「あー・・・でも、高くない?流石にそこまでの料金払わせるのはダメじゃない?」
「家でやればいいだろ」
「それもそうだな。んじゃ、移動しますか」
時計を見ると4時を少し過ぎたくらい。
これならアホを煽ってから帰っても4時30分くらいになる。
今日は宿題もないし、食材を買いに行く必要もない。
平日にしては多くプレイできそうだな。
次の更新予定日は 09/15 0:00です




